chapter. 12−11


「僕としては、ナネットの開港と関税免除5年間、そしてクルニア・ブルディガラ・ブレスタの開港を要求するつもりだ。ロタリンギアがルペッラの自由化をしてくれるからね、実質ルペッラはロタリンギアとブリタニアの中継貿易で使用されることが多いから利益を共有できる」

「ナネットは譲れないとして、開港を限定することになったらどこを優先させるんだ?」

「絞るならクルニアだろう。ナネットとルペッラを抑えておければ、あとはクルニア港さえ確保できればブリタニアは自力でルシタニアに辿り着ける」


クルニアは現代スペインのア・コルーニャのことだ。ブルディガラはボルドー、ブレスタはブレストのことである。
ロタリンギアが自由化したルペッラと、ブリタニアがこれから交渉するナネットによってガリア西海岸の主要港湾を抑えれば、クルニア一か所を経由するだけでルシタニアに到達できるようになる。
現在、ブリタニアとルシタニアの間の貿易は、ヒスパニア半島北部のアストゥリアス王国がガリアに併合されてしまったことで中継地がゼロになり、ロタリンギアが代行している。ロタリンギアで造船した長距離用の商船を使ってブリタニア自身でルシタニアとの貿易も行えているが、一度に運べる物量が少ないため、慢性的な滞貨状態にあった。

ガリアがブリタニアの入港を許可する都市を設置することでこれを解消する、それがブリタニアの狙いだ。


「…本当は、それだけじゃ、2150人ものブリタニア兵の死者に報いることなんて……」


ラウルはアーサーに寄りかかったまま、ぽつりと呟く。
同盟国の中で、ロタリンギアの次に多くの死者を出したブリタニア。苛烈な戦線を任せていたためで、特にアーサーがいたルーラ川沿いでは1200人以上の死者を出している。
エムスファリア軍の魔法部隊が極めて優秀であり、その高火力によって瞬く間にブリタニア軍の前衛を瓦解させたのだという。
一方、アーサーのエクスカリバーによる光線と、ルキウスの強化魔法による剣戟によって、ルーラ川沿いではゲルマニア側も3000人以上の死者を出した。
一か所あたりの死者数では断トツの多さとなっている。

アーサーはラウルの前に回していた腕をどかすと、その手でラウルの頭を撫でる。


「たとえ死者が1名でも、君は同じ顔をしただろう。だから、戦争を引き起こしたゲルマニアに対して、僕は強い怒りを覚えている。君を傷つけるような手段を選んだ彼らにね」

「…アーサーさ、俺のことそんな考えてくれてるのは嬉しいけど、こう、今後世継ぎとか大丈夫か……?」


ここまでのことをしてもらってしまったため、ラウルはさすがに少し不安になる。あまり他の王のそういった事情には干渉しないのがマナーだが、つい聞いてしまう。
しかしアーサーは気にした様子はない。


「言っただろう?王権は聖剣が選ぶ。血筋はあまり関係がないし、僕と父の前の王はまったく違う家の人間だった。王朝というのはあまりブリタニアには縁がないんだよ」

「あ、そっか」

「まぁ…それでいうと、ガリア王もそうなんだけれどね…」


確かに、シャルルも先代王とは遠縁であり、たとえシャルルが子を残さなくても次の王は見つかるだろう。ガリア王室はかなり親戚関係を広げてきたタイプの家だった。


「つか、それで言うと俺の方が考えなきゃいけねぇんだよな…」

「まぁ、そうだね。とはいえ君もまだ17だ、焦る必要はないさ」


どちらかというとラウルの方が不自由かもしれない。いかんせん、そのあたりのことは、いまだに元の世界のころの価値観が拭いきれていなかった。


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