chapter. 11−20


ガリア王都ルテティアのルテティア宮殿、その後宮区画の応接室にてシャルルは勇士たちからの報告を受けるためにソファーに腰掛けていた。
今のシャルルは王様モードではなく素の姿だが、やっていることは王としての情報収集だ。

報告に来たのはアストルフォとローランの二人で、それぞれガリア国境付近で起きているロタリンギア戦争の様子を現地で確認してもらってきていた。
現在時刻は夜、今日の朝にゲルマニアとカンパニア・アンデシア軍がロタリンギアを挟撃するように侵攻を開始した。


「じゃ、報告よろしく頼むぜ」

「はーい!じゃあまずはボクからね!フリジア戦線は、ゲルマニア軍が8000、アンデシア軍は3000で海上から河口域の要塞都市に上陸。このうちアンデシア軍はノーテンに上陸を試みたけど、要塞が堅牢なのと周囲が湿地帯すぎて撤退。みーんな陸路でガリア領に逃げ延びて、ブリューギスからナネットに戻ろうとしてるみたいだよ」


まずアストルフォが、河口域に攻め込んだ海上の部隊の状況を報告した。ガリアから参戦した2つの公国のひとつ、アンデシア軍は今日中に敗北してすでにガリア領に逃げ延びたらしい。


「なるほどな。ゲルマニア軍の方はどうだ?」

「うーん、リートネッセの2000は今日中に駆逐されてると思うよ。デルヴェンとハラレムは上陸まではできてて、かなり激闘してるみたい。ブリタニアのベディヴィエール卿がリートネッセからデルヴェンに移動してると思うから、一週間でこの戦線はロタリンギアの勝利に終わるんじゃないかな」

「はいはーい、俺も報告よろしいでしょうかー!」

「はいどうぞ」


ローランは我慢できなくなったようで、手を挙げて発言を求める。シャルルが促すと、ローランはカンパニア国境戦線の報告を始めた。


「カンパニア軍は8000を南北に分けて、ロタリンギアのヘネガウ伯領とヴィルドゥヌム伯領に侵攻。でもカマラクス方面の3000は夕方までに敗走。マセリアエでモース川を閉鎖しようとした2000もアルドゥース高地の入り口で撃退されてギュイジアに撤退。バッルム方面に進軍した3000は国境で完全に迎撃されて主要部隊が壊滅、火力と機動力を失って撤退したらしい」

「…つまり、ガリアから参加した2公国は初日で負けて帰ってきたってことか?」

「そうなるねぇ」


アストルフォは楽し気に言うが、シャルルは呆れてため息をついてしまう。


「かっこわりぃ〜…勇んでゲルマニアに呼応するべきだ!なんて言って突っ込んでったわりに、一日も保たなかったのかよ」

「とはいえ、王室が加わらなかったからだー!って言いそうだけどなぁ」


ローランの言う通り、間違いなくアンデシア公もカンパニア公も、シャルルがこの戦争に参戦しなかったからだと主張するだろう。それはある程度事実だ。シャルルとその勇士たちを含む国軍が参戦していれば、初日のうちにメティスに到達することもできたし、ラウルならそもそもガリアが参戦する時点で戦争ではなく外交で妥協してでも穏便に済まそうとしたはずである。
しかしシャルルはそれをしなかった。第一に、今のロタリンギアと対立するのは経済的に得策ではない。すでにその貿易圏から締め出されたことで不利なのだ、建設的な関係を目指すべきである。
第二に、ロタリンギアに侵攻するメリットがない。ガリアはもともと肥沃な国土を持っているし、ブリタニアやルシタニアに挟撃されながらロタリンギアと戦う出費に見合うリターンがないのである。

何よりも、シャルルはラウルを裏切りたくなかった。誰よりも戦争を望まなかったラウルを、傷つけたくなかったのだ。

今後の国内の統治体制をどうしたものか、と思慮に入ろうとしたとき、突然、室内の空気が揺れた。すぐにアストルフォとローランだけでなくシャルルも警戒心を強めたが、現れた姿にそれを解く。
なんと、ラウルが直接ルテティアに転移してきた。どうやら付き人がいるようで、姿を隠して来たらしい。その付き人は姿を隠す魔法を使うのか、一度も目に見えなかった。


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