伝承地底世界アガルタI−7
お互いに通信で都度報告を重ねながら草原を歩くこと30分ほど、立香はサーヴァントと合流した。どうやらこの特異点に呼び出された存在ではなく、かといってカルデアの霊基と同じかも不明瞭なフェルグスだった。
なんと、幼年期の姿でフェルグスは現れたのである。
カルデアの霊基がやや変質した状態であるそうで、サーヴァントとして性能は下がっているものの、立香を守る3騎目として十分に戦えるそうだ。
立香の戦力が、それも立香を直接防衛できるセイバーがいることに、唯斗は安堵する。
これはなかなか良い滑り出しなのではないか、と思ったところで、目的の川に到着した。
「ダ・ヴィンチ、川に着いた。観測はどうだ?」
『うん、良好だよ。西から東へ流れている。水の流れは観測しやすい、恐らくアガルタの東半分はほとんど湖に覆われていて、その湖にそそぐ川だと考えていいだろう』
唯斗を起点に観測すれば、この川も巨大な湖とやらに注ぐものだと計測できた。
水あるところに人の営みあり、この川と東に下って行けば、街や船着き場などに到達できるかもしれない。
「アーラシュ、目視できる範囲でおかしなところはあるか」
「ん…いや、特におかしなところはねぇな。ただ、あの森の向こうまでは分からない」
「あの森って…数キロ先のあれか」
アーラシュが見つめる川の先を辿ると、数キロ先に遠く森が見える。川は森を貫いているため、その先の流域がどうなっているかは見えないそうだ。
アーラシュの目視範囲は、射程距離と同じところまでとなるため、数百キロ先まで見ることができる。とはいえ、数百キロ圏内に障害物が存在しないということはあり得ないため、物理的に遮蔽物があれば当然見えないことになる。
それでも、普通の森であれば木々の合間の僅かな隙間からその向こうを見通すほどの目の持ち主だ、そのアーラシュが見えないということは、あの森はかなり鬱蒼としているようだ。
とりあえず下流へと進むため、唯斗たちは川沿いに歩き始め、森を抜けていく。
暗く鬱蒼とした森だったが、特に危険があるわけでもなく、30分ほどで森を抜けることができた。
しかし森の外の明かりが前方に見えてきたところで、アーラシュが唯斗を制止する。
「ちょっと待ったマスター」
「敵か?」
「あぁ。しかも人だ。武装した集団のキャンプが、森を抜けてすぐの川べりに広がってる」
「分かった。ギルガメッシュ、迷彩魔術頼む。アーラシュ、悪いけど先行してくれ」
「おう、了解」
ギルガメッシュも無言で頷いて迷彩魔術をかけ、全員の姿を隠す。サーヴァントはこの程度の魔術であれば、お互いに魔力を知覚でき、唯斗もパスで分かるため、互いの姿が視認できなくとも問題ない。
罠の可能性を見越して、頑強で未来視がある程度できるアーラシュに前を歩いてもらいつつ先に進むと、案の定、アーラシュはいくつかトラップに気付いて無効化していく。
ただ、いずれも獣用の捕縛トラップであり、対人用ではなかった。
そうして森の出口に差し掛かると、まだ外には出ずに、明るい外の様子を確認する。
「結構いるな…」
唯斗は目の前に広がる大きなキャンプに驚く。これまでまったく人気がなかったというのに、ここには50人ほどの集団がいた。
しかも驚いたことに、武装しているのは全員女性だ。
「服装からして、アマゾネスみたいなもんか…?いったいどんな空間なんだここは…」
「マスター、あれを」
女性たちがギリシア神話に出てくる女性の国・アマゾンの女性兵士に見える、と考えていたところに、アーサーが小声で呼びかける。その示す先を見ると、唯斗は息をのんだ。