教室ランチ
翌日の昼。いつも教室で昼食を食べている友人たちに断りを入れて、上の階にある2年生のフロアにやって来た。ヒーロー科の生徒からは告白されたことがどの学年からもないため、1年生の普通科ゾーンよりもマシだと思える。廊下でちょくちょく告白してきた子とすれ違う気まずさといったらない。
だが昨日真堂が言っていたように、トバリは上級生の間でも知られているようだったから、目線はもらった。なぜここに、という目だ。
2年2組の教室に着くと、開いていた前の扉から中を覗く。するとすぐに窓際後方の席にいた真堂に気づかれた。
「おっ、来たな!こっちこっち!初期スタンプで爆撃してんじゃねーよこの野郎!」
大きな声で呼びかけるものだから、教室全員の視線がこちらに向いた。驚いたように見てくるが、それよりも真堂の言葉にむかつく。
休み時間の度にスタンプ爆撃をしてくる真堂のせいで通知が止まらず、充電が20%消費された。だから腹いせに、最初から入っていたスタンプの親指を立てたどや顔のスタンプを大量に送り付けてやったのだ。
「あんたが休み時間ごとにあのぶっさいくなスタンプ送ってくるからじゃないですか!マジでブスなんですけどあれ!」
「ぶさかわってやつだよ、分からないヤツだな」
シンと静まり返った教室。トバリはしまったと真堂のニヤケ顔を見て臍を噛む。つい乗せられて暴言を吐いてしまったが、先輩たちはあの人気者の好青年がこんなことを、という目で見てきていた。
「えーっと、ヨー君、いつのまに1年のイケメンボーイと知り合いになったの?」
「ん?昨日。トバリ君の裏の顔知っちゃったからさ、気になっちゃって」
「脅したんでしょ、ひっどいんだぁ」
「知的好奇心だよ」
「えと、木陰君、私中瓶畳っていうんだぁ。よろしくね?」
真堂のすぐ近くの席でパンを食べていた女子が自己紹介をしてくれた。耳の後ろの髪を後ろに大きく跳ねさせている。本当に真堂の裏の顔はクラスに知れているらしい。
「あ、木陰トバリです、よろしくお願いします」
「ま、座りなよトバリ君」
「なんであんたはしれっと名前呼んでるんですか」
「何となく以外に理由はないよ」
真堂はのらりくらりと言葉を躱すため、トバリはため息をついて示された真堂の前の席に座る。椅子だけ後ろを向けろということだろう。窓際のため、窓側の壁に寄りかかって右手に真堂を視界に入れる。
正面には中瓶が昼食をとっていて、他の生徒たちもこちらに気を向けながら各自食事に戻った。
「この席の先輩大丈夫なんですか?」
「そいつ食堂行ったから平気」
「なんだ、トバリ君いい子じゃんやっぱ。ちょっと口悪いときあるだけで。それより私もトバリ君って呼んでいい?」
「はい、お好きなようにどうぞ!」
中瓶もマイペースで、独特のテンポで会話が進む。名前呼びを気にせずにしてもらうと、真堂はむすっとした。
「俺は嫌がったのに?」
「別に嫌がってはないです。俺も揺先輩って呼んであげましょうか?」
「おうおうすげえむかつくじゃん、絶対呼ばせねぇ」
「中瓶先輩、お昼食べてもいいですか」
「もちろん!ふふ、中瓶先輩だってー!いいねぇ後輩って!てかヨー君のスタンプいつも気持ち悪いんだぁ。分かるよ気持ち」
「ですよね!あんなの使う人の気が知れないですもん」
中瓶は普通の女子っぽいから、きっとあのスタンプを気持ち悪いと思うのは普通の感性なのだろう。仲間がいて良かった。
「なーんで中瓶に許可取ってんのかなぁ?つか息を吸うように煽るなお前」
「だって先輩が息を吸うように煽ってくるから、そういうコミュニケーションかと」
「先輩を敬う気持ちの発露を期待した俺が馬鹿だったよ」
「敬えるような先輩がいて良かったです、中瓶先輩。さて昼飯食べるか〜」
「あはは、第二のヨー君だぁ、ウケる!」
真堂がぷるぷると怒りに震えるのを横目に、中瓶にもらった許可のもと持ってきた弁当を広げる。さすがに真堂の机に広げるのは非礼が過ぎるので、膝の上に蓋を置いて手に持つ。