chapter. 11−17
ゲルマニア王国の中心フランコニア大公領南西部、レーヌス川とネカル川が合流する場所に位置するマンネンハイムにて、ジーク・フォン・アウストラージエンは次々と報告を受ける兄たちの傍に控えていた。
一応、形式的に軽武装しているものの、これはもはや儀礼用のものであり、ジークが戦場に出ることはまずない。兄ジークフリートとシグルドはその限りではないが、今は二人とも、マンネンハイム城の貴賓室に設けられたアルザティア戦線の本部に詰めている。
ジークは兄たちに仕事を振られれば動くが、それまではこの部屋で手持ち無沙汰にしているほかない。曲がりなりにも現国王ルートヴィッヒ6世の三男であり、身分は極めて高貴だ。
とはいえ王位はジークフリートが継承すると決まっているし、シグルドはイーセンラント女王と結婚してスウァビア大公の座についている。
ゲルマニア王室では、長男と次男はそれぞれフランコニア大公とスウァビア大公に就任することが決められているが、三男以下はその時々で異なる。基本的には軍属となり、総指揮官などを務めることも多いが、ジークはあまり体が強くなく、魔法も強化魔法というありきたりなもの。
軍にならなかった三男以下の男子たちは、フランコニア大公領の伯位を継承するか、婿養子としてどこかの家に移籍するか、あるいは学者になった者もいたそうだ。
なんであれジークはまだ17歳、この先どうなるのか決まっていない。
自分がここにいても邪魔なだけではないか、そう思っていると、突然貴賓室に似つかわしくない足音でバタバタと兵士が駆け込んできた。
さすがのうるささにシグルドは眉をひそめる。
「どうした、いくら戦時とはいえ騒々しいぞ」
「も、申し訳ございません!しかし報告をお許しいただきたく!」
「どうした」
「ポルスカ=ルテニア連合王国軍が国境を越え、
オストラヴィアに侵攻!これを占領し、
アレミュラ、
ブルニエに向かっています!また、ズデティ西峠を越えて直接カスルギスに向かう部隊も確認されました!」
「……なんだと」
シグルド、そしてジークフリートの顔色が変わった。ジークもさすがに驚く。
オスティアの大国であるポルスカ=ルテニア連合王国がゲルマニアに侵攻するなど、長い歴史を振り返っても初めてのことだ。それほど、ポルスカは西ラバルム帝国の構成国と良好な関係を築いてきた。
国境防衛などあってないようなもので、瞬く間にズデティ山地とカルプ山脈の間に横渡る大きな街道は閉鎖され、そこに位置していた大都市オストラヴィアが陥落した。
確かに連合王国はロタリンギアと同盟関係にあると公表されていたが、より形式的なものだとゲルマニアは踏んでいたのだ。まさか軍事行動まで起こすとは思っていなかった。
「失礼いたします!至急の報告です!」
そこへ、さらに別の兵士が駆け込んできた。シグルドは冷静に促す。
「聞こう」
「はっ!アヴァール軍がオエスクスからイステル川に沿って北上を開始!高モエシア王国、イリュリア王国もナイッススからアヴァール軍の指揮で北上し、ダキア公国のウィミナキウムを目指しています!アヴァール軍の機動部隊はすでに
ラティアリア要塞を占領し、今も猛烈な速度でイステル川沿いに北上しています!」
「アヴァールに高モエシアとイリュリアまで…」
ジークフリートは目を見開く。野蛮な国であるアヴァールはまだしも、高モエシアやイリュリアは小国でゲルマニアに盾突くような国ではなかった。そもそも、アヴァールに脅かされていたはずだ。
シグルドは考え込むと、ジークフリートに確認する。