永続狂気帝国セプテムII−3
散発的な戦闘を繰り返しながら、ネロ率いる正統ローマ帝国の軍勢は、ついに連合首都に攻め入った。
ほぼ瓦解した敵戦力は分散しており、こちらの各個撃破で十分倒せている。
首都入城に際してもサーヴァントの気配はなく、ローマを模した列柱やアーチの建築が並ぶ街をまっすぐに宮殿へと向かっていく。
あのあと、ネロは自らを奮起するように兵士たちも鼓舞して軍を率いている。マシュは心配そうに見ていたが、こればかりはどうしようもない。
ブーディカも話を聞いてネロを心配げに見遣ったが、歴史に影響を与えるわけにもいかないため、何も言えなかった。
やがてメインストリートを進み、宮殿が見えてくる、というときだった。
突然、前方に強烈な反応を感じて、同時に、焦ったようにロマニから『前方にサーヴァント反応!』と警戒が呼びかけられる。
石畳の道の先に立ちはだかる巨漢は、黄金の鎧を身につけていた。
「実に勇ましい。それでこそ、当代のローマを統べる者である」
そして、喋った。宮殿の入り口、ここからまだかなり距離があるにも関わらず、その声ははっきりとここまで響いたのだ。
「そうか、お前がネロか。なんと愛らしく、なんと美しく、なんと絢爛たることか。その細腕でローマを支えてみせたのも大いに頷ける…さあ、おいで。過去、現在、未来。すべてのローマが、お前を愛しているとも」
「な……なんと、あれは…い、いや……そんなこと、が、あっていいのか…いや、しかし…」
その言葉を聞いたネロは、激しく動揺した。足が止まり、視線が下がる。後ろで見ていたマシュは「ネロさん?」と問いかける。立香もネロの顔を窺った。
「あの男に心当たりがあるの?」」
「……ローマ、あれは…あの御方は……一瞥しただけでも、分かってしまう…あの御方こそ…ローマ…」
「あれは…なるほど、ネロ帝が動揺するのも当然だ」
アーサーは男の姿を見て、動揺するネロをいたましそうに見た。どうやらアーサーも知っているようだが、あの古代ローマの意匠をなぜ中世初期のアーサーが知っているのか。
「…なんでアーサーが知ってるんだ。あいつは古代ローマの英霊だろ、誰かは分からないけど…」
「……会ったことが、あるからね」
言いにくそうにするアーサー。ほぼ同じ歴史を歩んだアーサーの世界で出会ったことがあるということだろうか。
とりあえず今は急いで聞くことではないだろう。必要があればアーサーから話す。
「
私の元へ戻っておいで。
私だ。
私こそが、連合帝国なるものの首魁である。お前も連なるがよい。許す。お前のすべてを、
私は許して見せよう。お前の内なる獣さえ、
私は愛そう。それができるのは、
私ひとりだけなのだから。そうだ、私がローマだ」
「あ、ああ…そなたは……いや、あなたは……あなただけは、あり得ぬと…そう、信じていたのだ…信じたかったのだ……しかし、あなたは余の前に立ちはだかるのか!まごう事なきローマ建国王!神祖ロムルス!」
ローマ建国の王であり、双子の兄として弟を殺しながらローマを建設した王。
神祖ロムルス、神格級だ。永遠の都と呼ばれる世界で最も有名な都市を築いた、最強クラスの英霊である。
「彼女もつらいだろう。自らの国の祖が敵だったと知れば、間違っているのは自分なのではないかと思ってしまうはずだ」
「…ロムルスが、人理を破壊するようなことをするのか?軍神マルスの子ともあろう英霊が…アーサーにはそれが自然に見えるか」
「いや。彼がそんなことをするとは思えない。ただ、彼の言葉はやや難解だからね。意図があったとして、それをくみ取るのは難しい」
「一人称ローマだもんな…まぁ、倒せば分かるだろ」
「君、本当はバーサーカーなんじゃないのかい?」
「アーサーといいエミヤといい、すぐ皮肉言うよな。サンソンが恋しい…」
「む、それはいただけないな」
素直、かつ唯斗には極限まで甘い態度を取ってくれるサンソンならそんな言い方はしないだろう。その点、エミヤとアーサーは少し似ている気がする。
アーサーは拗ねたような声を出したが、それはこっちの台詞だろう、と唯斗は呆れた。