刑部姫のコピー本−とあるケルト兵の下克上
サバフェス5周目
ディルムッド×主
第二特異点のあとに召喚されたディルムッドと唯斗が、その関係性をただのマスターとサーヴァントからいわゆる「恋人」に変化させたのは、特異点探索の旅の中で唯斗自身も人間性が変化し、ディルムッドが繰り返し愛の言葉を説いてくるのに根負けしたからだった。
いや、ディルムッドが唯斗と恋人になるために愛の言葉を囁いてきたわけではないことはよく理解している。ただディルムッドは己の感情を伝えただけであり、「素晴らしいマスターに出会えて良かった」という喜びの延長でもあったからだ。
ただし、それは次第に「愛おしい」「かわいらしい」「素敵だ」という言葉に変わっていき、人間1年生の唯斗でもおかしいと気づいたほどだった。
そして困ったことに、唯斗はそれがまったく嫌ではなかった。むしろ、常に唯斗のことを考え、守り、愛情や尊敬を伝えてくるディルムッドに絆されきってしまい、いつしかディルムッドに惹かれてしまっていたのである。
ディルムッドの魅了のチャームは抑えられているとのことなので、これは単に、顔の良い男に何度も愛を告げられる中で流されてしまったとみるべきだろう。
その日も、自室にてディルムッドが菓子を持ってきてくれたため、一緒に食べながら過ごしていたところ、ディルムッドは唯斗のことを称え、そして愛を語り始めた。
ベッドの縁に並んで座り、唯斗の肩を抱き、甘い言葉を甘い顔で囁くディルムッド。これ以上は本当にまずい、と思った唯斗は、ついに糾すことにした。
「…なぁディルムッド」
「なんでしょう」
「…そういう口説いてるみたいなやつ、なんで俺に言うんだ」
「あぁ、口説かれている、という自覚はお持ちでしたか。それは良かった。伝わっていなかったらどうしようかと」
「…確信犯かよ」
どうやらディルムッドは口説いている自覚はあったようで、唯斗の指摘に破顔する。そのままさらに密着してこようとしたため、唯斗はディルムッドの分厚い胸板に手を置いてそれを拒否した。
「マスター…ご不快でしたか」
「そういうんじゃない、けど……」
途端にシュンとしたディルムッドだったが、唯斗は気をしっかり持って言葉を続ける。
「…お前、ずっとアルトリアのこと気にしてんじゃん。また会いたい、戦いたいってずっと、口を開けば騎士王って」
それはずっと唯斗の中で蟠っていたことだった。普段、アルトリアにも同様にべったりなディルムッドは、口を開けばアルトリアのことを述べていた。基本的にはまた戦いたいというものだったが、本当にそれだけか疑問だったのだ。
しかし、ディルムッドは唯斗の言葉にポカンとしてから、今度はふっと妖艶な笑みを浮かべた。
「……なるほど。そのような愛らしい嫉妬を感じてくださっていたのですね。ご安心を、マスター。私は確かに彼女に畏敬の念を抱いていますが、それはただの戦士としての戦闘欲求。あなたへの欲とはまったく別です」
そう言いながら、ディルムッドはおもむろに唯斗をベッドに押し倒した。前触れなく力をかけられたため、抵抗する暇もなくシーツに仰向けになっており、天井を遮るようにディルムッドが唯斗を組み伏せる。
「え…ディルムッド……?」
「大丈夫、怖がらないでください。優しくします」
「ちょ、待て、俺はまだ」
「俺は行けると思ったら行くタイプですよ、唯斗。あぁ、夢のようだ。ついにあなたを抱ける時がきた」
恍惚とした表情のディルムッドは、唯斗の制止も聞かず、服を脱がせにかかる。手つきは優しいが、有無を言わせずに行動を続けている。
日頃従順で、よく唯斗に跪いて挨拶しているような男が、興奮したように唯斗の言うことを聞かずに体を暴こうとしている。
その事実に、心臓がうるさいほど音を立てていた。
ただ、せめて最初はキスがいい、と、唯斗はディルムッドの端正な顔を掴んで唇を寄せた。
すぐにディルムッドも、貪るように唯斗の後頭部を鷲づかみにしてキスをしてくる。
そして、唯斗はすべてをディルムッドに委ねた。