長編番外編−彼氏にするなら
「居場所は最初から」後
サーヴァントの中で付き合うなら誰がいいか話す主と円卓と立香
「お、唯斗殿よいところに」
食堂に飲み物を取りに来た唯斗は、休憩していた立香とともに茶を飲んでいるランスロットに声をかけられた。
見てみると、テーブルには立香を囲むように、ランスロット、トリスタン、ガウェイン、ベディヴィエールと円卓の騎士が揃っていた。
ガウェインはすぐさま立ち上がると、「お飲み物でしたら私が」と申し出る。
「や、大丈夫、ありがとな」
「いえ」
「で、ランスロット、なんか用か?」
良いところに来た、と言ったランスロットの方を見ると、その隣で立香が苦笑する。
「今ちょうど恋バナしててさ」
「恋バナ」
「さっきから散々、誰が一番いいんだみたいな質問攻めされてたんだよね。静謐と清姫どっちにするんだとか」
「うわぁ……」
確かにそういうのが好きそうなメンバーである。立香は困ってはいたようだったが、こういうなんでもない会話を大事にしていることもあって、否定するつもりはないらしい。
「唯斗殿はいかがかと思いまして。マスターはご覧の通り、誰のことも平等に接するお方。では唯斗殿はと」
どうやらランスロットは唯斗に話を振りたいようだ。面倒そうだと思いつつ、立香も顔を輝かせて「気になる!」と言っていたため、逡巡する。
最終的に、立香に合わせて付きあってやることにした。
「はぁ…話は分かった。具体的にはなんだ?誰がタイプとか、そういう話か?」
「それもありますが…できれば、ご自身のサーヴァントの中で付き合うなら誰が一番いいか、ということをお聞きしたく」
「は?」
「うわランスロット天才!エンターテイナー!」
「それほどでも」
前言撤回、やはりこんなこと付き合うんじゃなかった、と内心で愚痴をこぼしながら、立香はランスロットを褒めそやしている。
ここで拒否すれば、恐らくベディヴィエールあたりが諫めてくれるだろう。だが、唯斗は一度応じると決めた手前、諦める。
席に座ってまでして話すのは気が引けたため、立ったまま話を続けることにした。
「…仕方ないな。一人一人検討してけばいいやつか?つか俺もサーヴァントたちも男なのに…」
「唯斗分かってんじゃん!じゃあまずはアーサー王から!」
「おやマスター、いきなり本命ですか」
ノリノリの立香に、トリスタンが意外そうにその最初の選択肢を驚く。唯斗も、てっきりアーサーは最後に話をすることになるかと思っていた。
「いやほら、基準になるかなって」
「マスター、そこまで本気でお考えなんですね…」
ベディヴィエールも苦笑を隠せない。後続のサーヴァントの基準点とするためというわりと正しい道筋で、立香が真面目に考えていることがおかしくなる。
唯斗はアーサーを恋人にする、ということ自体、最近考える機会があったものだから、どう考えたものかと迷う。だが今回は単なる暇つぶしのものであるため、もう少しフランクな考え方の方がいいだろう。
「特に恋人にしたくない理由もないけど…強いて言うなら、なんか、自分は釣り合わないんじゃないかって不安になりそうで、それはストレスだから嫌だな」
「唯斗も結構ガチで考えるじゃん」
立香は噴き出したが、円卓たちは「分かる」という顔になる。正直これは円卓の騎士全員に当てはまるというか、なんなら英霊全員が本来はそうだ。とはいえ、やはりアーサーは別格である。
「じゃあ同じ唯斗のセイバーでガウェインは?」
「シンプルに浮気しそう」
「マスター!!??」
そのまま立香はガウェインに話を進めた。唯斗が即座に答えると、ガウェインは思い切り立ち上がって椅子が音を立てる。円卓の騎士たちは肩を震わせていた。
「お待ちください!私がランスロットのような不忠の騎士だと仰るのですか?!?!」
「うわ声でか…」
「ガウェイン卿やめるんだ」
傷を抉るガウェインにランスロットは咳払いをするが、聞いていない。ガウェインは唯斗の肩を掴んでとんでもない声量で迫る。
ただ、ベディヴィエールも可哀そうに思ったのか、フォローに入った。
「唯斗殿、ランスロット卿はさておき、確かにガウェイン卿はあまりそうしたイメージのある騎士ではないはずです」
「いやほら、レディに恥をかかせるわけにはいかないっつって、一夜限りの、とかしそう」
「あぁ…」
再び全員が「分かる」という顔をする。しかしそれでもガウェインは食い下がった。
「マスター!私はそうした場面であっても躱せます!それくらいの処世術はございますので!」
「そういう場面になっちゃってんのがな、もうな」
「決して過ちは犯しませんとも!ですのでご安心くださいマスター!」
「……いや、仮定の話であって安心もクソもねぇけど」