仮免に向けて


その後もそうやって不思議な関係が続いた。そういえば本題は何だったのかと聞いても「話してみたかっただけ、またおいで」と言われ、週一で呼び出されては昼食を共にした。ただの先輩後輩というには、よくメッセージアプリでも話しているし、だんだんコミュニケーションも多様化していた。

煽り合って冷戦のような舌戦を繰り広げることもあれば、普通に世間話をしたり、課題の話をしたり。かと思えばまた舌戦をして、別れたあとにスタンプ爆撃を食らって、というような感じだ。
これはどういう関係なんだろう、と不思議に思っていると、ある日、教師に呼び出された。
もう6月の湿っぽい季節で、指定のポロシャツを皆が着ている中で、トバリはポロシャツの上にフード付きのパーカーを着ていた。個性の影響か、かなり日差しに弱いのだ。日が差すと厳しいものになるこの季節、不安定な日が続くため律儀に雨の日はパーカーは着ないというようなことはしない。

だから服装のことではないはずで、そうなると心当たりはない。なんだろうと思いながら職員室に赴くと、2年2組の担任であるスマイルヒーロー・Msジョークがいた。ジョークはその名の通りツボが浅くいつも笑顔だ。そして個性も周りを強制的に笑わせて思考を奪うというもの。


「いきなり呼び出してごめんね!あのさ、君最近真堂と仲いいんだって?」

「別にそういうわけじゃ…」

「ぶはっ!真堂もまったく同じ反応だったよ!ウケるな!」

「…で、どんな用件でしょうか?」


ジョークが笑っているのはいつものことなので単刀直入に聞くと、ジョークは頷いて本題に入る。


「あのね、君には秋の仮免試験を受けて欲しいんだ。ウチの2組と一緒に」

「え、俺まだ1年ですよ?」

「特待生は本人次第でOKなんだよ。それに君はほら…事情、聞いてる。仮免があればインターンができるんだけど、インターンは有償なんだ」

「有償…つまり、お給料が出る…」

「そりゃ正規雇用じゃないけど、同一賃金同一労働!プロと同じ仕事したらプロと同じ金が入るよ」

「やります」

「そうこなくちゃ!」


願ってもない申し出だった。お金が入るのは卒業後だと思っていたため、1年からインターンに行けるならこんなに恵まれたことはない。もちろん仮免を取ることとイコールではないが、チャンスをもらえるというのはありがたい話だった。


「じゃあ早速!君は今日から、週1で2年2組のヒーロー学に参加してもらえる?仮免試験はかなりクラスでのチームの色合いが強い、なるべく連携できるように、皆と一緒の授業を受けてもらいたい」

「はい、分かりました!」

「よし!そしたら5限にコスチューム着て第3グラウンドね!」



***



午後、ヒーロー学の時間になると、トバリはクラスではなく2年2組のいる第3グラウンドに向かった。
トバリのコスチュームは黒の細いツナギのようなものだ。フードがついており、それを被ると体のラインに沿って最小限の細さに見える。黒い色の服である方が個性が有利になるのだ。そして、体積が小さいほど影の間の移動が速くなる。指定された時間と場所に着くと、ジョークが1人で立っていた。


「さあ、行くよ」

「はい」


グラウンドに向かう小道の途中で合流した2人は、そのままグラウンドに入る。入ってすぐのところには、もう2組がいた。全員驚いたようにこちらを見てくる。


「はい注目!今日から週1で参加してもらう1年1組の木陰君です!この秋の仮免試験を皆と受けてもらうから!」

「えー!そうなのトバリ君!」


ジョークがそう言うと、中瓶は驚いて手をパタパタとさせた。トバリは曖昧に笑って頷くと、隣の大人を見上げる。


「サプラーーイズ!!」

「やっぱりか!!」


あまりに驚いたような2組の先輩たちにもしやと思ったのだ。どうやら、驚かせるために彼らには黙っていたらしい。


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