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ジェットコースターが滑走を終え、元の場所に戻ってくる。ユイや月人は楽し気に騒いでいるし、夏夜も満足そうだが、トバリは無言で掴んでいた安全装置を外す。
怖いと人は声が出ないらしい。トバリは終始無言で風と重力を感じていた。ヒーロー科でなければ耐えられなかっただろう。

心配をかけるわけにもいかないので、軽く頬を叩いて自分を鼓舞し、なんとか立ち直る。が、コースターを下りて床に立ったところで少しよろめいてしまった。
しかしそれは真堂に支えられてバレることはなかった。


「あ、あざます…」

「…大丈夫かい?」

「…ぎりぎりです……」

「仕方ない、5分くらい夏夜君たちの気は引くから、それまでに立て直せるね?」

「余裕です」


真堂は目ざとい夏夜とユイのところに行き、月人を交えて感想を聞いていた。美紀はよくわからなさそうにし、サラは怖いようで気になるようで、という微妙にそわそわとしたリアクションをしていた。なんとかその間に、買っておいた甘ったるいコーヒー牛乳を飲む。その甘さに救われた。


そうして立て直してジェットコースターを後にすると、今度はサラがコーヒーカップを御所望した。くるくると回るコーヒーカップは、ファンシーな音楽を流しながらも、降りてきた大人の気分の悪そうな顔が目につく。
小規模な列に並ぶと、真堂がニヤリとした。


「俺、個性柄こういうのは耐性あるんだよね」

「あぁ、揺れますもんね、三半規管強そう」


個性の反動で自身に余震が来る仕組みになっている真堂は、三半規管が強くこういう酔うタイプのものには強いと豪語する。それに対して、ユイもニヤリとした。


「それは倒し甲斐がありますね」

「へえ、挑戦するんだ?」

「おい、ユイ、あんま調子乗って体調崩すなよ」

「大丈夫だって」


ということで、カップは真堂、ユイ、夏夜という年長組と、トバリ、月人、サラ、美紀の年下組に分かれた。美紀はトバリの膝に乗っている。
はしゃぐ月人とサラだが、結局は小学生、その力は大したことはない。カップは至極ゆったりと回り、美紀もきゃっきゃとしていた。
一方の真堂たちのカップは見た目にも音がしそうなほど早く回転しており、3人の残像すら見えそうだった。

そういえば、とトバリは思い至る。木陰家の個性は、男子には影渡りの個性が父親から、女子には回転すると風が起こる個性が母親から受け継がれた。ユイはつむじ風程度なら頑張れば起こすことができ、母は本気になれば竜巻が起こせる。
つまり、ユイは回転の申し子と言っても差し支えない。

結局、軍配はユイに上がったらしい。終わって外に出てみると、真堂がベンチの背もたれに手をついて屈み、ユイが勝ち誇っていた。ちなみに夏夜は早々にこっそり個性を使って影の中に避難したようだ。


「…すんません先輩、ユイたちの個性言ってなくて」

「ほんとだよ…!」

「でも良くやったユイ」

「でしょー!」

「おい」


しかし真堂の鼻を明かしてやれたようでトバリも気分が良く、ユイの頭をぽんと撫でて褒めてやった。月人たちは真堂を心配するでもなく、マップを見て次にどこに行くか決めていた。こっそり夏夜がメリーゴーランドはやめておくように言っていて、優しい子に育ったものだと感心する。

だがその代わり次のアトラクションはフリーフォールに決まり、今度はトバリが終わってから項垂れることとなる。


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