サーヴァントの距離−2
やがて食堂に着くと、いつもより人の数が多いのが分かった。
カルデアのスタッフだけでなく、サーヴァントもそれなりの数が席について談笑している。そういえば、今日から本格的にこの食堂が機能するのだった、と思い出す。
「…サーヴァントも飲食をしているのですか。世界が滅んでいるというからには、物資も乏しいのでは…?」
「最近まではな。実は、レイシフトで飛んだ先から物資を持ち帰れることが分かって、物資補充のためのレイシフトが始まったんだ。それから、料理上手のエミヤとブーディカが厨房に入ったから、食堂として誰でも使えるようになった」
「なるほど…?」
特異点によって生じた歪みによって、微小特異点という小規模な特異点が発生し始めていた。それらは時代の修正力によって自然消滅するようなものだが、食料を回収できるため、あえてレイシフトするようにしていた。
ときにそれは訓練も兼ねている。
こうして、職員たちはついに非常食生活からまともな食生活を送れるようになった。
特に、エミヤとブーディカは非常に料理の腕がよく、振舞ってくれる料理は極めて美味しいと評判らしい。唯斗は正直、食にこだわりがないため、あまり関心はなかった。
「立香や俺も、訓練がてら物資補充のためにレイシフトする機会が増えたから、午後にでも訓練を始めよう。普通の聖杯戦争は単騎同士の戦いだろうけど、今回は複数のサーヴァントとの連携がポイントになる。俺の他のサーヴァントと合わせる方に重きを置く」
「承知しました」
「あぁ、ちょうどサンソンがいるな。サンソン、」
「はい、マスター」
少し離れたところの席に座っていたサンソンだったが、唯斗が呼んだ瞬間、すぐにそばに現れた。そこまで急がなくていいといつも言っているのだが、アサシンらしからぬ出自のわりにこういうところはアサシン然りとしている。
「さっき召喚した新しいサーヴァント、ランサーのディルムッドだ」
「ディルムッドという、よろしく頼む」
「シャルル=アンリ・サンソンだ、こちらこそよろしく」
どうやらディルムッドも、サンソンと同じくサーヴァントとは対等に話すタイプらしい。マスターである唯斗には丁寧な言葉遣いだが、相手がサーヴァントとなると途端に砕ける。
立ち居振る舞いといい、なんとなく似ているような気がする二人だ。
「午後に合わせる訓練を始めようと思うんだけど、エミヤは手が空きそうか…?」
「さすがにマスターの指示が優先です。それは食堂の利用者も踏まえていることでしょう。いずれにせよ、ピークは過ぎたように見受けられます」
「そっか。なら待とう。ついでにアーサーも呼んでおく」
「えっ…あ、はい」
一瞬サンソンは戸惑ったが、テーブルにディルムッドをつかせた唯斗を見て頷く。そして、その向かいにサンソンも腰を下ろした。
唯斗はディルムッドの隣に座りつつ、エミヤの方に視線をやって内心で呼びかけた。
(エミヤ、手が空いたら来てくれ。新規サーヴァントと早速合わせたい)
(承知した。ちょうど手が空くところだ。ブーディカに引き継ぐ)
(了解。アーサー、聞こえるか)
(聞こえるよ。食堂かい?)
(そう。新しくディルムッドが来てくれたから、紹介がてら午後の訓練の話をしたい)
(分かった、すぐ行くよ)
アーサーはふらふらとカルデア内では自由にしていることが多く、唯斗とはあまり一緒にいない。よくシミュレーターの中にいることもあった。
常にだれかと一緒にいる立香とは違い、唯斗は一人でいることが多いため、サンソンやエミヤも思い思いにしているようだった。