深海電脳楽土SE.RA.PH−24
「終わりだ殺生院キアラ!」
「……ええ、認めましょう……此度の戯は、あなたたちの健気な努力が実を結んだと。ですが、最終的な勝ち負けはこれから。人である私が、蟻などに負ける道理がありませんもの」
「…!離れなさいマスター!メルトリリス!」
トリスタンが緊迫した声で叫び、メルトリリスは立香を引っ張ってキアラから離れる。
それと同時に、全員の足下の床が消失した。突如として足場がなくなり、体が宙に浮かぶ。
「う、わ…っ!?」
「マスター!」
アーサーは慌てて唯斗を抱きかかえる。どうやら床がなくなると同時に、全員の体が浮かび上がっていた。
楽土のような空間は消えて、気泡が浮かぶ海中のような光景に変わる。輝く深海という光景の中に放り投げられたのだ。
パッションリップは急いでこちらにやってくる。
「SE.RA.PHの重量圏が弱まっているんです!みんな、私の手に掴まって…!」
その巨大な爪に全員で掴まってSE.RA.PHから離れていく。パッションリップの爪に掴まりながら見下ろすと、巨大な女性体がキアラの姿となって、深海に沈んでいた。
「潜水速度加速、魔神柱反応も増大!」
さらに、SE.RA.PHと完全に同一化したキアラは、潜水する速度を速めて魔神柱の数も増大させている。このままでは、近づくことも止めることもできない。
メルトリリスは凪いだ声でそれを眺める。
「…やっぱり。あなたならそうすると分かっていたわ。いざとなればSE.RA.PHから私たちを追放すると。でもこれで、今のSE.RA.PHは無防備となった。さて藤丸。残った令呪、全部私とリップに使って?」
それを聞いて、トリスタンは口を挟む。表情は険しく、最後までアルターエゴを警戒しているようだった。
「それは見過ごせません。理由を言いなさいメルトリリス。令呪の魔力を何に使うというのですか」
「私たちの勝手でしょう。どうなの、藤丸?」
「もちろん、最後まで信じるよ、メルト」
しかし立香は即決だった。令呪をメルトリリスとパッションリップ二人に切って魔力を送る。その輝きを見てから、メルトリリスは微笑む。
「BB、聞こえているわね!?私とリップ以外の回収、急いで!」
その言葉の直後、体の感覚が一瞬なくなり、キアラの元に送られたときと同じ転移が始まる。
そして視界が再び回復すると、そこは散々見せつけられたBBチャンネルのスタジオだった。
床になんとか立っている状態で、隣にはアーサーもいる。
一方、立香は令呪三画を一気に使ったため、意識を失っていた。
疲れ果てた様子の鈴鹿御前、いつも通りよく分からないタマモキャット、ため息をついて床に胡座をかくロビンフッド。
「っ、キアラは…!?」
「落ち着いてください唯斗さん」
そして仁王立ちになるBBは、呆れながら焦る唯斗を落ち着かせる。アーサーも焦ってはいないが、状況を確認しようとBBに珍しく話しかけた。
「ビーストIII/Rは倒されたようだね」
「ええ。メルトリリスを槍としてパッションリップが射出する合体技、およびなんとか死に体で補助したエミヤ・オルタとトリスタンによって、キアラは倒され、メルトリリスとパッションリップも回収に成功。殺生院キアラは消滅、特異点SE.RA.PHは崩壊しました。これですべての事態は収拾されたのです」
「そうか……」
なんとかなったらしい。メルトリリスとパッションリップも回収できたとのことだが、メルトリリスは保たなかったらしい、すでに消失したようだった。
少し遅れて、立香も覚醒する。
「あ、れ…ここは、」
「起きたか、立香」
そして、起床した立香は、BBを見るなり真っ先に尋ねる。
「メルトリリスは?」
「…先に尋ねるのがそれですか。まぁいいでしょう。それについては伝言を預かっています。『縁があったらまた会いましょう』、お決まりの定型文ですね!」
「そ、うか…」
立香は薄々何か感づいているようで、それ以上は何も言わず、一瞬だけ目を閉じる。その後、ゆっくりと目を開いて、優しく微笑んだ。
「…うん、わかった」