祝い、そして
トバリと真堂が想いを通わせ、さらに体も繋げたのは、変な話成り行きと言ってもいい。
とどのつまり、まだ期末試験期間だったのだ。
告白やら情事やらで時間を取られ勉強時間が減ってしまったことに、真堂は「申し訳ないから、予定よりももっと一緒に勉強しよう」と進み出た。
こちらが申し訳ないと一度断ると、「一緒にいたいっていう下心も存分にあるんだけどダメ?」と聞かれた。そんな言われ方で断れるはずもなく。
翌日も、2人は放課後に残って勉強することになった。
今回は2組のクラスメイトたちも教室に残っているようで、真堂と席を隣にして勉強を始める。向かい合うようにするよりも、ちょっとしたことですぐに互いのノートなどが見れるからだ。
「先輩、これ解答に書いてること分かんないです」
「ノートも見せて……うん、なんでもかんでも解の公式使おうとするの良くないよ」
「うっ…」
真堂はなぜトバリが分からないのか察したようで、先にノートを確認して指摘してくれた。その自覚は正直ある。
真堂は模範解答とノートとを並べて、指で示しながら丁寧に解説をしてくれた。さらりと真堂の右手がトバリの肩に回され、体がくっつく。その状態で真堂の左手が、トバリの目線の邪魔にならないようにテキストの数式を滑る。
耳元に真堂の綺麗な声が響き、分かりやすい言葉がトバリを理解に導いてくれた。
「あっ、なるほど、分かった、ここの数字で見分ければいいんだ」
「そういうこと」
「あざます」
「ん、」
分かったことに安心すると、エアコンが直接当たって少し肌寒く感じていたことを思い出す。知らず、離れようとする真堂の肩に頬を摺り寄せていた。
「…あ、」
「ん?どした?寒い?」
「少し…」
「そっか、じゃあちょっと前の席に移動しよう」
すぐに察した真堂は、トバリを前の席に移動しようと誘う。それに頷いて2人で立ち上がると、ついに、といったように近くの席にいた中瓶が口を開いた。
「ねぇねぇ、あのさ、2人とも、なんか急に仲良くなったね…?ナチュラルにくっついてるし、トバリ君なんも言ってないのにヨー君寒いって気づいたし…」
「まぁね」
「ひょっとしてヨー君、うまくいったの?」
「…つい昨日、ね」
「うわぁ!良かったね!私も嬉しいんだぁ!応援してたから!すごい!」
すると、中瓶は2人の関係性の変化にすぐに気づいた。それを真堂が認めると、中瓶は引いたりもせずに純粋に喜びの声を上げる。
さらに、周りの生徒たちも口々に「やったな!」「よく今まで耐えたな!」などと祝福の言葉をかけてきた。
「ありがと、俺もちょっとこんなうまくいくと思ってなかった」
「え、え…?」
真堂は珍しく本心から礼を言っていたが、トバリは面食らったままだ。
「その…引かないんですか」
「なんで?今どきそういうの関係なくない?」
しかし中瓶はそう言って、他の生徒たちもまったく気にしていない。2人ことは、どうやら前から何となく察していたようで、やっとか、というような反応だ。温かく2人のことを祝ってくれる2組の生徒たちに、トバリも安心して、笑顔が漏れた。
「ありがとう、ございます。嬉しいです」
「かっわいんだぁトバリ君」
「だめだからな中瓶」
「取らないよ…」
さっとトバリを抱き締める真堂に、さっそく中瓶は呆れて見せる。そんないつも通りの雰囲気は、ひどく心地よく感じられた。
そうして期末試験は無事に終わり、トバリは学年トップを維持した。これもひとえに真堂のおかげである。
そして、あの日がやってくる。