Dom/Subシリーズ−騎士王の激情5


その後も、定期的に唯斗はアーサーとのプレイによる欲求の解消を行いつつ、特異点探索、時間神殿での決戦、続くレムナントオーダーなどに取り組んだ。

立香やマシュとの関係も深まり、人理が復旧してからの魔神柱の残党狩りも進む中、アーサーとの関係も深まっていた。
最終決戦の折に想いを伝えあい、恋人という関係が追加され、アガルタで魔神柱(ケーキ)入刀を行い、ルルハワで指輪の交換まで行っている。

まさかアーサーとここまでの関係になるとは、と感慨深い。

だが、順調だったのがアーサーの強靭な精神力によるものだったということを知るには、いささか遅かった。




ルルハワでのあまりに長いバカンスから帰還してから1週間。
長可に焚きつけられた唯斗のサーヴァントたちから言い寄られることも多くなっていたある日のことだった。

待機期間のため、紫式部の図書館で本を読んでから自室に帰る途中の廊下で、突然通信が入った。制服の右腕につけた通信機から、焦ったようなダ・ヴィンチの声が聞こえる。


『唯斗君!今どこだい!?』

「え…普通に部屋戻る廊下にいるけど」

『緊急事態だ。アーサー王のDom性が変質した。いや、戻ったというべきか』

「は?どういうことだ?」

『アーサー王のDom性タイプはIGCPだと観測されていた。しかし本当はDGCP、それも要配慮Dom性だったんだ!D-4度、G-5度、C-5度、P-4度という超強度、これがそのまま君に向かうと、いくら君でも危険だ!』


ダ・ヴィンチの報告に、唯斗は呆然とする。
普通、確立された第二性差タイプが途中から変化することはあり得ない。服薬によって強度を下げることくらいはできるが、欲求が変化するというのは人間では起こらないことだ。

だが、ダ・ヴィンチは「戻った」という表現をした。つまり、これまでのIGCPという結果自体が間違っていたということだ。

しかも、普通の人間なら一つでも4度の欲求があれば生活に支障をきたすというのに、それが2つ、さらに5度まで2つある。強度5度ともなると、その欲求は極めて重大なレベルで、ときに心身の危険に及ぶこともある。


「性質の変化を観測した理由は?」

『5度の欲求を持つサーヴァントはアラートが出る仕組みだ。召喚していないのにそれが突然鳴って、確認したらアーサー王のタイプが変わっていた。トリスメギストスは、魔術による抑制が突然絶えた、と回答している』

「魔術で押さえてたってことか。まぁ、そんな強度持って王になるっていうなら抑制して当然だけど…とりあえず抑制が突然なくなった直接的な原因は不明、アーサーがどこにいるのかも分からない、ってことだな」

『その通りだ。今すぐそこから…』


ダ・ヴィンチの言葉の途中で、突然、背後から手が伸びてきて、通信機を切った。音声が途絶えるのと同時に、後ろから抱き締められる。


「こんなところにいたんだね、唯斗」

「…アーサー」


背後を見上げれば、どろりとした瞳でこちらを見下ろすアーサーがいた。唯斗を抱き締める腕は、痛みこそないが強く唯斗を拘束しており、逃がすつもりがないと分かる。そもそも、唯斗は逃げるつもりなどなかった。


「体大丈夫か?抑制できなくなったって聞いた。いろいろ分からねえけど、心身の不調はないか?」

「ふふ、こんな状況でも君は僕を心配してくれるんだね。本当に愛しい…大丈夫だよ、なんともない。そうだろう?マーリン」


アーサーが呼びかけるのと同時に、どこからともなくマーリンが現れた。
マーリンはアーサーを見て、珍しく複雑そうな表情をしていた。


「マーリン、アーサーに抑制術式をかけていたのは、アーサーの世界のマーリンだよな」

「ご推察の通りだよ、マイロード。ブリテンを統べる騎士王として、強すぎる自我と欲求は忌むべきものだった。それを魔術で抑制した。こちらもあちらも同じことさ」

「なんで突然切れた?」

「私にも断定はできないが…この抑制術式は、王自身の抑制しようという意志を前提に維持される。自身の欲求を否定する心、と言ってもいい。恐らくルルハワでの一件以来、その術式の前提条件となる王の自制が揺らいだ。それにより術式が壊れたんだろう。要は、君のことが好きすぎて抑制術式に勝ってしまった、ということさ」


自分である前に王でなければならなかったアーサーの、強靭な精神力とマーリンの術式によって、これほどの強度の欲求が抑制されていた。
いや、抑制されていてもなお強度Dom性になってしまうレベルである、ということだ。
自立特性において、自立欲求の強度が1度であったことが気になっていたが、依存欲求4度から抑制された結果、僅かに反転したということなのだろう。


「マーリン、私は唯斗とともにしばらく二人で過ごす。外側からの封印は任せたよ」

「…仰せのままに、異世界の我が王。マスターも気を付けて」


どうやら、アーサーはしばらく唯斗を監禁するつもりらしい。これほどの強度であることから、その覚悟はしていた。
封印をマーリンが行うというのなら、もしものときは解放してくれる。むしろそこは安心材料だし、アーサーがマーリンを頼ったのはむしろ自分から唯斗を守るためでもあるのだろう。



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