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互いに思いの丈を伝え合い、トバリの気持ちも名前をつけて整理したところで、2人は何となく照れくさくなった。普段そういうことは言わないからか、無性に何言ってんだ、という気持ちになってしまうのだ。
「あー…その、とりあえず、付き合うんでいいかな?」
「あ、はい、ぜひ…不束者ですが?」
「なんだそれ」
くすくすと真堂が笑うので、つられてトバリも笑う。ちょっと締まらないような気もするが、晴れてお付き合いが始まったばかり、という感覚は不思議だ。
「先輩が恋人かぁ…」
「そうだね」
「色んな女子に殺されそう」
「俺だってトバリのファンに殺されるよ。皆にバレたらとんでもないことになるね」
「……洒落になんないですね」
「……そうだね」
予想される混乱の大きさに、トバリと真堂は微妙な空気になった。真堂は咳払いをすると、机に広げたノートに視線を移す。
「…とりあえず続きやろうか」
「そ、そうですね」
もともと2人は勉強していたのだ、やるべきことをまずは片づけようとトバリもシャーペンを手に取った。しかし、そこへさらにそれを邪魔する声が響く。
『学校から校舎内に残っている生徒に連絡します。現在、敵事件の影響で○○線は××駅から終点までの間で終日運休するそうです。帰宅する際は注意してください』
それは学校からのアナウンスで、トバリが使っている路線の、学校の最寄り駅から先の区画が運休になるというものだった。トバリの家はその区画にあり、しかも途中は振り替え輸送もない田舎町を挟む。タクシーか徒歩しかない。
「…え、マジか」
「トバリの家の駅もじゃん」
真堂は驚いてスマホをチェックする。どうやらこの先の駅で敵が暴れ、それによって架線が著しく損傷したらしい。それで終日運休になるのだそうだ。
「あー、くそ、ちょうどバイク点検に出しちゃったから家にないな…あれば送ってやれたのに」
「や、そんな…」
真堂の家は反対方向なので電車がまだ動いている。バイクがあれば確かに送ってもらえたかもしれないが、それを真堂が申し訳なさそうにすることでもない。
「んー…じゃあ、俺の家泊ってく?帰れないんだし」
「えっ、そんな、」
「俺ん家、両親が共働きで帰るの遅いし、つかたぶん両親もこれじゃ帰ってこれないし」
真堂の両親が働いているところから帰るのにもこの路線が必要ということで、家には誰にもいないらしい。だが、トバリの場合は弟たちのこともある。
ちょうどそこへ、夏夜から電話がかかってきた。
「…、もしもし」
『あ、もしもし兄貴?電車止まったみたいだけど、今どこいんの』
「まだ学校、ちょっと帰れないかも」
すると、突然電話の向こうで物音がして、相手が入れ替わった。
『もしもしお兄ちゃん?』
「…どうしたユイ」
代わったのはユイだ。嫌な予感がする。
『家のことは気にしないで!適当にお弁当屋さんで買ってくるから!どうせ真堂さんそばにいるんでしょ?泊まってくれば!?』
「…お前マジ、個性エスパーなんじゃねぇの」
『萌えへの嗅覚が鋭いだけだよ!じゃ、私らのことは気にせずゆっくりしっぽり楽しんで!』
そこでぶつりと電話は切れた。徒歩通学の夏夜以下の弟たちは電車の影響はないし、一食くらい既製品でも大丈夫だろう。こればかりは仕方ない。
「あー…先輩、ユイたちは自分らで何とかなるそうなんで…その、良ければ泊まってもいいですか」
「……おう、全然かまわないよ」
こうして、まさかの交際開始の日に恋人の家に泊まることになったのだった。