悪性隔絶魔境新宿I−11
話がまとまったところで、アルトリアは剣を消失させてパンと手を打つ。
「ともかく合流は果たした。追い込まれないうちにさっさと抜け出るぞ」
「よし!それでは凱旋といこうではないかマスター君!」
「うるさいぞ。処すか?この聖剣で」
「おっと失礼。えー、アルトリア・オルタ殿でよろしかったか?」
「…待て、なぜ私の真名を知っている!?」
すると、アーチャーはなぜか名乗っていないアルトリアの真名を看破した。しかもオルタ化していることまで当てている。
アーチャーはくどくどと論理的に推理を語る。
バイクを乗りこなしていた点から、剣を使うライダーはいるが、ライダーとしての宝具がバイクなら剣という前近代的な武器はおかしいということで、会話が成立するためバーサーカーの可能性も排除することでセイバークラスだと断定される。
また、サーヴァントは全盛期の姿で呼び出されるという前提を考えれば、見た目年齢があまりに若すぎる。
西洋で若き女剣士に候補は極めて少なく、聖剣というように剣を呼んだことや泰然とした振る舞いからも、アーサー王が後世で男性として伝わっていたと解釈すれば辻褄が合う。
あとはアーサーの語源を女性名詞化して、この悪性蔓延る新宿で生きられている点からオルタ化していると判断し、アルトリア・オルタと呼んだ。
「なんつー推理力…」
唯斗がアーチャーの推理に感心していると、アーチャーはこちらを見遣る。
「そして挨拶が遅れたネ。そちらは男性のアーサー王かな?さすがに同じ剣が何本もあることはあり得ない。例えば異なる世界線の存在、というあたりだろうか?」
「…正解だ。こっちは異世界のアーサー王、伝承通りの性別で、この剣もエクスカリバーで合ってる。俺は雨宮唯斗、カルデアのもう一人のマスターだ」
「アーサー王が二人もいるとは、なんとも贅沢な話ではないかね?よろしく頼むよ、雨宮君。はぐれた仲間がいるとはマスター君から聞いていたんだがね、話に聞いた通りのイケメンじゃないか」
「一番近くで見てる顔がアーサーだから、正直ぴんと来ねえな…」
つい微妙な返答をしてしまうと、アーチャーはアーサーと唯斗を見比べて、突然様になるウインクをした。
「お似合いだヨ!」
「…は?」
「論理的に考えるまでもない、いや、それは無粋というもの。なにせアーサー王は隙あらば雨宮君のことを見ている、ステディな関係なんだろう?」
「な…っ、」
そんな一瞬でバレるものなのか、と顔に熱が急上昇するのが分かる。そんな唯斗を見て、アーチャーはにんまりと笑った。
「おや、かまをかけたら当たってしまった。これは失礼した」
「そうか、聖剣の切れ味を体感することをお望みか」
「だめだよ、唯斗のこと変にからかうと痛い目見るよ」
唯斗の言葉通りにエクスカリバーを構えたアーサーに、立香は呆れたようにしながらアーチャーを窘める。
随分と仲の良さそうな感じは親子に見えないこともないが、切り離された悪性がアルトリアを追い詰めるほどの強さを誇るということを考えると、唯斗は正直、手放しに信じる気にはなれなかった。
「……俺はあんたを信用したわけじゃない。あんたを信じると決めた立香を信じてる。変なことしたら叩き切るからな、アーサーが」
「私はマスターの意志を信じよう。指示さえあればいつでもあなたを切る。すまないがそれは弁えていてくれ」
「もちろんだとも。善性の塊みたいなお人好しマスターの隣に、冷静で中立的な考えのマスターがいるのはとても良い組み合わせだ」
アーチャーは気を悪くするでもなく、むしろ合理的な様子に安心しているようですらあった。少し疑われるくらいがちょうど良いというスタンスなのだろう。
立香もよく唯斗のことを理解しているため、ちょっとだけ困ったようにしながらも、多くは言わずに「唯斗がいて良かったとはずっと思ってるよ」とだけ言った。