長編番外編−彼氏にするなら2
なんとか勇むガウェインをいなして席に戻す。言われてみれば、ガウェインなら恥をかかせないようにしつつ操を立てることもできそうだ。コミュ障の唯斗とは違うのである。
「結構容赦ないね〜唯斗。でもめっちゃ面白い…じゃあ次、ランサーだね。ディルムッドは?」
「ディルムッド殿はランスロット卿側の人間ですよマスター」
「ガウェイン卿」
小声で何か言っているガウェインがランスロットと火花を散らす。それは無視して、唯斗はディルムッドのことを少しイメージした。
「…うーん、ランスロットとかガウェインみたく、他の女に、みたいな心配はないよな」
「え、なんで?」
「自分で言うのもなんだけど、マジで俺のことしか見なさそう」
「あぁ〜…」
立香もディルムッドの唯斗への重たい感情表現をよく知っているため、非常に納得したようにしていた。だが、良いことばかりではない。
「ただ、ディルムッドはなんか、いちいちいろんなことに記念日作って全部律儀に祝ってきそう」
「ぶふッ!」
今度はその場にいる全員が噴き出した。恐らく全員の脳内に、「初めてキスをした日ですねマスター」というようなことを逐一祝ってくるディルムッドの姿が浮かんでいることだろう。
そこに、また大きな声が割って入る。
「ちょっとお待ちくださいマスター!記念日を祝うことはそれほどまで悪しきことでしょうか!?」
「どっから出てきたんだお前…」
納得いかないと声を張り上げて唯斗の肩を掴むのはディルムッドだ。ガウェイン同様だが、ガウェインより力は加減されているものの、背がより高いため圧がある。
「私は召喚された日はもちろん、初めて戦闘でご指示を頂戴した日や初めて特異点に呼ばれた日もすべて覚えておりますよ!」
「悪い、俺は覚えてない…」
「マスターが覚えておらずとも私がずっと覚えていましょう!」
面倒なことになったと思っていると、立香が「面倒な彼女の相手してる男の顔してる」とトリスタンに囁いているのが聞こえた。ディルムッドは都合よくそれは聞こえていないようだ。恐らく唯斗にしか集中していない。
ここは話を変えようと、唯斗はディルムッドの手にそっと自身の手を添えた。
「あーほら、それはいいんだけどさ。それよりディルムッド、嫉妬する男は苦手って言ってただろ。女に言い寄られてるとこ見たら俺もさすがに嫉妬するだろうから、そういうの、嫌なんだよな?」
一度、苦手なものを聞いてみたときに、嫉妬深い男は苦手だと言っていたのを思い出す。そこで適当なことを言ってみると、ディルムッドは鮮やかに微笑んで見せた。
「あぁ、その嫉妬というのは私に対するものであって、己を相対的に卑下する類のものです。今マスターが仰ったのは、私に迫る者への嫉妬でしょう。むしろ大変に可愛らしい。ご安心ください、このディルムッド、あなたを不安にさせないよう全力で愛し抜いて見せます」
「……いや、だからこれ仮定の話な」
とりあえずディルムッドの機嫌は良くなり、鍛錬に行くと言ってディルムッドは食堂を出て行った。
「いやぁ、相変わらずだね、ディルムッドって。まぁいいや、アーチャーの二人は?」
なんでもなかったかのように話を先に進める立香のスルースキルには、素直に感心したくなる。
唯斗に逃げる暇を与えないあたりもさすがだ。
アーチャー二人、エミヤとアーラシュだが、唯斗は首をかしげた。
「エミヤは恋人っていうか親みたいなこと言いそうだろ。生活面で折り合えない気がする」
「それはマジで分かる。ほんとお母さんだもんね。アーラシュは?アーラシュも非の打ち所がない彼氏力あると思うけど」
エミヤの評価については言うまでもないことのため、誰も疑問に思っていなさそうだ。聞こえていたら怒られるだろうが、エミヤやタマモキャットと話しているのがちらりと遠くの厨房で見えたため大丈夫だろう。
「アーラシュは、ガウェインとかディルムッドよりも親しみやすい分、言い寄るヤツも多そうだからな、やっぱずっと不安に思いながら生活するのは嫌だ」
「唯斗って結構かわいい考え方するよね」
「は?」