刑部姫のコピー本−ファラオの恋人モード
サバフェス9周目
オジマンディアス×主
太陽王オジマンディアスの印象をサーヴァントたちに聞けば、恐らく、「偉大なファラオ」「エジプトの王」「ピラミッドの人」「声がでかい」「台詞が長い」などといったところに収斂されるだろう。
最後の方はさておき、オジマンディアスはいつでもどこでも、王として泰然としており、鷹揚な言動で、そして意外と懐がでかくわりといろいろ許してくれる。
ギルガメッシュはアーチャーもキャスターもすぐ怒るが、オジマンディアスは案外「許す!」とでかい声で許してくれるのだ。
そんなオジマンディアスと唯斗の関係は、最近、マスターとサーヴァントというものから少し変わった。
だがどう変わったかと言われると説明がしづらい。
なにせ、オジマンディアスは恋人という関係性を知ってはいるが自身にあてはめるつもりはないようだし、何より王妃ネフェルタリが一番だ。
だが、そう思っていたのは、どうやら唯斗だけだったらしい。
「おい唯斗よ、貴様なぜそのように離れた場所に座っている」
オジマンディアスの部屋に呼ばれていた唯斗は、シミュレーターによって豪華な内装が再現されている部屋の中、広々としたベッドの縁に腰掛けていた。このベッド自体はオジマンディアスが自身の宝具たる神殿から具象化した家具であるため本物で、実際のカルデアの居室であれば半分近くを埋めているものだ。
この部屋もあくまでARであるため、奥の方は奥行きがあるように見えるだけで、実際には壁となっている。
そのため、オジマンディアスはあまりこの部屋を使わず、普段はシミュレータールームのシミュレーターに引きこもっている。
この部屋に呼ばれた唯斗は、珍しくカルデアに出てきているオジマンディアスの気まぐれかと思っていたが、ベッドの縁に座っていたのをたしなめられた。
「えと…邪魔かと思って」
「何を言っているのだ貴様。余とお前は恋人同士であろう。ならば隣に座るが道理」
「………恋人」
オジマンディアスからその言葉が出てくると思わず目が点になる唯斗を見て、オジマンディアスはさすがに口元をひくつかせた。
「まさか貴様、今更になって恋人であると自覚したのではあるまいな」
「…っ、や、だって、そんな素振りなかっただろ!?確かに最近、俺には優しく声かけてくれるな、とか、やたらシミュレーターから出て話しかけたり食事一緒にしたりしてくれるな、とか、キスとか…あれ、付き合ってるな?」
「この人間1年生が!!」
思えば確かに、オジマンディアスははっきりと行動を変えてくれていた。それで最近、なんだか距離が近くなったな、と思ったのだ。
いや、もちろん転機はあった。ジャンヌ・オルタにオジマンディアスとの会話を聞かれていたときに、「あんたそのファラオのこと好きすぎでしょ。まるで恋人の惚気を聞かされているようです」とからかわれたのだ。それに対して「恋人なんて恐れ多い」という話をしたところ、オジマンディアスは唐突に「よかろう!!!」と言ったのだ。
あれがそういう意味だったとはさすがに気づきづらいだろう。
オジマンディアスもその自覚はあったようで、それ以上は怒らず、唯斗を手招きする。
「…はぁ、もうよい。疾くこちらへ来い」
「あ、うん」
オジマンディアスに呼ばれるがまま、ベッドの上をオジマンディアスのところまで移動すると、突然、腕を引っ張られた。
当然バランスを崩し、オジマンディアスの上体に凭れ掛かるように抱きつく形となってしまった。
「っ、悪い、」
「ふっ、余がしたことを謝るなど不敬であろう」
「え、あ、そうか。俺のせいじゃねぇじゃん」
「不慣れにもほどがあろう。先が思いやられる」
惜しげもなく晒されているオジマンディアスの体に寄り掛かる体勢のまま見上げると、オジマンディアスは優しい目つきで唯斗の髪を梳くように撫でる。
「先って…?」
「お前の体を暴き、すべてを余のものとする行為だ」
「な…ッ、」
「ふははは、今から茹だってどうする」
確かに今からこんな調子では、というのは唯斗でも思うが、それにしても顔を赤くする唯斗を見てオジマンディアスは楽しげだ。
むっとしかけるも、オジマンディアスは擽るように唯斗の耳元を撫でてから囁く。
「余の寵愛を受ける、ということが何を意味するか、少しずつ教えてやろう。ファラオではなく、一人の男として余に愛される覚悟をしておくがいい。すべてを知ったとき、お前は心も体も余のものだ」
オジマンディアスは、「恋人」としての重要なことを十全に理解している。すなわち、特別な関係として、唯斗にだけ見せる表情や言動をすべて教えると言っているのである。
すべてを知るよりもずっと先に、唯斗は自分のすべてをこの男に預けてしまうのではないか、そんな当たり前のことに今頃気づいたのだった。