スーパー戦争


6月中旬の土曜日。
通常授業がある傑物学園では、昼を挟んでヒーロー科の授業を終えてからようやく放課後となる。
この日は、真堂がトバリの家に泊まりに来る日だった。放課後に2人でトバリの家に向かい、日曜を適当に過ごして帰る予定だ。
週末にしている掃除を前倒しし、さらにいつもより念入りだったものだから、すぐにユイに気づかれた。仲の良い先輩を呼ぶのだと話をするとテンションを上げて喜びそうだったから言わなかったのだが、あまりに聞いてくるものだから仕方なく掃除しながら答えたのだが、ユイは意外にも思案する表情で頷いていた。

そんなことはあったが、放課後、トバリは昇降口で真堂と待ち合わせて一緒に帰路についた。


「そういえば、一緒に帰るの初ですね」

「確かに。結構時間割違うしね」


あの組み合わせはなんだろう、という目を向けられたが気にせず生徒の波に入ると、しばらくはヒーロー科の授業についての話になる。毎年合宿をするらしいのだが、トバリは2年生の方に参加する可能性があるとのことだった。仮免試験に向けてということだ。
本当はきちんと1年生との親睦という意味でトバリは1年生の方にも参加すべきなのと、1年生の教師がトバリを2年に独占されるのをそろそろ渋り始めたとかで揉めているのだそうだ。


「うーん…ぶっちゃけどっちも必要なのが難しいところですよね」

「そうだね、いくら優秀といっても、トバリもきちんと1年のカリキュラムで学ぶべきことは学ぶべきだしね」

「…でも、ぶっちゃけ俺先輩たちと合宿行きたいです」

「……最近トバリが素直で先輩は嬉しいよ」

「俺はもとから素直でしたよ、先輩と違って」

「へぇ、それは面白い冗談だね」


そうやって適度に煽り合いながら、2人は電車に乗ってトバリの最寄り駅へ向かう。真堂の家は別方面だ。
駅に着くと、ここから歩いて家に行けるのだが、トバリはそちらとは違う方向に足を向ける。


「あれ、トバリの家そっちだっけ」

「よく覚えてますね。今日は先にスーパー寄らせてください。特売日なんです」

「なるほどね」


真堂は前にトバリをバイクで送ってくれたときに家の場所を覚えたようで、すぐに方向が違うことに気づいた。すごいな、と思いながら鞄から黄色いチラシを取り出す。今日は月に一度の特売日。しかも、季節に一度の規模だ。


「先輩、今日は大荒れですよ」

「スーパーが?」

「はい。この辺りの人々の血で血を洗う大戦争…健闘を祈ります」

「そんな大げさな」


真堂はそう言って笑うが、スーパーに着いた途端に顔をこわばらせる。

馴染みのスーパーはどこにでもあるような普通のものだが、その前には大勢の主婦たちがいた。息子や夫など家族を連れているところもある。彼らは一様に殺気立っていた。
今日はこの特売のためにスーパーは一時的に開店を遅くしている。チラシに「※この日は16時開店です」と書いてあるとき、それが季節に一度の大特売日であることを示しているのだ。


「なにこれ…」

「この特売は、バレなければ個性も普通に使用されるようなとんでもないものです。もちろん、法律に則って大っぴらに使いませんが、それぞれの個性をフルで生かすんです。直接目当ての商品を手に入れるために使うこともあれば、妨害、横取り、攪乱…これは戦争です。気を引き締めてください」

「…いいね、傑物学園ヒーロー科の腕の見せ所じゃないか」


真堂は最初こそ気圧されたが、過酷な状況に闘志を燃やす。周囲の人々は傑物学園の制服を見て「傑物だ」「まずい、強敵だ」「まずあいつら潰すか」と話し合っている。
「○○団地13号棟、いくわよー!」という鬨の声も聞こえるため、チーム戦で挑む者たちもいるようだ。一般人である彼らにとって、傑物の高校生というフィジカル的に最強の存在がいることは共通の敵と言っていい。かなり不利な状況だ。


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