サーヴァントの距離−3
エミヤとアーサーがすぐに来ることになり、ディルムッドは「何かお飲み物をお持ちします」と言って席を立った。
エミヤのところまで行って何やら話しているようでもある。唯斗は、残されたサンソンに声をかけた。
「サンソン、さっき何か言いかけたか?」
「いえ。ただ…」
「ただ?」
「あまり、戦闘以外で他のサーヴァントと会話する機会がなかったので。こうして食堂で腰を据えて、というのが、やや落ち着かない気がします」
「あぁ…俺もこれが雑談とかだったら絶対嫌だったけどな、何話せばいいのか分からなくて気まずい」
「分かります。それを少し危惧してしまったのですが…確かに、今回は訓練のことを話すのですよね」
「そうそう。自己紹介くらいはするけど、何せ騎士団と騎士王だしな、ディルムッドとアーサーが基本的には会話を引っ張るだろ。エミヤも普通に誰とでも話すし」
「そう、ですね」
どうやらサンソンは唯斗と近い考え方をするタイプらしい。
集団というものでも会話を好まず、複数人で自由に雑談、というのが致命的に不得意だ。とはいえサンソンだって人との交流はそれなりに多かったようだし、アマデウスなど知っている間柄であればよく会話をしている。
もちろん、サンソン自身が自らを処刑人としてあまりに強く意識しすぎていることもあるだろう。唯斗にだって、頑なに触れようとしない。先ほども一人で座っていたが、恐らく誘われても断るだろう。処刑人と相席、ということを、サンソンはきっと良しとしない。
やがて、エミヤとディルムッドが揃ってやってきた。全員分のコーヒーを用意してくれている。また、そのあとすぐにアーサーもやってきた。これで全員揃ったことになる。
「……途端にむさ苦しいな」
「そうか?170センチ台が二人ならさほどでもないだろう」
「サンソン、やれ」
「了解しました。ラモール…」
「冗談だ」
エミヤに対して唯斗とサンソンが殺意を込めて睨んだが、気にしたそぶりはなかった。アーサーは苦笑し、ディルムッドは目を瞬かせる。
「…本当に、不思議な聖杯戦争だ」
「まったくだ」
それに同意するのはエミヤで、アーサーも頷いていた。この3人は聖杯戦争経験者として見ていいだろう。
アーサーが第二特異点でロムルスを見たことがあったのも、もしかしたら元の世界で行われた聖杯戦争で出会っていたからかもしれない。
「じゃあそろそろ、今後の方針について話したいんだけど」
「確か、次の特異点レイシフトは半月後だったかな」
ともにレイシフトするアーサーは、支給されているタブレットを使いこなしており、そこに登録された予定を確認する。
「そう。次の特異点は洋上、としか聞いてない。細かいことは不明なままだけど、少なくともかなりの確率で海上での活動になる」
「なんと…」
ディルムッドは海と聞いて驚く。聖杯戦争で海上に出るなどそうないだろう。
特異点ではまず、正確に船舶の艦上に出現できるようかなり綿密な座標指定が行われている。
「つまり、レイシフトしてすぐにその船のやつらと戦闘になるはずだ。なにせ時代は16世紀、大航海時代。歴史は海で展開する…だからこそディルムッドが重要になる」
「私ですか」
「活動の場が船舶であること、航海の技術要員と敵対しこれを傷つけるわけにはいかないこと。もしサーヴァントとの戦闘になるなら、狭い場所で非戦闘員を守りつつ、船舶そのものもダメージが出ないようにしないといけない」
「気が遠くなるな」
エミヤは若干他人事のように言った。実際、弓兵の出番はあまりないのがセオリーだが、エミヤは純粋な弓兵として見ていないため今回もこき使うだろう。
今回の特異点では、このように非常に制限が多く、マスターである唯斗たちを含め、現地で協力を仰ぐ船員たちの保護も必要になる。