長編番外編−言葉の力


「居場所は最初から」後
カルナと話したい主と言葉が足りないカルナと翻訳アルジュナとモンペガウェイン


いろいろと吹っ切れた唯斗は、以前よりも、話したことがあまりない人やサーヴァントに話しかけることに躊躇いがなくなった。
もちろん、緊張するし何を言えばいいのか正解はまだ分からないが、素直に話してみたいと言えば快く応じてもらえている。
単に自分の心の持ちようが変わっただけでしかなく、特に何ができるようになったわけではないのだが、それなりに進歩できたと思っている。

そんな中、唯斗は戦闘で短く話したことがあるだけのカルナに声をかけてみることにした。

カルナ、そしてアルジュナは、第五特異点での記憶を少なからず持っている。もちろん、特異点の記憶である以上は完全なものではなかったが、漠然としていたその記憶はカルデアの記録を閲覧してすべて思い出したそうだ。
神性の高さ、そしてアメリカで二人の再戦が不完全燃焼で終わってしまったことへの忸怩たる思いもあってのことだろう。

逆に言えば、それほどまでに高位のサーヴァントであることも示していて、少し緊張しながら唯斗はカルナに声をかけた。


「カルナ、ちょっといいか」

「む、唯斗か。どうした」


廊下を歩いていたカルナを呼び止めると、すぐにこちらを振り返る。唯斗の接近は気付いていただろうが、話しかけられるとは思っていなかったらしい。


「あのさ、良ければなんだけど。いろんな英霊に話をしてもらってて、カルナにも、差し支えない範囲でいいから、いろいろ聞いてみたくて…」

「?俺と会話がしたいということか?」

「そ、ういうこと」


ストレートな言い方に気恥ずかしくなるが、それがすべてだ。カルナは不思議そうにしてから、こちらを真っすぐ射貫くように見つめて答えた。


「だがお前はつまらない。時間の無駄だろう」

「え、」


ストレートすぎて風穴が空いた。心に。
唯斗は正直ひどくショックを受けたが、しかし考えてみれば、コミュニケーション能力に欠けて面白い話題があるわけでもない唯斗と話をしようなど、英霊たちが懐が深いから応じてくれていただけであって、つまらないのは事実だ。

わきまえていなかったということに気付かされ、唯斗は慌てて取り繕うことにする。


「あー…そうか、悪かった、そんなこと言わせて。気が利かなかったよな…悪い」

「…?」


カルナの顔が見れなくて、唯斗はそれだけ言ってすぐに踵を返した。

廊下を足早に歩いて食堂の近くまで来ると、ちょうど食堂から出てきたらしいガウェインがこちらに気付く。


「おやマスター、どうされたのです?」

「ガウェイン…」


すっかりガウェインには何を言っても大丈夫という意識になっている唯斗は、つかつかとガウェインのところまで行くと、おもむろに抱き着いた。
太い首筋に顔を寄せるようにして抱き着けば、ガウェインはすぐに抱きしめ返してくれる。


「何かあったのですか?」

「…カルナに、お前はつまらないヤツだって言われて……」

「なんと…!そのような誹謗、許すわけにはいきません。マスターたる立香殿に報告せねば」

「俺がどうかした?」


そこまでしなくても、と言おうとする前に、同じく食堂から出てきた立香が首をかしげる。ゲームでもしに行くのか、アルジュナとビリー、ロビンフッドを連れている。


「ちょうど良かった。あなたのサーヴァントであるカルナから、我がマスターが暴言を受けたのです」

「えっ、何言ったのカルナ」

「なんでも、マスターのことを『面白味のない有象無象の凡夫』と罵ったとのこと」

「いやそこまで言われてねぇが???」


誇張されすぎて逆にガウェインに暴言を言われているのかと、唯斗はガウェインの腹に魔術で強化した拳を入れつつ離れる。さすがに呻いて腹を擦るが、ダメージなどないだろう。

困惑する立香に、改めて説明する。


「カルナと話してみたくて、話がしたいって言ったら、『お前はつまらないから時間の無駄だ』って言われて」

「そこそこひどいじゃんそれ…でもカルナがそんなこと言う?」


言われてみれば、唯斗もあのカルナが暴言を吐くとは思えず、疑問に思う。
それに対して、アルジュナがため息交じりに口を開いた。


「ヤツは言葉が圧倒的に足りていないのです。恐らく、『俺と話してもあなたはつまらない思いをするだろうから、時間の無駄なので、他の英霊と話した方が得だろう』と言いたかったのでしょう」

「うっわ、文意の6割はカットされてんじゃん」


ビリーは笑ってはいけない場面だと知りつつ、耐え切れずにやけながら言った。ロビンフッドも肩を震わせている。

立香も苦笑してから、唯斗の背中をそっと撫でる。


「落ち込まないで唯斗、でも一度呼び出そっか」

「や、そこまでしなくても、」

「呼んだかマスター」


そこに現れたのはカルナだった。霊体化を解いたところから察するに、少し前にすでに立香が念話で呼び出しており、ここまで駆けつけてきたのだろう。


「カルナさん、言葉が足りなくて唯斗のデリケートな心傷つけたらしいじゃん」

「まったくおいたわしい…マスターのサーヴァントのうち、私だから良かったものの、ディルムッド殿あたりがこれを聞けば神話大戦がもう一度起こるところでした」


立香、ガウェインから誇張された言葉を聞かされたカルナは目を丸くすると、途端に唯斗を気遣わしげに覗き込む。


「す、すまない、俺はまた言葉が足りなかったのだな」

「カルナ貴様、どうせ自分と話しても唯斗はつまらない、というのを、単に唯斗がつまらないとしか言わなかったのだろう」

「…そうかもしれない。確かに、それだと唯斗がつまらない人間だと言っているように理解できるな」


そう連呼されるのはさすがに傷つく。自覚がある分、唯斗も否定できないためだ。


「…いや、事実俺と話してもつまらないだろうし……」

「あーあ、唯斗のこと傷モノにしたねカルナ」

「どう責任取るんです?」


ニヤニヤと立香が言うと、すかさずロビンフッドも乗る。こういう悪乗りをするのがこの集団である。


「せ、責任…この黄金の鎧で足りるだろうか…?」

「おいカルナは本当にやりかねないからやめろお前ら」



prev next
back
表紙に戻る