長編番外編−彼氏面
北米神話大戦イ・プルーリバス・ウナムI
彼氏面するロビンフッドと主
作戦会議が終わって、どう分散して移動するかも決まったところで、睡眠が必要な唯斗と立香、マシュは眠りにつき、サーヴァントたちは思い思いに過ごしつつ警戒に当たる夜の時間となった。
いつも通り、立香はすぐにカルデア支給の寝袋に入って就眠し、マシュも追うように眠りについたが、やはりいつも通り唯斗は眠りに入ることができなかった。
ここのところは睡眠不足で気絶するように眠ることもあったが、今日は明日からのこともあって目が冴えてしまっている。
寝袋から出ると、そっと焚火の周りを見渡したが、アーサーの姿はない。周囲の警戒にあたってくれているようだ。地面に胡坐をかいて焚火を囲むロビンフッドとビリー、ジェロニモは何やら談笑しており、ネロとエリザベートは眠る必要こそないが気分的に眠ることを選択したらしく、木の幹にもたれて寝ていた。
アーサーがいれば、と無意識に思ってしまったが、呼び出すのもばからしい。こんなことで煩わせるのはやや恥ずかしさもあったため、唯斗は起き上がってロビンフッドの隣に腰を下ろす。
「おや、どうしたんです」
「…寝れない」
「唯斗は入眠に時間がかかるようだが、今晩は余計に眠れないようだな」
ジェロニモは道中で唯斗の睡眠が浅いことに気付いていたようで、いよいよ眠れなくなっていた唯斗を気遣わしげに見る。心配させるわけにもいかなかったため、やはり強引に横になろうか、と思ったが、ふと同じようなことが第一特異点でもあったことを思い出す。
あのときはジークフリートに寄りかかって眠ったが、すんなりと眠れたように思う。
そこで、右隣に座るロビンフッドに凭れてみることにした。
「ちょっと失礼する」
「うお、ど、ど、どうかしたんですかいオタク、あざといっスよ」
「…寒い」
説明するのも面倒で、何より気恥ずかしかったため、唯斗は寒いから暖を取るためだという理由に留めた。それはそれで事実だ。
ビリーは面白そうにこちらを見ているが、ロビンフッドは少しだけ慌てたのち、そっと自身のマントを広げた。
先ほどはそのマント自体を唯斗に貸してくれたが、今は肩に凭れている唯斗を抱き寄せつつ、マントの中に唯斗を抱き込むような形になっている。マントを肩にかけるのに合わせて、ロビンフッドの腕が唯斗の肩を抱いていた。
そこまでしてくれるとは思わず、つい至近距離にある端正な顔を見上げてしまう。
「…ありがとう」
「……あんま、無理は禁物ですよ」
存外優しい声にそう言われ、体が触れる部分とマントからじんわりと熱に包まれる。
「ヒュ〜、彼氏面が様になるねぇ〜」
「うるせぇな!」
すると、ビリーがからかってきた。ロビンフッドはすぐに噛みついたが、たまに「ナンパしてぇ〜」とぼやいているロビンフッドにすればどうということはないのではないだろうか。
「…悪い、嫌だったか」
「あ、いや、そういうんじゃなくてですね…つーか、あの騎士王様の手前、彼氏面とかできないっしょ…」
「呼んだかい?」
「うおわ!」
そこへ、唐突にアーサーの声が投げかけられた。振り返ると、二人の後ろにアーサーが立っている。ロビンフッドは驚きつつも、唯斗がバランスを崩さないよう支えてくれていた。
「カルデアでもそうだけど、仲が良いんだね」
「そ、そうですかね〜?」
どこか焦ったようにするロビンフッドだったが、アーサーはニッコリとするだけだ。唯斗はよく分からないながらも、無条件に落ち着く相手であるアーサーを見て欠伸がひとつ漏れる。
「…寝れそうだから寝袋戻る。邪魔して悪かった」
「それは別に構わねえですけど、ほんとマイペースですねぇ…」
「マスターは猫みたいで可愛いだろう?」
「それはまぁ…って自分で言っといて圧かけんなよ……」
何やらまだ話しているのを尻目に、唯斗は寝袋の中に潜り込む。どこか一般人に近しい感覚を持つロビンフッドだからだろう、話していると落ち着くのは、近代の英霊であるサンソンに通ずるものがある。
いずれにせよ、特異点にロビンフッドが召喚されていて良かった。そう思いつつ、瞼を閉じた。