唯一と一番−19
穏やかに、そして自然に目が覚める。朝日が差し込む明るい部屋の中、すぐにコーヒーの良い匂いが香ってきた。
「お、ちょうど起きましたね」
ロビンはそう言ってベッドの横から唯斗を覗き込む。ベランダから差し込む光を遮って、ロビンの甘いたれ目がこちらを見下ろしていた。
「おはようさん、体調は?」
「…おはよ、大丈夫。コーヒー?」
「おう。そら、起きられます?」
「んー…」
ロビンに体を起こすのを手伝ってもらうが、これではまるで風邪でも引いているかのようだ。元気なときなのにここまで手取り足取りで良いのだろうか、とも思ったが、今日くらいはロビンに全部任せてしまっても怒られないだろう。
ベッドヘッドに寄りかかっていると、ロビンがカップを持ってくる。良い香りのするコーヒーを受け取ると、ロビンも隣に座ってコーヒーを啜った。
程よく冷まされているため、ロビンももうすぐにでも唯斗を起こそうとしていたのだろう。ベストなタイミングで起きられたようだ。
ひとしきり飲んでからサイドテーブルにカップを置いて、右隣のロビンに凭れる。肩に頭を置くと、優しく撫でられた。
「さて、ボチボチ用意して朝飯でも食べに行きますか」
「わかった」
寝起きの良くない唯斗のための時間も、唯斗の意識がはっきりしてきたのを見計らってロビンから切り替える。顔を洗ってくると、すでに礼装の水着とアロハシャツをロビンが用意してくれていた。
それに着替えて、二人で朝食会場に下りる。すでに藤丸たちも席について食べ始めていたため、唯斗とロビンは並んで座った。
ロビンが適当に取ってきてくれていたものは、すべて唯斗の気分に合致したもので、それを食べ進めるうちに完全に意識が通常のものに覚醒した。
「昼飯どうっすかな。唯斗、なんか食ってみたいもんあります?」
「なんだっけ、もこもこみてぇな名前のヤツとか?」
「ロコモコな?おいおいさすがに可愛すぎだろそれは。逮捕ですよ」
覚醒したはずなのにど忘れしていたハワイ料理の名前を言うと、唯斗の左側に座っているロビンはそんなことを言って、手錠の真似をしながら唯斗の左手を握りしめながら肩を抱いてくる。
「え、何の罪で逮捕されんの、俺」
「んー、可愛すぎて俺の寿命縮めた罪とか?」
「なんだそれ。ちなみに刑罰は?」
「そりゃ、俺のそばで無期懲役っしょ」
「重罪じゃん。てかそれだと俺もうすでに服役中だろ」
「そうだったわ」
くすくすと笑っていると、耐えかねたようにジャンヌ・オルタががたりと立ち上がった。
「燃やすわ、完膚なきまでに燃やすわ。このあたしの目の前でクソ糖度高いバカップルぶりを見せつけるなんて、ご希望通り火刑に処してあげるわよ…!」
「オルタちゃんストップ!落ち着いて!」
「オルタ殿ここは堪えられよ!」
「そ、そうですオルタさん!」
慌てて藤丸たちはジャンヌ・オルタを押さえつけてくれたが、ロビンはニヤリとして悪びれない。
「おっと、こりゃ申し訳ねぇ。これからバカンスデートなもんで、焦げるのは恋だけで十分なんですわ」
「燃やすわ」
「やってオルタちゃん」
「ずらかるぞ唯斗」
「煽るなよ…」
藤丸の目が据わっている。ロビンは慌てて唯斗を連れて走り出す。呆れつつ、ここまでロビンがあからさまに唯斗への気持ちを出してくれていることを嬉しく思ってしまう自分もいた。
その後、ロビンは完璧なエスコートで、デートとやらに連れ出してくれた。ストリートで店を回り、ロコモコを食べ、ジェラートやトロピカルジュースで喉を潤し、唯斗の希望していた伝統工芸も見ることができた。
やがて、太陽が傾き始めたころにビーチに戻ってきた。まだ多くの人が海水浴に興じており、太陽が西日となっても賑わっている。
しばらくビーチで遊んでから、パラソルの下で休みつつ夕日を眺めてぼんやりとするらしい。時間の緩急のつけ方もプロフェッショナルだ。