運命の風−4
覚悟を決めると言っても、いったいどうやって、何を根拠にすればいいのか。
高校生という身分で将来のことなど分かりようがないし、安定だとか、生活だとか、そんなことまで考慮できるわけではない。
それなのに、迫られている選択はあまりに重い。
考えるのが憂鬱で、何が一番煩わしいかと言えば、はっきり断るということに対してどこか後ろ向きな自分だった。最も簡単なことはここで終わらせて元の生活に戻ることだ。しかし、どうも選択に否定的なのだ。
それが運命の番という関係による本能的なものである可能性を否定することもできず、唯斗は自分が本当はどうしたいのか、正直分かっていない。
しかし、そのときは否応なしに訪れた。
「お前か、森長可の番ってやつは」
「……人違いです」
「お前みたいな目立つ顔で人違いなんざあるわけねぇだろ!」
夜、買い物に行こうと家を出て歩いていると、ガラの悪い男たちに絡まれた。ショートカットになる路地を歩いていたため、前後を挟まれている。両側には人気のない建設現場と駐車場があるだけで、助けは期待できない。
どうやら森長可に一度のされた者たちのようで、本人ではない唯斗にまで絡んできたらしい。まるで漫画のような展開だ。
「おとなしくしてりゃ痛いことはしねぇ、ついてこい」
高校3年くらいだろうか、大柄な男子生徒たちに囲まれては唯斗もどうしようもない。仕方なく応じて、不良たちについていった。
連れていかれた先は、てっきり打ち捨てられた倉庫か何かかと思ったが、街灯の少ないインターチェンジの高架下だった。インターチェンジといっても、郊外の住宅街にあるため小規模だが、それでも死角が多い。まったく人目につかなさそうだ。
「悪いな、お前を人質にして、森にはサンドバッグになってもらう。呼び出したからもうじき来るぜ」
「……、あいつが来なかったら?」
「何もしないで帰すわけにはいかねぇからな」
男はそう言うと、突然、唯斗を思い切り地面に引き倒した。足を払われ、バランスを崩してコンクリートに倒れこむ。受け身こそ取れたが、直後、腕を拘束されて足も押さえつけられた。
「ってぇな!」
「痛いことはしねぇけど、気持ちいいことはしようぜ」
「は……?いや、お前らβだろ、男相手に…」
「目ぇつぶれば一緒だろ。あと、あいつの番を犯すっつー事実に興奮する」
「お前マジで変態だよな〜」
男子数人に押さえつけられては動けない。興味なさそうな者たちも取り囲んでこちらを見降ろし、長可に対して並々ならぬ憎しみを感じているらしい二人は唯斗を前後で挟むようにして拘束し、服を脱がせにかかる。
「正気かよ…!」
「正気でこんなことするかよ」
せせら笑うと、するりと唯斗の上体を撫でてきて、胸元に手が這う。気持ち悪さに肌が粟立った。
しかし、飽きたようにその手がズボンの中に入り、秘部に至ると、強制的に快感が呼び覚まされた。雄を受け入れる機能がβ女性よりも遥かに高度であるがために、そこを意図的に触られると強引に快楽が脳を叩くのだ。
「ぁっ!ん、」
「…へぇ、結構色っぽい声出すんだな」
「すげ、さすがΩ」
「天性のビッチなだけあるな」
あざ笑う男子たちに、唯斗は唇を噛みしめる。誰が好きでこんな体に生まれるか。
「っ!触んなくそが!」
「……―――ほんとにな、触んなカス」