サーヴァントの距離−1


古代ローマ帝国の特異点の修復が完了したあと、10月後半いっぱいを使って、再び戦力の増強が図られることになった。
やはり立香も唯斗も、すべてのクラスが揃っていないため、クラス相性が考慮できない場面が発生してしまう。まずは二人で主要なクラスが揃うよう、今回はそれぞれ呼びかけることでクラスを指定することにした。

とはいっても、何も特別なことをするわけではない。詠唱しながら各クラスのことを念じればいい、とロマニは言っていた。マシュの盾が、触媒としてそれほど優秀であるということだ。

そして、こうして呼びかける形で召喚することで、縁の薄い相手であっても来てくれる可能性が上がるとのことだった。

その結果、立香は新たに、フランスで世話になったマリー、ローマで世話になったブーディカを召喚し、さらに加えて、アーチャーのロビンフッドとトリスタンを召喚した。現在のカルデアのサーヴァントにブリテンやアイルランドの英霊が多く、ブリテンの英霊であるロビンフッドと円卓のトリスタンが来てくれたようだ。もはや知り合いの知り合いのようなものである。

この既存サーヴァントが縁となる形での召喚、というのが、恐らく今回の唯斗の召喚でも起きたことなのだろう。


「ランサー、ディルムッド。召喚に応じ推参いたしました」

「フィオナ騎士団の一番槍、ディルムッド・オディナか」

「はい。あなたが此度のマスターですね」


召喚サークルに、唯斗のランサークラスに対する呼びかけによって現れたのはディルムッド、ケルト神話の高名な槍使いだった。

フィオナ騎士団に所属し、女性を魅了する泣き黒子で有名な美青年だ。伝説に違わず、背が高く体格も良い上にその相貌は極めて端正である。これは確かに多くの女性をたぶらかしたことだろう。

とはいえ、そんなことはどうでもいい唯斗にとっては、単にランサーとして非常に優秀なサーヴァントが来てくれて良かったとしか思っていない。


「雨宮唯斗という。来てくれてありがとう」

「こちらこそ。必ずやあなたに勝利を…と思ったのですが、どうやら此度の聖杯戦争は非常に趣が異なるようですね」

「あぁ。カルデアの案内がてら、今回のことを話そう」


サンソンにもしたように、唯斗は召喚したサーヴァントに対して施設案内と一緒に世界の状況を説明する。

これは立香も唯斗も、初対面のサーヴァントとの距離の取り方を測るものでもあり、アイスブレイクでもある。特に立香は多くのサーヴァントを召喚しなければならないため、しょっちゅうこれをやっている。まるでカルデアのインストラクターだ。
マリーやブーディカのように、特異点で出会ったサーヴァントとはとりわけ、どういう戦いを共にしたか、ということも話しているらしい。唯斗も後でマリーと話してみようか、と思う辺り、やはり特異点での戦いというのは特別なものだった。

廊下を歩きながら一通り話し終わるころには、最後に来る予定だった食堂まですぐというところだった。


「なるほど、それでたった二人のマスターで十数名のサーヴァントを…マスターは他にどのようなサーヴァントを?」

「そうだな、ディルムッドからすれば全員後輩にあたるな。セイバーはブリテン王アーサー・ペンドラゴン、アーチャーはエミヤ、アサシンはムッシュ・ド・パリのサンソンだ。エミヤは俺もよく分かってない」

「ほう、アーサー王ですか。キャスターやライダーはいないのですね」

「あぁ。そこは自分でどうにかしてるけど、次はキャスター召喚できたらとは思う。とりあえず、俺は少数精鋭って感じで行くことになってるから、当面は追加でランサーを呼ぶつもりはない。頼んだぞ」

「お任せを。世界を救う戦いに我が槍を震えること、光栄の至りです」


また堅苦しいな、と思いつつ、サーヴァントとしてはとてもそれっぽいとも思う。エミヤやアーサーのような変化球ではない。


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