Dom/Subシリーズ−騎士王の激情2
欲求を解消するための行為を「特性解放」というが、最近は英語でプレイと呼ぶことが一般的だ。
パートナーを作るだけでなく、軽いものなら友人や兄弟間でやることもあるし、専用のサービスを提供している店で行うこともある。一般に、3度以上のプレイは、適応できるパートナーがいない場合は専用サービスを頼ることになり、4度以上は服薬を行うことも多い。
唯斗はほとんどプレイというものをしたことがなく、父にネグレクトの果てに召喚術の生贄にされかけてからは家族すらもおらず、フランスの伯母からは虐待されていたこともあり、解消できず慢性的な不調に悩まされていた。
それで薬を服用していたのだが、プレイに付き合ってもらってもいいと思えるようなサーヴァントが現れたら考える、などといった想定が覆されることとなった。
アーサーの召喚だ。
「霊基の調節で欲求をコントロールできないのかい?」
医務室にて、ダ・ヴィンチの驚く声が響く。ロマニも目を見張っていたし、唯斗も驚いていた。
アーサー・ペンドラゴン、特異点Fとは違い男性のアーサー王であり、かつて、生贄として召喚術に巻き込まれたときに出会っていた相手だ。
唯斗がアニムスフィア家の要求に応じてカルデアにやってきたのは、アーサーに再会できるかもしれないというごく淡い期待があったからだったが、まさにシステム・フェイトの運命というべきか、第一特異点から帰還したあとの戦力強化で、アーサーの召喚に成功してしまったのである。
召喚された英霊は、必ず現代基準での第二性差の評価を行う。生きている人間のマスターやスタッフに危害が及ばないように管理するためであり、やはり大半が強度Dom性である。
アーサーも強度Dom性だったが、そこでアーサーが話したのが、他のサーヴァントのように霊基の調節による欲求のコントロールができないということだった。
「私は正確には死した英霊ではない、ということになっている。だから、霊体化もできないんだ。第二性差の制御も、他のサーヴァントのように行うことができない」
「ということは、アーサー王は人間と同じように、特性解放か服薬しかないわけだ」
ロマニはすぐに受け入れる。一方、ダ・ヴィンチは面白そうに口の端を上げる。
「アーサー王はIGCPか。まさに、別名である騎士属性にふさわしいね。唯斗君とも相性がいい」
アーサーのタイプはIGCP、すなわち「守りたい×世話したい」のGC型であって、依存せず、独占したいという気質を持つ者だ。
Dom性のIGCPの別名は「騎士」、まさに騎士王たるアーサーにふさわしいタイプだった。
特に、唯斗と同じく庇護特性の保護欲求Gと干渉特性の介助欲求Cが3度である。唯斗はDGAPのため、依存欲求Dがあるが、唯斗の依存欲求は2度と低めでありそこは問題ない。アーサーの自立欲求も1度のため、自立特性のずれは障害にはならないだろう。
しいて言えば、唯斗の被虐欲求Aが3度であり解消が必要であるのに対して、アーサーがプレイの中で応じられるかどうかがだけがネックといったところか。
「私のころには当然だがなかった仕組みだ。便利なものだね」
「アルファベット4文字での体系化は戦後のことだからな。とりあえず、アーサーはそもそも解消が不可欠ってことだよな」
重要なのはそこだ。ほかのサーヴァントについては欲求の解消は必要ではない。しかしアーサーは別である。
ならば、第一義として、マスターである唯斗がその解消に応じる必要があるし、唯斗も強度Sub性のため解消が必要だ。
ロマニは唯斗の言葉に頷く。
「そうだね。飲まなくていい薬は飲まない方がいい。健康面からいっても、唯斗君とアーサー王はどちらも欲求の解消が必要な強度であり、幸いにも相性がいいわけだから、僕としてはプレイでの解消を推奨する」
「私は構わないよ。マスターはどうだろうか」
「…俺も、まぁ、アーサーがいいならいい」
唯斗の無味乾燥した人生において、唯一の温かい記憶がアーサーとのほんの数分の出会いだった。そんな相手であれば、断る余地など、最初からなかった。