長編番外編−彼氏にするなら3
なぜか立香がしみじみと言って、それに騎士たちも頷いているが、唯斗は何がどう可愛い考え方になるのか理解できない。
それに気づいたトリスタンが、ふわりと微笑んで説明する。
「相手を嫌になるのではなく、相手のそういう様子に対してご自身が不安になることを嫌がっておられる。そういうところは、大変可愛らしく好ましく思いますよ」
「っ、何言ってんだマジで…あー、もういいか?これで三大騎士は全員言っただろ」
「え?まだアサシンとキャスターとライダー残ってるよね?」
トリスタンの顔が見れなくて目を逸らし、話を切り上げようと試みたが、立香は容赦なく続けた。逃げられるとも思っていなかったため、唯斗はため息をついた。
「はいはい…まぁでも、古代王の二人は論外だろ。価値観が違いすぎるし、オジマンディアスに至ってはネフェルタリ一筋だしな」
「それはそうだね。あの二人はちょっと別枠かもだ。じゃあアキレウスは?」
ギルガメッシュとオジマンディアスはそもそも検討対象にならない。恋人、という俗っぽいもので測るには、二人は神性が高すぎる。人間っぽさがないとも言う。
その点、アキレウスは同じく神の血筋ではあるものの、二人よりは人間的だ。
「アキレウスもアーラシュと同じだな。不安になる。あと、趣味がめっちゃアウトドアっぽそうだから、それに付き合わされるんのは普通に嫌かも」
「趣味の一致、あるいは許容は重要ですね」
ガウェインはうんうんと頷く。この点のイメージは唯斗のサーヴァントでなくとも理解できるようで、ランスロットたちも確かに、という顔をしていた。
「じゃあ最後、サンソンは?」
ようやくこれで最後だ。唯斗のサーヴァントの中で唯一近代の人物であるサンソンに話が移り、少しだけ考える。
「……あれ、嫌なとこないな。価値観も近いし、フランス語喋れるし」
「お、じゃあ付き合うとしたらサンソンってことになる?」
「おや、それは光栄ですね」
すると、話を聞いていたらしいサンソンが突然背後に現れる。気配遮断が得意ではないサンソンだが、人間相手ならそれなりに通用するレベルだ。
驚いて振り返った唯斗の肩を抱いて、サンソンはにっこりと笑う。
まずい、また面倒なことになる、と危惧した唯斗だったが、サンソンは安心させるように手を離すと食堂の出口へと足を向ける。
「とはいえ、マスターにとっての『特別』はあくまで騎士王ですからね。仮定の話に一喜一憂するのもスマートではありません」
「当てつけですか?サンソン殿」
「忠告だよ、ガウェイン卿。いくら異世界の存在とはいえ、同じ騎士王が相手だ、ランスロット卿の二の舞にはならないように」
「……重々承知しておりますとも」
「そうかい?それは失礼した」
サンソンは飄々と笑って食堂を出て行った。ガウェインはため息をついてから、唯斗と目を合わせて微笑む。
「サンソン殿の言う通り、マスターにとっての特別はあくまで異世界の我が王ですからね。その点では、陛下以外は皆同じ評価とも言えるでしょう」
「別に、そんなアーサーのこと特別、とか…」
そうも言われてしまうと気恥ずかしくなる。アーサーだけ特別扱いしているつもりもないが、そこまで分かりやすいだろうか。
反応に困っている唯斗を助けるためか、単に面白がってのことか、恐らく後者だろうが、トリスタンは達観したようなガウェインをからかうように見遣る。
「とはいえガウェイン卿、騎士王以外での一番は気になるのでしょう?その座に収まる機会があるのなら収まりたいとも」
「…それは、」
「トリスタン卿、それは角が立ちます」
慌ててベディヴィエールは止めさせる。一番を決めるとなると、アキレウスなど他のサーヴァントにいたずらに火をつけてしまう。
唯斗も同じ考えだったため、この不毛な仮定の話を終わらせつつ、話を引っ張った立香に復讐しようと、去り際に一言残していくことにした。
「まぁ、アーサー以外でってなったら、普通に立香だけどな」
「…えっ!?」
「優しいし、等身大だし、気兼ねなく一緒にいられるから」
「な、な…!」
「じゃ、俺このあと報告あるから」
一瞬で顔を赤くした立香に溜飲が下がり、唯斗はようやく食堂を後にした。
ちなみに、そのあと立香ガチ勢のサーヴァントと唯斗ガチ勢のサーヴァントとの間で熾烈な争いに発展することになり、唯斗は迂闊な発言をロマニに叱られたのだった。