2




「わっ、トバリ君お弁当なんだ!いいねぇ、お母さん?」


弁当は少数派なのか、中瓶は羨ましそうにする。普通は食堂か購買なのだろう。トバリは首を横に振って答える。


「いえ、俺が作りました。基本、家じゃ俺が料理してるんで」

「ええ!これトバリ君が作ったんだ!すごーい、料理男子だね!」

「そんな大したもんじゃないです…」


中瓶は大げさに驚く。真堂も震えるのをやめて意外そうに弁当とトバリを見比べていた。目が如実に語っている。こいつがこれを?と。


「冷凍とか?」

「や、冷凍高くて。弟たちの朝ごはんも兼ねてるから、全部作ってます」

「そうなんだぁ!これ全部とか、すごいねヨー君!」

「料理男子ってポイント高いしね」


意地でも褒める気はないようだが、トバリも褒められたいわけではないので気に留めない。ただ、否定しないのもそういうヤツと思われそうなので軽く話しておく。


「俺が料理しないといけなかっただけなんで。さっき言った通り、弟たちの分でもあるから」

「弟君いるの?」


ちょっと空気を硬くしそうだと思ったのだろう、そういうのに敏感そうな中瓶がすぐに話題を変えた。さすが先輩だ。というか、真堂に呼び出されたのに会話の中心は中瓶だ。


「はい、弟が2人に、妹が3人います」

「は?そんないんの」


それには真堂も驚いたらしく、純粋に目を丸くしていた。そりゃそうだ、今時珍しい。


「そうなんですよ。もうほんと、動物園ですよ」

「あはは、ウケる。トバリ君は一番上なんだねぇ」

「そうです。だから世話する中で、料理も俺がやってます。小中学生は体作るのに大事な時期だから気を付けたくて」

「そうなんだぁ、うん、ほんとトバリ君はいい子だよ。そう思ってそれを実行してるんだもん、しかもこんな高クオリティで!」

「え、いや、ほんとそんなんじゃないです」


やはり大げさな中瓶の言葉に、どう反応すればいいのか分からずとりあえず否定する。中学で人と関わってこなかったので、高校で初めて先輩というものに触れているのだ、難しいことをしないで欲しい。


「謙遜すんなよ、それは普通にすごいことだと俺も思うよ。えらい」


さらには真堂までそう言ってきた。からかっているのかと思って顔を上げて真堂を見ると、特に企んだ風でもなく微笑んでいる。本当にそう思っているのだ。やはりヒーロー科、裏表があると言えど、本質はとても優しい。
本気で褒められていると気付いてしまうと、いよいよどうすればいいのか分からなくなる。上げた顔をもう一度俯かせて、「ほんと、そういうんじゃないから、やめてください」と言うとくすりと笑う気配。

続いて、頭を撫でる感触があった。わしゃわしゃと、ちょっと雑ながら労わるような感じで。
手の主は右隣の真堂だ。にやにやとしているが、それは悪意というわけではない。


「照れてんの?かわいーじゃん」

「ほんとだぁ、カワイイね」

「な、にして…!」

「えらいえらい」


真堂はやめずに撫でてくる。その感触が存外気持ちよく、拒否しても続くものだから、うっかり自然と目を閉じてしまう。居心地が悪いはずなのに、とても落ち着くという相反する感覚だった。


「…はは、ほんとに可愛いな。ちょっとびっくりしてるよ」

「…ヨー君、悪いことしちゃだめだよ」

「俺を何だと思ってんだよ…」


先輩という未知との遭遇に、トバリ自身も戸惑う。最初から本性がバレてる状態というのも、どう対応すればいいのか分からなくさせた。猫を被っていればそれが行動基準となるため逆にやりやすいが、素でとなると途端に基準がなくなり迷ってしまうのだ。

ちなみにその後、弁当のおかずを分けたら再び真堂に撫でられて、さすがにやめてもらった。


7/42
prev next
back
表紙に戻る