サーヴァントの距離−4
「セイバーのアーサーとランサーのディルムッド、それぞれのレンジの違いが重要になる。サンソンも、アサシンとしてのスキルが必要だ。ローマではセイバーみたいな使い方しちゃったけどな」
「相手の裏をかく、ということならアサシンの本領となるでしょう。まあ、僕はあまりアサシンらしくありませんが」
「良い意味でな」
「っ、マスター…」
綺麗にほほ笑んだサンソンに頷いて返してから、隣に座るディルムッドも見上げる。
「伝承通りなら槍を2本使うよな」
「ええ、その通りです」
「爆弾・爆発を起こせない狭い環境で範囲攻撃をするには、ランサーのレンジが有用だ。ディルムッドがいるなら、俺もガンドを撃たなくて済む。頼むぞ」
「お任せください。このディルムッド、マスターを守り敵を薙ぎ払ってみせましょう。それにしても、ガンドはスタン攻撃では?いえ、撃つ必要がないよう私が守り切りますが…」
そう首をかしげるディルムッドに、アーサーとエミヤが苦笑し、サンソンが無言でコーヒーを啜った。答えない様子を見て、アーサーが口を開いた。
「マスターのガンドはね、うっかりすると船が粉々になってしまうから今回の特異点ではできる限り封印してもらわないといけない。コントロールに失敗して全員海の藻屑というのは洒落にならないからね」
「そ、それほどの強さなのですか…ガンド、ですよね…?」
「……最近はマシになっただろ」
ローマでは相手を気絶で済ませるためにかなり制御できたし、実際誰も殺さなかった。とはいえ、アーサーがいたということ、開かれた安定した足場、相手は人間のみという状況ではコントロールできて当然だ。
船の上での乱闘などイメージがつかないが、焦ってコントロールに失敗する可能性は唯斗も十分に理解している。
そこで、エミヤがふと思い出したように言った。
「そういえばマスター、そのガンドを含め魔術の個人訓練はどうするのかね。現状、教えを乞うならダ・ヴィンチ、アマデウス、キャスターのクーフーリンだけだろう」
ローマで戦った既存のサーヴァントたちとは、すでに反省点をまとめて今後の施策を検討済みだ。その中で唯斗個人の問題として、魔術の強化が挙げられていたが、誰に教えてもらうかというところが問題になっていた。
エミヤが指折り数えたのを見て、サンソンが嫌そうに顔をゆがめる。
「アマデウスがろくに教えられるわけがない。というか、マスターの教育に悪影響だ」
「それは確かにそうだな」
「お前らは親か?親にだってそんな気にかけられたことねぇのに」
しん、と静まってしまったため、「冗談だ」と付け足す。笑わせようとして言ったものではなく、事実として言っただけだが、真顔だったのがいけなかっただろうか。
咳払いをして、エミヤは「ではダ・ヴィンチかね」と改めて言った。
「ダ・ヴィンチ女史はここの技術顧問だ、時間がないんじゃないかい?」
それに対してアーサーが答えた内容はその通りで、ダ・ヴィンチはキャスターだがカルデアの技術顧問であるため、聖杯の解析やレイシフトの準備で極めて忙しい。いくら寝る時間などが必要ないサーヴァントとはいえ、物理的に時間は限られる。
「では、キャスターのクーフーリンしかいないな。ふむ、いないよりはマシだろう」
どうにもキャスターとの相性が良くないのか、それともクーフーリンとの相性が良くないのか、エミヤは渋い顔をしていた。
しかし正直、唯斗にとって一番の問題は誰に頼むか、というところではなかった。
「……なぁ、キャスターに頼むにしても、どうやって頼めばいいんだ…?」
「?普通に頼めばいいのではないかね」
何を言っているんだ、という顔をしたエミヤに、唯斗は首を横に振る。
「や、だって、戦闘中の頼みでもないし、もちろん指示でも命令でもないのに、なんて言うんだ…いくら気のいい性格でも相手はあのケルトの半神の英雄だぞ…?」
「マスターが教えてと言ったら誰でも教えてくれるだろう」
アーサーも不思議そうに言ったが、国王には分からないだろう。
わりと私的な頼み事を大英雄にする。しかも、そのサーヴァントは自分の契約している相手ではない。そんな条件での頼み事などとてもできなかった。