Égalité−10


こちらを見定めるつもりのランスロットたちに対して、唯斗とサンソンはつつがなく対応した。高級なレストランの個室に通された唯斗たちは、ありふれた話題に興じつつ食事を進める。
唯斗の右側にギャラハッド、左側にサンソンが座り、三人の正面にはガウェインとランスロットが座った。
唯斗とランスロット共通の故郷であるブルターニュの話題や、パリ、ロンドンの話題、それぞれの仕事の話など、大人として当たり前の一般的な話を和気藹々とした雰囲気で話す。
その裏で、互いに腹を探っているのだ。特に向こうは、突然現れた部外者に対して信用に値するか判断しようとしていることだろう。

それはこちらも同じだ。ランスロットたちが唯斗たちを見定める理由は、単にギャラハッドが唆されているのではという心配なのか、それとも自分のスキャンダラスな過去をメディアなどにバラされないかという保身なのか。
ベディヴィエールの話を聞いた限り、この二人であれば恐らく前者だろうと唯斗は考えている。決してこの二人は悪人ではなく、むしろ華々しい功績にわりにその人格は紳士どころか騎士のようだと聞く。

もちろん、ビジネスマンとして後者の要素はゼロではないだろう。とはいえ、こうして話していても、ランスロットは無言を貫くギャラハッドをたまに見遣っている。話しかけようとしては躊躇っており、彼なりになんとかしようという気はあるのだと分かる。

一通りフルコースも終わり、デザートを済ませてカトラリーも空き、グラスのワインに代わってコーヒーの入ったカップが運ばれる。
店員がいなくなって、個室には一瞬沈黙が降りる。


「…ギャラハッド、ルクセンブルクの旅行はいかがでした?」


そこへ、ガウェインがついに切り出した。話題そのものは一般的なものだが、それは本題への入り口だ。
唯斗とサンソンもほんの少しだけ居住まいをただす。もとよりリラックスなどしていない。


「…、長閑としていてとても素敵なところでした。唯斗さんに郊外に連れて行ってもらいましたが、穏やかで牧歌的な光景はフランスよりも懐かしさを感じました」


ギャラハッドもそれを理解しているため、意図的に唯斗を話に出す。ガウェインはにっこりと笑う。


「それは良かった。唯斗さんはどうやってギャラハッドと出会ったのですか?」

「日用品の買い物のために街に出ていたところ、広場で人種差別的な言動でもって掴みかかられまして。酒に酔った大柄な男でしたが、ギャラハッドがすかさず止めに入ってくれたんです。その勇気に感嘆し、お礼にカフェで一杯お付き合いいただいたんですが、そこで色々と話を聞きまして」


色々と、という言い方でランスロットたちも内容を理解しただろう。
再び口を閉ざしたギャラハッドを見て、ランスロットは代わりにこちらに視線を向けて口を開く。


「なるほど…ベディヴィエールから少し話を窺っていましたが、随分と唯斗さんにはご相談に乗っていただいたということで」

「ええ、そうですね。ちょうど、私も似たような境遇だったものですから…近々日本に帰る身でもあるので、力になることも吝かではないと」

「力になる、というのは具体的には…?」


少しずつ緊張感が場を支配していく。張り詰める空気の中、唯斗は毅然としてランスロットに相対する。


「もしギャラハッドが日本に行きたいというなら、私とサンソンで協力して手助けする用意があります」

「日本、ですか。さすがに少し遠いですね…大学はどうするんだギャラハッド、エレーヌにはなんと話すんだ」


ランスロットはついにギャラハッドに直接尋ねる。ギャラハッドはランスロットを見てから、左側に座る唯斗を見上げる。唯斗は目を合わせると、「ちゃんと言えるな」と小さく後押しする。逡巡し、ギャラハッドは頷いてランスロットをしっかりと見据える。覚悟さえ決めれば、ギャラハッドにはまったく迷いも躊躇いもなかった。



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