Dom/Subシリーズ−獅子心王の狂気3


10畳ほどの部屋にむさくるしい男が8人、呼吸もしたくないような空間だ。

するとそこに、早速ボスらしき男がコマンドを発した。


「『おすわり』」

「っ、」


強制的に床に腰を落とすと、男たちの嘲笑が響く。Sub性が差別されている時代であるため当然だ。
Domからの望まないコマンドに接すると、Subは言うことこそ聞いてしまうが欲求は解消されず、不快感が蓄積される。一定値を超えるとSubドロップ状態に陥ってしまう。

リチャードのコマンドは、強烈なDom性の中に唯斗を守ろうという強い意志もあり、それに従うことは心地よかった。
IGCP、別名騎士タイプとも呼ばれるリチャードのDom性はまさに彼の憧れる騎士の英霊に多いものだが、保護欲求がG-5度、独占欲求がP-5度という最大強度を持っており、要配慮Dom性である。
だが、サーヴァントは霊基を自ら調整することで欲求を抑制できるため、普段のリチャードはそんな強烈な欲求を発露することなどなく、唯斗に合わせてくれていた。

そういった相手への配慮と愛情、信頼があって初めて、プレイはまともに機能するのだ。
これがただの暴力であることは言うまでもない。

男が指を唯斗の頬に滑らせる。


「近くで見るともっと綺麗な顔してんじゃねぇか。おら、『舐めろ』」


内心でクソ、と思いながら、男の親指に舌を這わせて舐める。ぞわりと背中を不快感が走る。


「なぁ早くしようぜ」

「うるせぇぞ早漏」


男たちはまた笑う。気持ち悪いには気持ち悪いが、時間稼ぎという点では、前戯で盛り上がってくれるならそれに越したことはなかった。女日照りというのはその通りだったらしい。

唯斗は立たせられ、テーブルに寄りかかる。ボスだろう男はさらにコマンドをかけた。


「『脱げ』」

「…、」


一瞬ためらうがコマンドには逆らえず、礼装のベルトを外して脱いでいく。まだ擬態礼装はアクティブなため、礼装が魔術回路によって励起している限り、唯斗の服装は現地のそれに見えている。
上をすべて脱いだところで、誰かの喉を鳴らす音が聞こえた。コマンドが続かないため、下も脱いでいく。礼装に触れ続けるべく、靴は履いたままにしておくつもりだ。


「っ、あぁもう我慢できねぇ!」


すると、しびれを切らした男の1人が唯斗をテーブルに押し倒した。せっかちな男に笑いが落ちるも、その笑いも余裕がない様子だった。

肌をまさぐる複数の無骨な手、蝋燭の明かりに照らされる下品な表情、すえた汗の臭い、そうしたものに吐きそうになって、目を閉じる。
暴力には慣れている。尊厳を踏みにじられることも、問題ない。治癒術式で治せば外傷を負っても平気だ。そう言い聞かせて心を殺した。




40分ほど経過しただろうか、そこまで長い時間ではないにも関わらず、すでに何回、中に出されたか分からない。
代わる代わる男たちは唯斗の中に突っ込み、乱暴に腰を振り、中に出しては出ていく。最初こそ痛かったが、魔術で治癒し、何度も中に出されたもので滑りが良くなっていることもあって、今では痛みはない。もちろん、快感もないが。

感情を一切なくして、ただの穴として、腰を振る男たちを視界に入れないよう目を強く閉じ続ける。
だが、そろそろ時間だ。唯斗の見立てでは、もうリチャードがこの小屋に唯斗のパスを辿って到着するころだった。

早く会いたい。しかし、こうもあっさりと男たちに回されてしまった唯斗を不快に思わないだろうか。この「汚れ」が見た目だけのものなのか、精神的なものでもあるのか、唯斗にはよく分からない。

そんな中、ついにその時が訪れた。

建付けの悪かった扉が、突如として吹き飛び、轟音とともに室内に倒れこむ。突然の大きな音に男たちは一斉に驚き、さすがプロの盗賊と言うべきか、すぐに臨戦態勢になる。だが、この男相手にそれは無意味だ。


「なんだてめぇ!」

「何者だ!!」

「……あぁ、そうか。そういうことか」


室内の惨状を見たリチャードは一瞬目を見開いたが、すぐにその綺麗な紅の瞳をすっと細めた。

もともと独占欲求の強度が最大値であるDom性だ、所有している自覚があるSubがほかの者に奪われそうになったとき、暴走する恐れがある。加えて、リチャードは生前からその時々でまったく人格が変わるというほど、感情の変動が激しく、そのロジックも常人には理解しがたい。
暴れる前に落ち着かせなければ、と、口を開くが、声が掠れる。


「リチャード…、」


辛うじて名前を言えたが、同時に、目元から水滴がこぼれた。まったく無意識に、目じりから涙がこぼれていたのだ。そんな反応が起こるような感情である自覚がなかったため、驚くが、その驚きも表には現れていないだろう。

そんな唯斗を見て、リチャードは急激にDom性を解放した。まずい、と思うも、体が鉛のように重く動かない。



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