永続狂気帝国セプテムII−6
そして、レフはそう言うのと同時に、どす黒い光に包まれた。眩い光によって目を開けていられなくなり、腕で目元を隠して目は閉じないようにしていると、唐突に光りは止んだ。
しかしそこにはもはやレフは存在しておらず、そこには、禍々しい怪物が聳えていた。
それは柱のような形をしていた。筋のように縦に赤い瞳が連なり、瞳と瞳は血管のようなグロテスクな管によって繋がれている。
瞳が埋まるサメの肌のような皮は分厚そうで、鼓動のように脈打っている。
ネロは顔をゆがめて、怪物を見上げた。
「なんだあの怪物は…!醜い!この世のどんな怪物よりも醜いぞ、貴様!」
「はは!ははは!それはその通り!その醜さこそ貴様らを滅ぼすのだ!」
『これは…この反応は…!サーヴァントでもない、幻想種でもない!これは…伝説上の、本当の悪魔の反応か…!?』
こんな姿の怪物は見たことがない。思い当たる節もなく、もちろんサーヴァントなどではありえない。
愕然とおぞましい姿を見上げると、ロマニの驚愕の声が通信から聞こえてくる。その声に応えるように、柱の怪物、レフは声を響かせる。
「改めて自己紹介しよう!私はレフ・ライノール・フラウロス、七十二柱の魔神が一柱!魔神フラウロス、これが王の寵愛そのもの」
「七十二柱の魔神、フラウロス…まさか、」
唯斗はその名前でレフの正体に行き着いた。これまで、その悪魔は様々な形で描かれてきたが、これはそれまでのどんな描写よりもおぞましい。
ソロモンの七十二柱の悪魔、無数の悪魔の軍団のトップ72人の集まりのことだ。聖書から生じた悪魔学で語られる基本の基本である。
そして、この世に存在するはずのないもの。
『…いや、まだ情報不足だ。詳細はすべて不明。だが、それは危険なものだ。来るぞ…!この場で完全に撃破するんだ!』
ロマニの通信とともに、立香はキャスターと清姫を召喚した。
カルデアから一時召喚できるのは、マスター一人につき三騎までだ。立香はランスロット、キャスター、清姫とマシュ、荊軻、ネロと戦う。
引き続き、唯斗はアーサー、サンソン、エミヤと戦うことになる。まさに総力戦だ。
「なんとおぞましい…」
サンソンは大剣を構えてレフを睨む。エミヤも弓を出現させて剣を装填した。
「まさに悪そのものだな。悪魔などというものが本当にいるというのは驚きだが…倒すべき相手であることに変わりあるまい」
「エミヤ殿、マスターを頼んだよ」
アーサーにエミヤは頷く。
剣を構えたアーサー、サンソン、ランスロット、ネロは一斉に斬り掛かった。荊軻も気配を消して短剣を瞳に突き刺しに行き、セイバーたちはロムルスのときよりも激しく剣を断続的に叩き付ける。サンソンもセイバーたちの間を縫って剣を振るった。
清姫はレフに向けて炎を放つが、荊軻が巻き込まれかけて怒っていた。
マシュは立香を守り、エミヤも唯斗を守りながら遠距離で剣を次々と放つ。キャスターはルーンによって爆破をレフの上部、他のサーヴァントを巻き込まない位置で展開した。
しかし、レフはその瞳から大量の紫色のガスを噴き出した。その強さにサーヴァントたちは一斉に吹き飛ばされる。
唯斗はマシュと立香、自分、エミヤの前に結界を数十に重ねて展開するが、ガスに触れると結界が次々と消滅していく。魔力に負けて消えていくのだ。
アーサーとランスロットは華麗に着地したが、サンソンと荊軻、ネロは砕けた床に叩き付けられる。
いち早く体勢を立て直したアーサーとランスロットは再びレフに立ち向かい斬り掛かるが、その瞳はランスロットとアーサーを凝視した。その瞬間、ランスロットは炎に包まれる。
「ぐあぁッ!!」
「ランスロット!」
立香が叫んで前に出そうになるのを、マシュが慌てて止めた。
ランスロットは地面に落下して倒れる。サンソンが慌てて駆け寄り、荊軻は追加の攻撃が来ないようランスロットを庇う。
アーサーは凝視による攻撃は効かなかったようで、すぐにその瞳を切りつけた。
ランスロットを見ていたサンソンは、唯斗を見て首を横に振る。
「立香、ランスロットはだめだ、下がらせろ!」
「分かった!」