chapter. 3−7


コンフルエンティアという都市は、モーセラ川とレーヌス川が合流する場所にある。
ラウルの世界でも、モーゼル川とライン川が合流することから、コブレンツは「ドイツの角」と呼ばれている。

コンフルエンティア市の東側はすぐにゲルマニアとの国境となり、少しレーヌス川を遡上しても同様にゲルマニア領に入る国境の最前線である。モーセラ川を遡ればトレヴェリスやメティス、支流からレッツェと上ロタリンギアの主要都市に至る。
レーヌス川を下ると、広大な沼沢地レーヌスラント地域が広がり、河口部がフリジア公国のレーヌスラント辺境伯領だ。
沼沢地にはケルンにあたる商都コロニアがあり、コロニアを中心とするレーヌス川流域の伯たちはレッツェ勅令に強硬に反対している。

つまり、コンフルエンティアは水運の要衝であるのと同時に、仮想敵国ゲルマニアと国内最大の反対勢力であるレーヌスラント諸伯領の両方を監視することができる場所であり、それらの敵対勢力から上ロタリンギア公領を守護する場所でもある。

モレーにはそうした監視と守護をするためのラウルの部下としてコンフルエンティア伯を与えたわけだが、その後、領地経営で目覚ましい手腕を発揮した。


「コンフルエンティアの要塞化とモーセララント専売会社の経営。どちらもこなして、きちんとゲルマニアやコロニアの動向も細かく探ってくれてる。期待以上の働きをしてくれてるだろ」

「滅相もございません…あなた様に比べれば私など……」


そうオドオド言ってはいるが、モレーは王立モーセララント専売会社の経営までうまくやってくれている。
もともと、コンフルエンティア周辺のモーセラ川渓谷は、アルザティアと並ぶワインの産地である。どちらも、ラウルがいた世界でモーゼルワインとアルザスワインとして有名だ。
ラウルはこの世界でもそれらをブランド化し売却益を増すため、アルザティアのワインを専売する王立アルザティア専売会社と、コンフルエンティア周辺のワインを専売する王立モーセララント専売会社を設立した。
コンフルエンティア周辺の渓谷地帯で栽培されるブドウから作られるモーセラワインは、王立モーセララント専売会社によって専売制が取られており、民間では輸出入することができない。

この会社の経営においてモレーは辣腕を振るい、見事にモーセララインのブランド化と販路開拓を行ってくれたし、ラウルが開設したロタリンギア大市で売り込んで各国に輸出している。

ロタリンギア大市は、シャンパーニュ大市を踏襲してラウルが始めたもので、奇数月に上ロタリンギア公国の大都市で開催される大規模な市場のことだ。特に、5月と9月にメティスで開かれるものと、7月と11月にヴィルドゥヌムで開かれるものは規模が大きい。


「…今日だって、気になる動きがあったから来てくれたんじゃないのか」


そう、モレーは勤勉に、その役目を全うしている。所領経営だけでなく、最重要事項であるゲルマニアとレーヌスラント諸国の監視だ。
王侯貴族たるもの、いきなり本題に入るようなことはしないため長々と話してしまったが、本題はここからである。


「…ええ。コロニアでの鉱山開発についてです」


すっとモレーの纏う空気も変わる。自信のない気弱な様子はどこへやら、意志の強い表情に切り替わった。


「ご存知かと思いますが、コロニア伯は領内に5つの鉱山を開発。砂鉄と鉛の生産を開始しました。陛下の開発方法を見て、鉱脈が自領にもあると踏んだのでしょう」

「鉱山を開発したことはロビンから聞いてる」

「もとよりコロニア市は金属加工が盛んな街です。砂鉄生産によってさらに好況に沸いています。さて、気になる点ですが…モーセララント専売会社の商人を通して、コロニアで受注されている品物と発注元について調べました」

「いい隠れ蓑だな、その発想はなかった」


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