chapter. 12−5


アンデシア公とカンパニア公はガリア王室が肩代わりしてくれるものの、ゲルマニアは全額国費負担となる。
戦費は参戦したフランコニア大公国、スウァビア大公国、エムスファリア公国、ヘッシア公国、トレヴァ公国とポルスカやアヴァールに侵攻されたボイオハイム公国とパンノニア公国、ダキア公国、オストマルク公国がそれぞれで調達しているが、補償というのは戦争を引き起こした王室が負担するのが筋となる。
王室に加えてフランコニア大公とスウァビア大公はジークフリートとシグルドが統治しているため、支払いは王室と大公国によって行われることになるが、それでも途方もない金額だ。

シグルドは事前にある程度想定していたのだろうが、それでも頭を抱えていた。


「……議論の方向は理解した。当方としては、ガリア2公国との配分について、ガリア側の戦場での損失の補償は全額ガリア側でやるとして、その他の勘定項目はゲルマニアが8割、ガリアが2割というのが妥当かと思うがいかがか」

「ふむ…俺としては、ガリア戦線以外の戦場の損失が圧倒的に多い以上、9:1が妥当かと思うのだが」


シグルドに問われたシャルルは、しれっとガリアの負担を大きくしようとしたシグルドにすげなく返す。シグルドもそれは理解しているため、あわよくば、という程度だったのだろう。
「それもそうだな」とすぐに頷いて配分が決まった。

これによって、ゲルマニアの負担分が4822万6982ソリドゥス、ガリアの負担分が1347万7164ソリドゥスと決まった。
デナリウスでは金額が大きくなりすぎるため、計算を早くするためにもソリドゥスで話が進められていくことになりそうだ。

このうち、現金での支払いは、ゲルマニアが788万4632ソリドゥス、ガリアが94万1348ソリドゥスとなる。


「現金支払いは、少なくとも半額をロタリンギア貨現物とすること。残りは王室発行貨幣での支払いを許容する」

「国内からロタリンギア・ソリドゥスをかき集めろ、ということか。ゲルマニア貨の価値が大きく下がることになる」

「知らねえな。こっちは賠償金の小数点以下を切り捨ててやるんだ。それも戦争を起こした責任と思って受け入れろ」


国内に流通しているロタリンギア銀貨を回収するため、ゲルマニアは同額のゲルマニア銀貨を発行して通貨を交換する必要がある。それは同時に、ゲルマニア銀貨の市場流通量が一気に増加して値下がりする可能性があることを意味していた。
現代で中央銀行が国債と自国通貨とで貨幣価値や金利をコントロールするのと同じだ。

これでも、半額をゲルマニアとガリアの王室発行銀貨とすることを認めている。これは同時に、受け取った賠償金を再び溶かして鋳造しロタリンギア銀貨に作り直す手間や、それによっていくらか銀の量が目減りすることを意味している。受け取った額よりも銀の量が減るのだ。
ロタリンギア貨の価値が相対的に上がることで、ロタリンギア商人がゲルマニアやガリアの品物を買い叩けるようにしてもらうくらい、両国には許容してもらわねばならない。


「支払い期日は年末まで。支払い場所はアンドウェルピア王立造幣所とメティス王立為替取引所。道中に盗難された場合は全額払いなおしだ。賠償金護送における保険の利用は禁止」

「…まぁ、致し方あるまい。同意しよう」

「ガリアも同意だ」


保険の歴史は古く、貿易保険はラウルの元いた世界において古代の中東ですでに行われていた。生命保険は中世のギルドによるものが原型であり、今でいう保険組合にあたる。
この世界でも、貿易保険や海上保険、生命保険にあたるものはある程度存在しており、これらは元いた世界と同じ歴史の歩みを辿っているように思う。魔法による怪我や損害に特化した保険があることが特徴なくらいか。
保険の対象として賠償金の運搬を行われてしまうと、わざと山賊や海賊に襲わせて賠償金を秘密裡に王室に戻し、保険金で支払うことが可能になってしまうため、あらかじめ禁止しておく必要がある。

合理的な方法ではあるため、シグルドもシャルルも同意した。
これで現金補償は結論が出たが、これはただのアップだ。

ここから始まる非金銭的補償が、議論を激しくすることになる。


154/174
prev next
back
表紙へ戻る