長編番外編−見解の一致


第七特異点前
主と一緒にレイシフトしたいガウェイン、アキレウス、ディルムッド


翌日に小規模特異点へのレイシフトが決まり、編成を自分の他にアーサー、ガウェイン、サンソンと決めた唯斗は、ガウェインに声をかけるために管制室から食堂にやってきた。
ついでに昼食を済ませることにもしていたため、いなければいなかったで後にしようとは思っていたが、ちょうど食堂にその姿があった。

混み合っている食堂の中で、食事をとる前に先に伝えてしまおうと、円卓で集まっているガウェインのところへ向かう。


「ガウェイン、」

「マスター、これからお食事ですか?」


パッと顔を明るくしてすぐに立ち上がったガウェインは、こんな些細なときでも自分だけが座るという状態を良しとしない。
立ち上がって通路にいる唯斗の正面に立ったガウェインに、いちいちそれを指摘することではないため、とりあえず要件を伝える。


「ああ。その前に取り急ぎ伝えとくけど、明日、小特異点にレイシフトすることになったから同行してくれ」

「ええ!承知いたしました」


嬉しそうににっこりとするガウェインに、やはりほんのいっときとはいえ、まったく意思疎通が図れなかった召喚初期の頃の鬱憤が溜まっているのだろうか、と少しだけ申し訳なくなる。

するとそこに、別の声がかけられた。


「マスター、最近よくガウェインを連れて行くよな」


隣のテーブルでランサーやディルムッドと一緒にいたアキレウスだ。背もたれに寄りかかりながら、椅子の前足を浮かせて体を傾けている。あの図体でそんなことをしたら壊れてしまいそうだ。


「そうか?あんま気にしてなかったけど」

「いーや、ぜってぇ最近ガウェインひいきしてるだろ」


そんなアキレウスの言葉に首をかしげると、意外にもディルムッドが頷いた。


「そうですね、ひいき、かは分かりませんが、回数は多いように感じます」

「おっ、昼間っから痴情のもつれとはやるなァ坊主!」


聞いていたランサーはニヤリと楽しげにからかってきて、唯斗はため息をつく。そもそも痴情ではないだろう。


「別にひいきとかじゃ…確かに細かいこと言わなくても力でなんとかしてくれるのは楽でいいなとは思ってるけど…」

「あくまで適材適所ですよ、目くじらを立てることではありますまい。マスターは貴殿らも同様に頼りにしておられる」


ガウェインはあくまで軽く謙遜した。自分が特別なのではないと諫めるが、アキレウスとディルムッドはジト目を向ける。


「あんたの立場で言われると腹立つなァ」

「満更でもなさそうだが?」

「おや、それとも貴殿らには思い当たる節がご自身におありですか?」

「馬鹿やめろ、バチバチするな」


唯斗は呆れて窘めつつ、手元のタブレットで検索をかける。そんなに最近ガウェインを連れていただろうか、と過去の記録をざっと見てみると、つい押し黙ってしまう。


「どうしました?マスター」


ガウェインに尋ねられ、美しい太陽の騎士の顔を見上げる。


「……ここんとこ8回のレイシフト、全部ガウェイン連れてた…」

「やっぱりかよ!」


ランサーは案の定だったことにおかしそうに笑った。データは嘘をつかない、無意識に選んでいた唯斗の思考がダダ漏れになってしまっている。
アキレウスは唯斗の偏向編成を聞いて、椅子を戻してテーブルに肘をついて見上げてくる。


「なぁ俺も明日連れてけよ」

「や、明日は室内探索になりそうだから、閉所で戦えるメンバーを選んでるんだ」

「それならば私でも良いのでは?」


すかさずディルムッドも名乗り出る。この二人は戦闘大好き人間のため、こうやって主張してくることは初めてではない。しかし、他のサーヴァントに対抗するような形で言われたのは初めてだった。
そこでガウェインも食い下がる。


「マスターがお決めになることです。閉所での制圧力であれば私で十分です、すでに計画が決まった状態で覆す理由はありません。何よりあなた方は、これまで特異点探索において何度も召喚されてきたはず。マスターをお守りする機会が今まで多かったのですからいいでしょう」

「あぁそうだな、何度も召喚されてきたぜ?それこそ、第六特異点のお前との戦いでもな」

「その通りだガウェイン卿、それに俺は第四特異点からマスターと小特異点にレイシフトしてきた、急な編成変更にも対応できる」


思えば、第六特異点で獅子王麾下のガウェインと戦ったのもこの二人だ。しかも、唯斗がもう駄目かと思われたその寸前まで唯斗を守ってくれた。
ガウェインの言う通り、アキレウスとディルムッドは特異点で戦闘時に召喚することが多いサーヴァントで、アキレウスは小特異点にも連れて行くことが多い。いきなり活躍の場が減ったら手持ち無沙汰になってしまうくらいには、よく頼る二人だった。
確かに準備をしているロマニたちには負担をかけるが、それでも初めてのことでもない、編成変更は可能だ。
しかしこれはこれで禍根を残しそうなので、決まったことだからと言ってしまう方が良い。まずは彼らを諫めることからだ。


「あー、明日はとりあえずそのままにするけど、次のレイシフトは状況に適合してればお前らも連れてくよ。ガウェインは召喚したばっかのときにうまく戦場に出してやれなかった鬱憤があってのことだろうし、アキレウスとディルムッドも戦うことが好きだから退屈するかもしれないけど、配分にもう少し気を遣うからさ」


そう唯斗は窘めたが、ガウェイン、アキレウス、ディルムッドの3人は今度は唯斗に対して驚いたような目を向けてから、一斉にため息をついた。ランサーは爆笑しており、背後で円卓の騎士たちも肩を震わせているのが分かる。
何か変なことを言っただろうか、と思っていると、ディルムッドが口を開く。


「…ガウェイン卿、これがマスターだ。これもまた主の愛らしいところではあるのだが…」

「…なるほど、実感いたしました。貴殿らは何度もこれを経験してきたのですね……」

「そーなんだよ、マジで。いっそのこと無理矢理分からせてやりてェくらいだが、騎士王の手前そんなんするわけにもな。ま、いくら鈍感でも直接言葉にすりゃあそれはそれで可愛い反応してくれっからいいけどな」


先ほどまでの険悪な様子はどこへやら、なぜか3人は分かり合ったようにしている。不仲になるよりは遥かにマシだが、釈然としない。なんならアキレウスは唯斗のことを鈍感と言わなかったか。


「いや、なんの話だ…?」

「おっと聞かねぇ方がいいぜ唯斗、そいつぁパンドラの箱ってやつだ」


いったいなんのことかという疑問を口に出すと、すかさずランサーが止めた。ニヤニヤとしてはいるが、きちんと止める声音でもあったため、唯斗は口をつぐむ。
ガウェインは再びにっこりと笑ってから、唯斗の肩を抱いてカウンターの方へと促す。


「懸命な判断です、マスター。英霊に本気の感情を出させるのはお勧めしません。さ、ご昼食がまだでしょう、今日はどの定食にもポテトサラダがついていますよ」


それで完全に話は終わってしまい、アキレウスとディルムッドはランサーと別の話題に移ったようだった。
ガウェインとカウンターに向かいながら、なぜ何気ない会話だったのにいつの間にかスレスレのところにいるのだろう、という疑問が浮かんだが、それも心の中にしまっておいたのだった。



prev next
back
表紙に戻る