Dom/Subシリーズ−騎士王の激情10
それからさらに数時間、スペースも完全に抜け、アーサーも安定したところで、唯斗は先にアーサーと話すことにした。
もちろん、ダ・ヴィンチと今後の相談をする必要はあるが、いずれにしても唯斗とアーサーは恋人なのだから、先にコンセンサスを取っておくべきだ。
すでに深夜になっているため、再びベッドで横になり、アーサーの腕に頭を乗せて抱き締められている。アーサーの温もりで寝そうになるが、唯斗は口を開く。
「…アーサー、」
「うん?」
「これからの話だけど。アーサーは、どれくらい欲求の解消をプレイで済ませたい?」
すぐそばにある端正な顔を見上げて尋ねると、アーサーは真剣な表情になる。欲求が安定した今、すでにアーサーは理性によってDom性を抑えている状態だ。
「君の負担にならない範囲、かつカルデアの任務を妨げない範囲で」
「俺も後者には賛成だ。でも、俺の負担ってのは、まぁ、そこまで考えなくていい」
「そういうわけにはいかない。それに、2つは関連することでもある」
アーサーの言う通り、カルデアの特異点探索の仕事を妨げないようにするためには、唯斗のコンディションを整えることが重要で、自然と唯斗の負担にならない範囲にしておかなければならない。それは唯斗も理解している。
「そりゃもちろんそうだ。だから、マスターとしての俺の負担、ってのは、レイシフトを妨げないことに含まれる。でも、マスターではなく俺の負担って意味においては、気にしなくていい」
今日、日付が変わってしまったので昨日だが、もとはオフではなく待機時間だった。実態としてはオフに近いのだが、何か発生したときにはすぐ動けるようにしなければならない。といっても、オフのときも緊急時にすぐ動けるようにしているのだが。
「オフや待機時間とは別に、特性解放のための時間を確保するように調整して、今回みたいにプレイで解消するタイミングを作る。幸い立香がいるし、緊急事態のバックアップはある。もちろん、追加でレイシフトする必要が生じた際にはプレイ中でも問答無用で出動するけどな」
「しかし…」
「じゃあ逆に聞くけど、今回、アーサーは欲求を自分の意思だけで抑えられたか?無理だっただろ?術式が破却された反動ってのはあるけど、それでも、5度欲求は理性ではどうにもできないと現代医学では確かめられてる」
実際にこうして唯斗を監禁して抱き続けた手前、アーサーは否定できない。イレギュラーとはいえ、それでも要配慮第二性は理性と意志ではどうにもならないのだ。
「基本、ダ・ヴィンチが作ってくれてるサーヴァント用の抑制薬で日常の欲求を抑える。そんで、軽いプレイとかで調節しつつ、今回みたいな本格的なプレイの日を設けてそこに合わせていろいろ調整する」
「だが、僕が耐えればいいだけだろう」
「それで不調になって戦闘に影響が出たらどうする?理性で抑圧できなくなったタイミングで今回みたいなことになったとき、緊急事態が起きてたら?」
「…、」
アーサーは反論できず黙る。唯斗は小さく笑い、アーサーの頬に指を滑らせた。そのまま抱き着くと、ほぼ反射的にアーサーも唯斗を抱き締める。
「何よりさ。俺が受け止めたいんだよ。俺を好きだっていうアーサーの感情、全部。そんで、その感情に支配されていたいんだ」
「っ、唯斗…!」
ぎゅっと唯斗を抱き締める腕の力が強まる。もちろん、唯斗が述べた理由はすべて本当だ。計画的に強烈な欲求を解消していくためには、小出しにしつつどうしても本格的なプレイを行うタイミングも必要になる。
だが同時に、唯斗はアーサーの激情を受け止めたかったのだ。
アーサーは唯斗の額にキスを落としてから、至近距離で唯斗を見つめる。その翡翠の瞳は、あまりに激しい感情を見事なまでに押しとどめていた。
「…Domにとっては、Subを支配することが快感なのではなくて、Subにそれを許してもらえていることが快感なのかもしれないね。そう考えると、これは支配・被支配というものではなく、受容と許しの関係なんだろう」
「確かに、そうかもな。相手に受け入れてもらい、相手を受け入れるって、言葉で言うほど簡単なことじゃねぇけど、大事なことだって、俺もこの旅で学んだから」
相手に支配されることを許し、相手を支配することを許してもらう。その心からの信頼と愛情の形が、Dom性とSub性なのかもしれない。
そのアーサーの言葉は唯斗にとってもしっくりくる。
それならやはり、唯斗はアーサーのそれを許したい。
そんな愛の発露が、愛しく思えた。