大都会のシルヴァンドル−6


釈然としなさそうにしつつも、気を取り直して公園内を進む。

都心の公園にしては、整備され過ぎていない部分も残っていて、緑豊かな園内はとても長閑で趣がある。

しかし、当然だが今は真冬、冷たい風が木々の間を吹き付けてきて、マフラーの中で首を竦める。


「寒くないですか?」

「いや、大丈夫。悪いな、屋外じゃない方が良かったよな」

「いえ、僕は問題ないです、東京は暖かいので。こちらこそ、こんな寒い日に連れ出してしまってすみません。空いていたらあのカフェにでも入りましょう」


気が利かなかったな、と思っていると、ギャラハッドは園内のカフェを示した。
本当にギャラハッドは平気そうで、欧州の中では温暖な方とは言え、やはりパリで暮らしていただけある。唯斗も欧州育ちのため寒さには耐性がある方だったはずだが、これは単純に体格の違いだろうか。

そうしてカフェに入ると、ちょうど二人席が空いており、暖かい店内に通される。ホットのコーヒーを注文し、オーガニック製品だという砂糖を混ぜて口にすると、思いのほか寒かったのか、ほっと息をついた。

しばらく店内で他愛ない話をしていたが、それも一区切りついたところで、ギャラハッドは「実は、」と切り出した。


「折り入って相談があるんですが」

「そんな気はしてた」

「さすがですね。いえ、気付いていただいているんだろうとは思ってましたけど」


そう、わざわざ案内を頼んだギャラハッドだが、別にそんなことをしなくてもインターナショナルスクールにでも入ればすぐに友人ができたはずだ。わざわざ今の段階で唯斗に声をかけたのは、フランス語ができる年齢の近い相手だからというだけではなさそうだった。
公園を選んだのはそういう考えもあってのことで、ギャラハッドはそれを察していたようだ。


「端的に言うと、僕が公立の学校…あなたと同じ学校に入学することをサポートして欲しいんです」

「インターじゃなく公立の高校に行きたいってことか。さすがに理由は聞かせてくれるよな」


ギャラハッドは頷くと、一口コーヒーを飲んでから、意を決したように話し始めた。それは、避けようと思っていた彼らの家の事情に関することだった。

実は、ギャラハッドはランスロットにとって、意図せず生まれた子供であるらしい。ランスロットは35歳、ギャラハッドは15歳であることから、ランスロットが20歳のときに子供が生まれたということになる。さすがにフランスでも早い方だ。

英国の大学に通っていたランスロットは、そこでとある女性に酒の席で薬を盛られ、勝手に一晩を過ごさせられる羽目になった。その際にできた双子を盾に女性は結婚を求め、裁判にまでなった。

結果、女性は二度とランスロットに近づかない代わりに、双子はランスロット側で面倒を見ることになった。

双子のうち、妹のマシュという少女はスコットランドの名士の家に養子に出して、兄のギャラハッドはレンヌの実家に預けられた。ランスロットは騙されてできた子供から逃げるようにロンドンで仕事に打ち込み、ほとんどレンヌに顔を出すことはなく、ギャラハッドは孤独な子供時代を過ごした。しかも、英国で端女が作った子供ということで、実家の屋敷でも疎まれていたそうだ。

そうしてパリの祖母の元を頼りパリで暮らすようになるが、いい加減に親子関係を修復するよう祖母に言われ、ランスロットは日本への転勤を機にギャラハッドと東京にやってきた。



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