Sunset Undead−29


本当に、ゾンビ映画で見るような、誰もいない大通りを感染者の合間を縫って歩いていく光景となっていた。

それなりの数の感染者が歩いているため、パーシヴァルは指で左側を示す。今は車道を歩いているが、歩道に出ようということだろう。
赤いタイルで舗装された歩道は、左側はさらに低くなった川岸になっており、広場として市場が開催されることもある場所だ。

逃げ込んだ人々がまとめて感染したのか、ざっと見て50名ほどの生きた感染者が歩いている。
この歩道はやや高い位置にあるため、川岸からの感染者が来ることはない。道路側だけを注視していればいいし、もともと歩道沿いに止められていた車が多く、壁となっている。

このまま静かに進めばなんとか、と思ったその時だった。

前方、この大通りが内陸側に入って坂をカーブしながら上がって崖の上を通るようになりながら、川沿いに直進する2車線の道が分岐する開けた場所で、建物から出て走り出した女性たちがいた。
女性たちの足音は大きく、気づいた感染者が一斉に走り出す。それは、二人にいる辺りの者たちも同様だった。


「っ、まずい…!」


前方では女性たちが襲われてけたたましい悲鳴を上げている。ますます感染者が集まっているが、あの場所が感染者だらけになると、二人も身動きが取れなくなってしまう。


「走ろう!」


パーシヴァルは声を抑えずに言うと、唯斗の手を引っ張って歩道を走り始めた。
時折荷物や死体を飛び越え、サイレンサー銃で歩道の感染者の足を撃ち抜いて倒れさせていく。
まだ走れる感染者たちは、大通りを女性たちの方へと向かっていき、ほぼ同じ速さで二人も歩道を走っていた。

やがて、道が分岐するために一時的に5車線になった開けた場所に到着する。すでに女性たちはこと切れているが、なお感染者たちが集まっていた。


「っ、私が注意を惹く、君はブランテ通りを上がるんだ!」

「なっ、」


それは危険だと言いたかったが、確かに、高台へと上がって名前をブランテ通りに変えるこの道の先には、あまり感染者の姿がない。
川沿いの2車線道路と、これまで二人が通ってきた東側の方から感染者が迫っていた。しかし、それではパーシヴァルは逃げられないだろう。


「危険すぎる!」

「しかしっ、」


唯斗はそこでふと、近くに重そうなリュックが落ちているのを見つけた。さらに、歩道の柵の下、川岸の広場には乗用車が停車している。事故を起こしたわけではなく、もともとここに駐車してあったのだろう。

唯斗はすぐにリュックを持ち上げると、その車に向けて投げ落とした。歩道から眼下の車に落下したリュックはボンネットに直撃し、車体は大きく揺れて、それによってセキュリティが作動してけたたましいアラート音を鳴らし始めた。


「今だ、走るぞ!」

「君は本当に…!」


パーシヴァルは少し呆れたように笑いながら、唯斗の手を引いて走り出す。二人の足音よりも、背後のアラート音の方がはるかに大きい。
そのうえ、東側の大通りから来ている者は歩道から広場に転落するし、西の2車線道路からの感染者は大通りに出る前に川岸の方へと入っていく。自然と、二人の前は開けており、緩いカーブの坂道はクリアになっていた。

そのままブランテ通りを駆け上がり坂の上に出ると、正面には道を封鎖するドイツ軍が見えた。パーシヴァルが手を振れば、気づいた兵士たちが駆けつけてくる。周囲の建物はすべてバリケードで封鎖されており、住民が立てこもっていると分かる。

ついに二人は、ドイツ軍との合流に成功したのだ。



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