chapter. 2−3


カストロとポルクスがメティス宮殿に招かれて1年、本当に言葉通り、ラウルは二人にあらゆる教育を受けさせた。
政治、経済、歴史などの必須教養だけでなく、望むものはすべて学ぶ機会を与えられた。

ポルクスは剣術や体術を学ぶようになり、カストロも体を鍛えようと東方のチャクラムにも似た盾と馬術を主に学んでいる。どちらも妹ポルクスを守るためだ。

食事はラウルとまったく同じではないが十分に豪華なものが提供され、温かい湯浴みももちろんのこと、与えられた部屋のベッドや調度品も一級品だった。
まさに破格の待遇であり、もはやこれまでと震えたアドゥール海での夜からは考えられない日々だ。

だからこそ、カストロは本当にラウルが「味方が欲しい」というだけの理由で二人にここまでしてくれているのか疑問だった。本当は何か企んでいることがあるのではないか。
とはいえ二人に政治的な利用価値がないことは明白で、宮廷の使用人たちも二人を疎ましく思っているように見える。
ポルクスを守る、そのためにはなんでも利用するつもりでいるカストロではあるが、ポルクスの身を本当に守るためにも、ラウルの目的をそろそろはっきりさせなければならないと考えた。

そこで、カストロはポルクスとともに、改めてラウルの部屋を訪れた。気軽に王子の部屋を訪れるなど、国王くらいだ。王妃はラウルを生んだ際に命を落としているため、この国に王子はラウルのみ。国王は病弱でとてももう一人結婚して子を作ることができる様子ではなかったこともあり、ラウルは唯一のロタリンギアの後継者だとみなされている。
それなのに双子が部屋に通されていることは、これもまた国王や使用人からは問題視されているようだったが、不思議と、まだ12歳のラウルは年齢には不相応な言論でもって言い負かしてしまうのである。

カストロも口でやすやすと勝てる相手ではないことから、少し緊張しながらも、招かれるのに応じてラウルの部屋に入り、重い扉を閉めた。


「それで?どうした?」

「…、」


単刀直入に要件を尋ねるラウル。基本的に無駄な会話をしているところを見たことがない。
もちろん、笑顔も、冗談も、すべて見たことがなく、子供にしてはまったく子供らしからぬ言動をする。
まるで大人のようだと使用人たちが不気味がっていたほどだ。

ポルクスは用事を知らないため、カストロを不思議そうに見つめている。少し息を吸ってから、カストロは切り出した。


「…俺たちにここまでする、本当の目的はなんだ」

「兄様…?」

「おかしいだろう。ただ味方になることを条件に、ここまでの待遇をするなど」


普段ならポルクスが慌てて諫めていただろうが、意外とラウルがそうした言動で怒ることはない上に、ポルクス自身が気になっていたこともであるようで、ポルクスはカストロを止めることはしなかった。


「なるほど。つまりカストロは、俺がお前たちにいろいろしてやっていることに、ほかの目的や裏があると、そう言いたいわけだな」

「そうだ」

「兄様…、」


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