長編番外編−学生気分2


「唯斗も一緒に授業受けてくれんの?やった」


すると、テーブルに座る立香がそう言って、初めて立香がいることに気付いた。どうやら実際に授業中だったらしい。


「…悪い、邪魔したな」

「邪魔などではありませんよ。むしろ、あなたも一緒の方がマスターにとっても良いのではとちょうど考えていたところです」

「学校で授業受けてるみたいでいいじゃん、ほら、隣座ってよ」


立香は無邪気にそう言うが、その言葉に、立香は唯斗と違って元の生活を大事にしていたことを思い出す。
それに触れることはせず、ただ、無言で唯斗は隣に座った。

ケイローンも微笑んで、立香の向かいの席に戻る。


「ではちょうど唯斗さんも来たところですので、さきほどの質問をしてみましょう。唯斗さん、マスターのサーヴァントの中で、ランサーのクー・フーリンと相性が悪いセイバーと良いセイバーは分かりますか?」


早速ケイローンの講義が始まった。質問から入ったが、唯斗は少しだけ考えてすぐに回答する。


「ランサーのクー・フーリンは、もとから槍兵としてレンジが広いけど、敏捷性が極めて高いから動きも激しくて、実際の交戦範囲は相当に広い。だから、相性が良いのは味方の動きを冷静に分析して戦えて小回りが利くランスロットとデオン。逆に相性が悪いのはモードレッド、互いに邪魔になる…あぁ、あとは動きが俊敏過ぎて互いに避けられないって意味では、沖田総司もか」

「正解です」

「お〜、さすが唯斗」


唯斗の答えは正解だったようで、ケイローンはそのまま戦闘における空間の使い方の説明に入る。
これまでの戦闘を見ていて肌感覚で知っていたこともあれば、サーヴァントたちの後ろにいるからこそ見えない奥行の話や、互いに知覚する方法、攻撃の余波が思ったよりも大きく影響を与えるケースなど、実際に戦ったことのある戦士でもあるからこその知識を教えてくれた。


「なるほどな、じゃあ衝撃波の融合波面による破壊力を増すためには、あえて地上から距離のある上空で起爆する方がいいのか。でも相手の装甲が固そうなときには、衝撃波によるダメージよりも、爆心で真空状態を創り出す方がいいのか…?」

「爆発による真空状態は、極めて大きな爆轟でないのならそう大した時間続きません。衝撃波で吹き飛ばせば、着地点をサーヴァントが自ら予想して先回りし、生まれた隙を使って集中攻撃に転じることが可能ですので、そのケースでは二次攻撃に利用する方が望ましいでしょう」

「確かに…」

「…唯斗めっちゃ楽しそうだね」


さすが、世界で最初に学術的に地球が丸いことを証明したギリシア文明において知を司る人物だ。様々な分野から話をしていると、つい熱中してしまう。
そんな唯斗を見て、立香がなぜか嬉しそうにそう言った。


「悪い、なんか俺だけ喋っちゃったな」

「生き生きとしてる唯斗が可愛かったからいいよ、別に」

「お前な…」


あっけらかんとする立香に怒る気もなくす。それも微笑ましそうに見ていたケイローンだったが、時計を見て、パンと一つ手を叩く。


「さ、今日はそろそろこのあたりにしておきましょう。地形と天候に応じた初手の迎撃から味方サーヴァントへの二次攻撃フェーズへの移行を、このプリントに記載するのが課題です」


そう言ってどさりと置かれたプリントの束に、立香も唯斗も押し黙る。
様々な地形、および天候ごとに状況が設定され、そこで敵を迎撃する際にどう動くか、という手の打ち方をすべてのパターンで書けという課題である。


「……俺の分もあるんだな」

「先ほど言ったでしょう、あなたにも参加してもらう方がマスターにとっても良いと」

「一蓮托生ってやつだね唯斗!」

「巻き添えってこういうことかアキレウス…!」


課題となるとやる気をなくすのは、唯斗とて他の人間と変わらない。
立香は引き攣った笑みでそんなことを言うため、唯斗はアキレウスが逃げ出した理由を知った。

ちなみに後日、こってりとケイローンに絞られるアキレウスの姿が見られた。



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