長編番外編−言葉の力2


逸話を考えれば何を施してくるか分かったものではない。唯斗が慌てて立香たちを窘めると、カルナは「いや、」と意外にも微笑む。


「それに匹敵するだろう。先ほど、お前は『そんなことを言わせて悪かった』と言った。言葉が足りず誤解させた上でそう言ったということは、俺に負の言葉を言わせたことを謝罪してくれたということだ。怒るでも悲しむでもなく、まず俺を気遣った」


そんなカルナの言葉に面くらっていると、アルジュナも、カルナを前にして気が逆立っていたのを落ち着かせて唯斗の方を向く。


「カルナに同意するのは極めて癪に障りますが、その通りです。もとより、第五特異点の記録を見て以来、私もカルナもあなたに対してはその善性を心地よく感じています」

「そんなこと…」

「あるのですよ、唯斗。敵対した私に対して、あなたは人理をのちに繋ぐ覚悟を示し、そして、敵であった私であっても会えて良かったと誇ると言ってくれた。マスターとあなた、お二人のいるカルデアであれば遺憾なくこの力を発揮しようと思えました」

「アルジュナの言う通りだ、唯斗。特異点でもお前の言葉に、こう見えてだいぶ心を動かされたんだ」


アメリカにおいて、唯斗はアルジュナとの戦闘で啖呵を切った。その後、魔神柱から助けてくれたアルジュナに、どんな立場でも会えたことを誇りに思うと伝えた。
カルナとも、エジソン陣営にかち込んだ際、アーサーとの戦闘を終えて助けてくれたカルナに対して、インドの人々はカルナという存在に、どんな状況でも他者に優しくなれる人でありたいという願いを託しているのだと言った覚えがある。

いつしかロビンフッドたちも微笑ましそうにこちらを見ていて、照れくさくなった唯斗は視線を逸らして頬を掻く。


「…別に、俺がコミュ障なのは事実だし。でも、ありがとう。そう言ってもらえて嬉しい」

「俺もいわゆるコミュ障だと言われるからお揃いだな」

「アルジュナも天然だから、そういうところは唯斗とお揃いじゃない?」


照れ隠しに言った言葉はカルナが自分もそうだと同意を示し、立香もからかうようにアルジュナと唯斗の共通点を上げる。
あまりに恐れ多いことだが、そんなことですら、やはり嬉しく感じてしまう。


「いや、ほぼ神に片足突っ込んでる神性の二人とお揃いとか恐れ多いだろ。まぁ、でも、カルナとアルジュナと似てるところがあるってのは、シンプルに嬉しいっていうか…」


なんだか顔が熱くて、誰とも視線を合わせられない。これなら、からかわれた方がまだマシだ。
すると、おもむろにカルナにわしゃわしゃと頭を撫でられた。反射的に見上げると、微笑む端正な顔が至近距離にあって、さらに顔が赤くなるような気がした。


「ガ、ガウェイン」

「はい。失礼ですが、そろそろマスターがキャパオーバーですので」


ついにガウェインを呼ぶと、ガウェインはすぐにそう言ってマントで唯斗を隠すように覆う。その腕の中にそそくさと隠れれば、ようやく空気が元に戻った。


「円卓がジャーマネやってら」

「少々過保護では?」


からかうロビンフッドは分かるとして、アルジュナも呆れたようにしている。もうあとはこのまま解散の流れだ。しかし、唯斗よりもコミュ障の度合いが深刻なカルナは生真面目に受け止めてしまう。


「む、嫌だったか。すまない」

「嫌じゃないから困ってた…」


そのため、唯斗はマントからちらりと顔を覗かせてカルナにそう返した。


「そうか、なら良かった。それにしても生娘のようで愛らしいな」

「カルナ貴様!インド神話の出自ともあろう者が口説くな!唯斗、あなたが愛らしいのは事実ですがカルナの言葉に他意はありませんのでご安心を」


これが天然との謂れか、と唯斗は二人の追いうちに呻いてガウェインの腕の中に隠れる。ガウェインはそのままマントごと唯斗を抱き締めて二人から離した。


「安心できる要素がありませんね。申し訳ありませんが、あまりマスターに近づかれぬよう」

「も〜、唯斗はほんとフラグ立てるの上手だなぁ〜。ほら、ほんとに唯斗困ってるからもう行こう。カルナもありがとね」


見かねた立香が助け船を出してくれたおかげでようやく場はお開きとなった。不名誉なことを言われた気がしたが、そこは目を瞑ってやる。代わりに、唯斗は最後に一言、もう一度ガウェインの腕から顔を出してカルナとアルジュナを見遣る。


「カルナもアルジュナも、できれば今度、話しかけていいか?」

「もちろんだ」

「…ええ、いつでも構いませんよ」


柔和に笑った二人に安堵した唯斗だったが、その後、事の顛末をガウェインから報告されたアーサーに「また君はそうやってホイホイと!」となぜか叱られることになるのだった。



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