brise de printemps−16
ガウェインが着地しようとしたところから、魔力のメンヒルが次々と出現して爆発し、さらに瓦礫がガウェインの周囲に転移して巨大な刃物と化し、勢いよく射出される。
無数の弾丸がガウェインを突き刺すようにして空を切り、ガウェインが防げなかったものが突き刺さる。
そして、ガウェインがそちらに気を取られ、煙が唯斗たちを隠した、その瞬間。
唯斗はシャルルに近寄ると、その白い髪が覗く後頭部に手を差し込み引き寄せて、6センチ高い紺碧が丸くなるのを見つつ、シャルルの唇に自身のものを重ね合わせた。
魔力供給を行い、シャルルが宝具を放てるようにするためだったが、シャルルは目を見開いてから、唯斗の咥内に舌をねじ込み、逆に唯斗を抱き寄せる。
「っ、ん、」
やや乱暴に咥内を乱され、上顎を名残惜しそうに撫でられたことでぞわりとして小さな声が漏れてしまった。ガウェインが瓦礫を跳ねのけた轟音で響きこそしなかったが、恥ずかしさがこみ上げる。
すぐシャルルの口は離れたが、今度は顔を寄せて耳元で囁かれる。
「…帰ったら、もっかいちゃんと、な」
「……へ、」
「よし!サンキューマスター!いっちょやるか!」
低い声で言われたことを問い直す前に、シャルルは体を離して明るく言いながら剣を振るう。ガウェインの方も唯斗の魔術をすべて弾いたようで、こちらに向き直ろうとしていた。
聞き間違いでなければもう一回などと言われたが、今はとりあえず、シャルルの霊基も魔力も問題なさそうだ。
「…、お前な」
「まぁまぁ。カッコ良いとこ、見たくないかい?」
「…分かった。シャルル、宝具解放」
「おう!…千変万化の我が剣をここに」
あっけらかんと笑ったシャルルだったが、唯斗の指示でジュワユーズを振って宝具の真名を解放していく。
空中に浮かぶと、その背中から、魔力光による翼が出現した。その周りを取り囲むように、いくつもの聖剣が現れる。
「無限の色彩よ、我が王権よ。全て、全てこの輝きに屈せよ!その名は…」
12本の剣に囲まれたシャルルは、自身のジュワユーズを振り上げる。
「
王勇を示せ、遍く世を巡る十二の輝剣!!」
真名解放を終えた直後、シャルルは目にも止まらぬ速さで空中を飛び出した。色とりどりに輝く聖剣とともに、ジュワユーズの輝きが尾を引くように空中に残るほどの速さでガウェインに迫る。
砲弾のようになった聖剣たちは、着弾とともに爆発を引き起こす。ガウェインがその爆風に包まれたところへ、シャルルのジュワユーズ本体が突っ込んだ。
「ぐぁあッ!!」
ガウェインの声が響くのと同時に、シャルルは跳躍して唯斗の前に降り立つ。光の翼は消えており、残り香のように、光の粒子が瓦礫の山と化した回廊に漂っていた。
その粒子には、ガウェインが退去していく金光のものも含まれている。
「どうだった?マスター」
「…最高にカッコ良かったよ」
「そっか!」
シャルルが唯斗の言葉で嬉しそうに笑うのは、出会った当初以来ではないだろうか。暗い顔ばかりさせてしまったが、それでもシャルルは、唯斗のためにここまで来てくれた。
本当に、ここで死ぬかと思ったしそれを覚悟した。けれど、唯斗の願いに応じて、壮絶な痛みを乗り越えて無理やりここに現界してくれたシャルルが助けてくれた。
今この場を凌いでくれたというだけではない。唯斗の願いに応えてくれた、それが初めてのことで、だからこそ、唯斗はシャルルになら願っていいのだと思えたのだ。