長編番外編−家族写真
アガルタ後
アーサーと主とボイジャー
「おや、あれは…」
アガルタから半月ほど経ったころ、アーサーと二人で廊下を歩いているときだった。
アーサーがふと、屋外の暴風雪が見られる窓の前を漂う少年の姿を見つけた。
「あれは確か、つい何日か前にやってきた…」
「あぁ、ボイジャーか」
最初の挨拶だけして、それ以来カルデアで見かけていなかった新入りのサーヴァント、ボイジャーだ。
クラスはフォーリナー、まだよく分かっていないことだらけのクラスではあるが、宇宙探査機「ボイジャー」と、フランスの有名な小説「星の王子さま」が混ざって生み出された存在らしい。フォーリナーは普通のサーヴァントとは成り立ちが違うようだが、このあたりはダ・ヴィンチが調査中である。
ボイジャーもこちらに気づいたらしい、ふよふよと漂ってこちらにやってきた。
「ええと、唯斗、と…こちらはだれかしら、まるで王子さまみたいだね」
「私はアーサー・ペンドラゴン、この世界の者ではないが、アーサー王だよ」
「わあ、あのアーサー王?すごいんだね!ぼくはボイジャー、よろしくね」
「ああ、よろしく」
見た目通りと言ってはなんだが、ゆったりとしたペースの口調はやや舌っ足らずにも感じられ、それが愛らしくアーサーも微笑む。
チュニックと黄色いマフラーがふわりと無重力のように舞って、まるで天使のような見た目ではあるが、これで宇宙探査機という無機物なのだ。
それにしても、こうして見るとまるで親子のようだ。
「なんかあれだな、アーサーとボイジャーって親子っぽさあるな」
「なっ、僕は見た目的にはまだ父親の年齢では…」
アーサーは一応外見上は10代後半らしいが、騎士としての歴戦の経験や王としての貫禄、鍛えられた体などもあって、正直唯斗としては20代に見えている。
それは言わないでおいてやりつつ、唯斗は話を続ける。
「ほら、髪の色と目の色がさ」
「なるほど…まぁ、それだと該当する英霊はほかにもいそうだけど」
「ぼくとアーサー王が、にているのかい?うれしいなぁ。ぼくは、星をながめる、こうかいしゃ。アーサー王は、星のけんをふるう、きしおうさま。たしかに、星のえんがあるのかもしれないね」
アーサーには、唯斗からボイジャーがどんな英霊かすでに話してある。
宇宙探査機ボイジャーは、ドレイクやニコラ・テスラに続く、星を広げた開拓者だ。地球の人間が観測できる最も遠い場所を更新し続けるボイジャーは、太陽系の惑星たちを観測してきたほか、今も遠く遠く旅を続けている。
近いうちにそのバッテリーが寿命を迎えるとされているが、ボイジャーが英霊となったのはより未来なのだという。
アーサーは、中世はおろか近現代の人類すら想像もつかないような壮大な旅路と、その孤独さを知って、とても感慨深げにしていた。
するとそこに、立香が通りかかった。唯斗たちを見つけて目をパチパチとさせる。
「…びっくりした、ついに唯斗、産んだのかと思った」
「いやマジで何言ってんだお前」
「いや〜、アーサーと唯斗の子かと思ったらボイジャーかぁ〜、焦った〜」
「?ぼくは唯斗とアーサー王からうまれたのかい?」
どういうことかときょとんとするボイジャーに、アーサーは少し考えるそぶりを見せたあと、にこやかに微笑んだ。
「そうだよ」
「いや『そうだよ』じゃねぇわ」
爽やかな100点満点の笑顔で何を言い出すかと思えば、とんでもない爆弾発言である。立香はゲラゲラと笑ったあと、スマホを取り出す。
「はい、家族写真撮ろうね」
「ありがとう藤丸君」
「おい」
アーサーは聞かずに、ボイジャーをゆったりと抱き寄せると、唯斗の肩も抱く。ボイジャーは分かっていないながらも応じておとなしくアーサーの腕の中にいる。
そうしてまるで家族写真のようなものを撮られてしまったわけだが、後日、唯斗はこっそり立香にデータを送るよう頼んだ。
ちなみに、一連の話を聞いたエリセは、いろんな意味で羨ましかったらしく、立香に「事務所通してもらえます!?」とキレたあと、同じくデータを要求したのだという。