chapter. 11−15


ロタリンギア王国南東部、レーヌス川上流が直線的に南から北へといくつもの山塊の間を貫く細長い平野部。
そこで最大の都市であるストラーズブルスは現在、コンスタンティノスの指揮で厳戒態勢となっており、周囲の戦場の本拠地となっていた。

ストラーズブルスは、レーヌス川が東にスウァビア山地、西にウォサゴ山脈を見ながら間を通っていく平野部にあり、レーヌス川の左岸でしばらくレーヌス川と並走してから合流するイッラ川沿いに位置する。
イッラ川はレーヌス川左岸、アルザティア伯領を南北にレーヌス川と並行して流れる川であり、ストラーズブルスの北方約16キロのところでレーヌス川に合流する。

イッラ川の水を利用して大都市はすべてをぐるりと水堀に囲われており、そこからさらに運河をレーヌス川につなげている。市街地からレーヌス川まで3キロほどだが、市街地からレーヌス川までの土地は沼沢地となっている。水に浸かった森林というのが最も正しい表現だ。
中心市街はぐるりと水堀と星形城壁に囲まれているが、市街地の東側500メートルほどのところにストラーズブルス城塞という嵩上げされた低い丘の城があり、城塞と市街地の間は農地として開墾され、ここも星形の城壁に囲まれている。運河はこの市街地から城塞にかけての水堀も兼ねており、じぐざぐとしながらも東に流れ、城塞から400メートルほどのところでレーヌス川に合流する。そのため、城壁は市街地と城塞、そしてそれらを繋ぐ農地部分に至る長大なものになっており、城壁の形は東西に間延びした楕円に見えている。

そして運河とレーヌス川が繋がるところには大規模な桟橋がある。平常時はレーヌス川の右岸と左岸とを繋ぐ重要な渡し場であり、スウァビア大公領やアレマニア公領からの貿易商はストラーズブルスで川を渡り、アルザティア伯領を陸路で北上してザブレナ峠を通り、ロタリンギア平野に入ってメティスに向かうのだ。

コンスタンティノスはストラーズブルス城塞の本館東テラスに立っており、視線の先にはレーヌス川が広がっていた。


「相変わらずひどい沼沢地だな」

「…君のおかげでマシになったけれどね」


背後からかけられた声に驚くことはなかった。城内が騒がしくなっていた声に歓喜があったため、ラウルが行幸してきたのだと瞬時に理解したからだ。
こちらから出向いてしまうとすれ違うこともあり得たため、あえてここに残っていた。

ラウルはコンスタンティノスの隣に立って、同じようにテラスから平野を見下ろす。身長はほとんど同じだが、やはり体の厚みはコンスタンティノスより遥かに薄く細い。この体に、ロタリンギアの命運だけでなく、すべての同盟国の威信や権益を背負っている。
しかしそれを感じさせないいつも通りの様子に、さすがのコンスタンティノスもどういう胆力だと思ってしまう。


「対岸のキール((ケール))要塞は…もう準備終えてるな。すぐ渡河開始ってとこか」

「あぁ。見ての通り、レーヌス要塞とストラーズブルス中州、そしてキール中州は配置を終えている」


レーヌス川は、蛇行を繰り返しながらこの平野を南北に流れているが、この辺りは土地の水分量が多すぎて蛇行なのか川幅が広い中州のある場所なのかが分からない。それほど、川と地面との境界線がドロドロになっており、湿地と沼沢地が広がっているのだ。

ストラーズブルス城塞の目の前にある川岸には桟橋があり、そこからゲルマニア領の対岸の要塞キールまで実に1000メートルはある。そしてその間に、大きな2つの中州が存在していた。
横並びになっている中州のうち、ストラーズブルス側のものはストラーズブルス中州、キール側はキール中州と呼ばれる。
中州を経由して小舟で何度も川を渡ることもできるし、ストラーズブルスの桟橋から直接大き目の船でキール桟橋まで中州を避けていくこともできる。


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