長編番外編−バーサーカー脳とバスターゴリラ


「居場所は最初から」後
ガウェインとの初レイシフト


ガウェインとの関係が改善し、体調も整ってレイシフトができるようになったことで、唯斗は訓練も兼ねて小特異点の修復にアサインされた。
この特異点もわざわざ解決するようなものではなかったが、ついでにリソース回収をするようにも言われている。

場所は13世紀のイスラエルで、人理に対する致命的な影響が出た第六特異点によって大量の特異点がこの時代や地域に歪となって出現していた。
同じことは第五特異点でも起きており、アメリカ周辺および18世紀は特異点が多く観測されている。その優先順位付けもロマニの仕事を増やしていた。


「ここが13世紀中東ですか…」


そうしてやってきたエルサレム南方の荒野にて、唯斗は辺りを見渡すガウェインをそっと見上げる。
もしも記憶がフラッシュバックしたら、と危惧していたが、そんなことは特になく、あの一件によってむしろ最も頼りやすいサーヴァントとも言えるほどになった頼もしい姿だった。


『様子は大丈夫そうだね。本当に良かった』


通信から、ロマニの安堵した声が聞こえてくる。大丈夫だろうという予測の元でレイシフトしたが、心配には心配らしい。


「問題ない。アーラシュとディルムッドもいるし」


今回はガウェインの他にアーラシュとディルムッドもいる。前のリベンジというわけではないが、この三騎がいて唯斗の調子も万全である以上は、主だった問題は想定されない。


「早速敵影だぞマスター」


すると、アーラシュが早速ソウルイーターの接近を確認した。目のない化け物たちが接近し、別方向からはゲイザーも見える。


「ガウェインはソウルイーター、ディルムッドはゲイザーに接敵開始。アーラシュはフォロー…いや、ちょっと待機」

「了解しました」


ガウェインは張り切ってソウルイーターへと瞬間的に駆け出し、ディルムッドも同様にゲイザーへと接近する。ガウェインは瞬発力も一流だ。
念のためアーラシュには待機させたが、案の定、ガウェインの攻撃が始まるとフォローは逆効果だと分かった。

ガウェインは、ガラティーンに炎を纏わせてソウルイーターたちを叩き切っていく。もはやそれは斬撃というより打撃であり、切り裂きながらも殴打するような、そんな重量感のある攻撃だった。


「すげぇな…」

「見てて爽快になるなァ!っと、後方からも粛正騎士が来てるな。こっちは俺で対応するか?」

「数は…10か、距離100メートル切って倒れなかったらガウェイン当てる」

「了解」


ゲイザーは数が多く、ディルムッドは苦戦こそしていないが単純に時間がかかっている。ガウェインの方は炎で焼きながら叩き潰す攻撃で次々と敵を消失させていた。

アーラシュは騎士たちを倒してはいるが、やはり固く、恐らくこちらへの接近を許す個体がいるだろう。

ガウェインが相手取るソウルイーターの群れはもう最後の数匹となっており、そのすべてに一度は攻撃が入っているようだ。


(ガウェイン、俺を挟んで反対側にいる騎士に目標を変更)

(了解いたしました)


念話でガウェインを騎士の方へと向かわせると、凄まじい速さで荒野を駆けて騎士の方へと接近する。アーラシュはそれを見てから、すでに弱っているソウルイーターへの遠距離攻撃に転じた。


「ガウェイン!遠慮しなくていい、もう少し魔力出力上げていいぞ!その代わり、そいつらぶちのめせ!」

「承りました」


唯斗が呼びかけると、ガウェインは微笑んでから騎士たちを次々と薙ぎ払っていく。クラス相性は同じセイバーだが、もうそんな次元ではなく、騎士はあっという間に地面に倒れた。

ちょうど、アーラシュとディルムッドも掃討を終えており、それぞれ唯斗の元へ戻ってくる。


「さすがだな、ガウェイン卿」

「あなたこそ、エールの槍兵、フィオナ騎士団が一番槍」


互いに称え合うディルムッドとガウェインだが、今回の目的である連携のための訓練というのは、あまり気にしなくていいような気がした。


「ガウェインの攻撃は大振りだからな、中近距離レンジの戦闘は近くでやらない方が良さそうだ。フィールドが狭いときはガウェイン一騎でボコすか」

「まァ円卓の騎士は基本的に誰とでも合わせやすいよな」


アーラシュが言う通り、円卓の騎士は歴戦の経験値があり、弓や槍など様々な武器が入り混じっていたことから、基本的には連携もつつがなくできるだろう。慣れればそれで良さそうだ。


「それにしても、ガウェインならあんま考えなくてもぶん殴ってくれるからいいな」

『まずい、バーサーカー脳マスターとゴリラ騎士がタッグを組んでしまった…!ディルムッドもアーラシュも、唯斗君があまり脳筋拗らせないように見張っていてくれ』

「脳筋拗らせるってなんだよ」


アーラシュは笑いながら「割ともう遅いけどな」となかなか失礼なことを言ってきた。ただし否めない。

ガウェインはにこやかに微笑む。


「ご心配なさらず、マスターの指示は的確です。私に任せてくださる限り、私の領分ではそれはもうボコボコにいたしましょう」

「最高だな」

『あぁ…見た目からは想像つかない脳筋だ…立香君といい、なぜそこはそんなに似ているんだ君たちは…』


「全部ぶちのめせばよくない?」と平然と言う立香に「そうだな」とすぐに了承を返す唯斗の会話は、今まで何度もあった。


「そんなところも大変素敵ですマスター」

「ギャップだよな」

『そうだ、周りのサーヴァントもこんなだった…』


肯定しかしないディルムッドとアーラシュに、ロマニは絶望している。結果的に倒せればなんでもいいだろうと思いつつ、また敵が接近しているのが荒野の向こうに見えた。


「よし、引き続き狩りの時間だ」

「ええ、参りましょう」


歩き出す唯斗の隣で、甲冑の音を響かせながら歩き出すガウェインは、歩幅を唯斗に合わせてくれている。

こんなにも気兼ねなく戦えるとは、やはりガウェインを召喚できて幸いだったと思うし、関係を改善できて良かった。通信から気落ちするロマニの声は、すぐにガウェインの剣の音によって聞こえなくなったのだった。



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