永続狂気帝国セプテムII−10


空は暮れて夕方になった。
平野の先に悠然と進むアルテラが見えており、アルテラはこちらの気配を察知して振り返った。

アルテラのところまで接近すると、アルテラはこちらをじっと見つめる。温度も感情もない瞳が末恐ろしい。


「…行く手を阻むのか。私の」

「そのためにここまで来た」


立香は毅然と答える。マシュは盾を構えて立香を庇うように立つ。
ネロもアルテラに向かって問いかけた。


「なぜ世界を滅ぼすというのか!」

「私は、フンヌの戦士である」


それに対して、アルテラは抑揚のない声で変わらずに答える。ネロはそれに一瞬気圧されるが、それでも剣を構えた。


「悲しいな、アルテラよ。余はしかし、貴様のその悲しささえ美しく想おう。力では余に勝るかもしれぬ。だが愛では、貴様は余には適わぬと知れ」

「美しさなど。愛など。私は知らない」

「ドクター、先刻とは異なる言葉です。自動的な対応を行うばかりではないようです」

『この反応は…そうか、聖杯と一体化して暴走状態にあるのか。しかしだめだ、対話では収めることはできないぞ』


戦闘となるため、立香はキャスターと清姫を召喚した。相手はセイバー、本来ならアーチャーが望ましいが、立香はアーチャーを持っていない。
アルテラは三原色で輝く剣をかざし、宝具を解放する。


軍神の剣(フォトン・レイ)


剣は回転しながら光を放ち、そしてそれを槍のように突き出しながらアルテラはこちらに突っ込んできた。
マシュは宝具によってアルテラの攻撃を防ごうとしたが、耐えきれずに吹き飛ばされる。すかさずキャスターが立香を抱えて避けて立香は無事だった。

代わりに、清姫がアルテラに業火を吐いた。アルテラはそれを一振りでかき消すが、清姫の炎は粘着質にアルテラに纏わり付いた。


「…マスター。悪いけれど、僕は君を守ることに集中する。攻撃はネロ帝やマシュ殿に任せるしかない」

「……分かった。召喚はカルデアの電力任せだから、多分、エミヤは呼び出せる」

「よし、頑張れ」


アーサーに頷いて、唯斗はエミヤを召喚する。エミヤは唯斗の隣に出現すると、唯斗の様子を見て驚く。かなり弱っているのをみて、特に何も言わず、弓に剣を構えた。


「騎士王、次はあなたに任せよう」

「任された」


エミヤは次々と剣を放ちながら、地面を蹴ってアルテラへと突っ込んだ。剣を構え、今度はセイバーのように斬り掛かる。いつ見ても、エミヤの戦い方はめちゃくちゃだ。

キャスターのルーンによる爆破、清姫の炎、エミヤの遠距離と近距離を組み合わせた攻撃は、じわじわとアルテラを追い詰める。
さらに、隙を縫ってネロの斬撃がアルテラを切り裂いた。


(エミヤ、アルテラの霊核をネロに狙わせろ。ご丁寧に、シルバーに光ってるあの胸元の円形の内側にあたる)

(よし、伝えておく)


エミヤは攻撃の合間にネロに耳打ちする。ネロはすぐにアルテラの霊核の位置を見極める。アーサーが動けない今、アルテラの間合いに入ってなお攻撃ができるのはネロとエミヤだけだ。
キャスターと清姫はネロの狙いを察して、アルテラの気を逸らす大仰な攻撃を続ける。エミヤはアルテラの動きを制限するよう剣を矢に放ち、ネロはその合間に剣を胸の前にまっすぐ向ける。


「許せアルテラ!!」


そしてネロはそう叫ぶと、エミヤの背後、清姫の炎の影から躍り出て、その剣の切っ先をアルテラの胸に突き刺した。
アルテラの霊核を貫いたネロの剣、唐突に訪れる沈黙。

アルテラは自身の胸を貫いた剣を見て、なぜかふっと微笑んだ。


「そう、か…世界には…私の剣でも、破壊されないものが…ある、か…神の鞭と呼ばれた、私の、この……そうか、それは…少し、嬉しい、な…」


その言葉とともに、アルテラは消失した。ネロは重みの消えた剣を一振りしてから、鞘にしまう。
夕暮れの平原に、もはや敵影はない。


「終わったか。早く帰るんだぞ」


エミヤはそう言ってカルデアに戻る。キャスター、清姫も消えて、あとには立香とマシュ、唯斗、ネロ、アーサーだけが残る。
マシュはアルテラが消えた後に残された聖杯を回収した。


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