chapter. 5−6


そんな中、ラウルがロビンを解放されたばかりのブルトンからスカウトし、その足でマルテルに直談判を行い、ブリタニア人を帰還させるように説得した。
金のかかるそれをガリアが自分で行うことに、当然マルテルは反発したが、次の火種になり、内憂外患の元となることを説明し、論破することで、マルテルも納得したのだ。


「吶喊王マルテルは、惰弱王と呼ばれた君の父上には高圧的だったが、まだ12歳でありながら大人以上に大人だった君には一目置いていた。敵ではあったが、マルテル王は人を見る目があった。だから君の説得に応じて、ブリタニア人を帰国させたんだ」

「当時のブリタニアからすれば、貧しいところに人が押し寄せてきたんだからいい迷惑かと思ったけど…あのままガリアにいたら、事実上の奴隷としてどんな扱いを受けていたか」

「本当に。労働力としても、比較的健康な人々がブリタニアに戻ってきたのは重要だった。それこそ、その後君が同盟を申し出て、人手を必要とする新たな農法がもたらされるとね」


翌1273年、父の崩御によって13歳にしてロタリンギア王に即位したラウルは、レッツェに遷都してレッツェ勅令を開始、ロビンやカストロ、ポルクスとともに改革を断行していくわけだが、勅令発布後に強引に訪れたのがこの城だ。


「カストロとポルクスだけ連れて無理やりこの城に乗り込んだときのアーサーの顔、まだ覚えてるぞ」

「誰だって呆けるだろう、突如として姿を現した異国の王なんだから。ロタリンギア王の即位は知っていたが、どんな王か、という情報がキャメロットに届くまで2週間はかかるはずだったんだ」


ロタリンギアにとって潜在的脅威だったガリアとゲルマニア。その2国をけん制するには、ブリタニアとの同盟が手っ取り早かった。特にガリアに対する抑止となる。
そのため、ラウルは双子を連れてキャメロット王城に瞬間移動し、アーサー王や円卓の騎士たちのど真ん中に出現。彼らの度肝を抜いた。


「すぐ切りかかられてもおかしくなかったし、そのためにカストロとポルクスを連れて行ったんだけど…意外と、すぐに手を出さなかったな」

「魔法による移動だとは全員すぐに理解できたからね。瞬時に別の場所へ移動するなんていう魔法だ、それを持つ者はとても地位の高い王侯貴族だと容易にわかる。だから、君がロタリンギア王を名乗ったのも頷けた」


意外と彼らはすぐに信じた。やはり、瞬間移動という魔法を示されたこともあるだろうし、ラウルが着ていた正装に施された西ラバルム帝冠の紋章でも分かったことだろう。

そしてその場で、ラウルはアーサーに同盟を申し出た。


「我が耳を疑ったよ。まさか、あのロタリンギア王から同盟を依頼されるとは。でも、ブリタニア人帰還令を出させたのが君だと知ってからは、僕も含め、円卓の騎士たちも概ね信じる方向で固まった。もちろん、アグラヴェイン卿なんかは慎重な姿勢だったが、ガリアにいたランスロット卿はすぐに了承したよ」


少しだけ議論を経て、アーサーは同盟に応じた。敵だらけの状態で貧困と飢饉と借金にまみれた国家を押し付けられたアーサーは、選択肢がなかった。

同盟の証として、ラウルはガウェインとランスロットにスヘルト川とモース川の河口域を与え、ガリアとゲルマニアの首都圏に川を遡上して容易に至れる場所をあえてブリタニアの影響下においた。


「同盟直後から、これは正解だったと確信したよ。ロタリンギアから輸入されたオーツやライ麦、そして新しい農法に泥炭。緊急の食糧供給を受けられたことで、カレドニア地域の飢饉はかろうじて避けられた。フリジアと同じような形だね」

「フリジアより深刻だっただろ、すでにバタバタ人が死んでたんだから」

「そうだね。本当に、君がここに突撃してくれたからだ。僕と同じように先代からの負の遺産を押し付けられながら、それでも君は、民一人一人に目を向けて、その命や暮らしを守るために努力を続けている。だから、僕も頑張ろうと思えた」


そうは言ってくれているが、きっとこの男は、一人でもすべてをこなしてみせただろう。そういう器量の人物だ。
それでも、両国の同盟は間違いなく、両国にとって重要なターニングポイントとなった。

何より、アーサーが言う通り、アーサーもラウルも、先代から押し付けられたものに圧迫されながらも、国を前に進めようともがいており、それを共有できるのはお互いだけなのだ。


66/174
prev next
back
表紙へ戻る