伝承地底世界アガルタI−13


キャンプから一歩森の中に入ったところで、新宿と同じくアーサーに凭れて眠った翌日、正午にも立香たちと合流できるというときだった。


「唯斗、敵性反応だ」


キャンプの男たちと情報共有をしていると、ギルガメッシュがやってきて唯斗にそう告げた。ギルガメッシュの索敵術式に引っかかったらしい。


「分かった。アーラシュ、高所を抑えろ。アーサーは先行して迎撃。ギルガメッシュは俺とキャンプの防衛」

「おう、行ってくるぜマスター」

「気をつけてね、マスター」


アーラシュはキャンプ近くの岩場の上に上がって、高所から狙撃を開始する。アーサーも、敵が現れた木々の合間に入るなり、敵性体を一瞬で切り伏せた。
見たところ、アマゾネスと同じエーテル体の女性のエネミーだ。女海賊のようだった。

アーサーが交戦する脇からキャンプに入ってきた者たちを、ギルガメッシュが魔杖の光線でかき消していき、戦える男たちが苦戦しているところでは唯斗が結界やガンド、その他の攻撃術式で援護した。
本当はキャンプごと結界で囲ってしまってもいいのだが、長期戦が予想される中、彼らが自衛手段を持っていなければならない。戦うことに慣れてもらわないと、唯斗たちに負んぶに抱っこという形ではいざというときに戦えないのだ。


「しけたキャンプだが上玉がいるじゃねぇのぉ!」

「子宮降りてきたッ!ぜってぇあたしらのモンにしてやるからな!」

「うっわ…」


女海賊たちはアーサーやギルガメッシュを見て興奮したように迫ってきた。思わず引いていると、女海賊たちは唯斗を見てニヤリとする。


「あそこにも若くて一級品の見た目のヤツいんじゃん!」

「啼かせてやるからおとなしく捕まりな!」


メイヴだってこんな下品ではなかったというのに、と思っていると、ギルガメッシュがおもむろに唯斗の前に立った。


「我のモノを下劣な目で見るな、減る。疾く去ね痴女風情が…!」


そう言って、空中に出現させた門から大量の魔杖の頭が覗き、キャンプになだれ込む女たちを一斉に射殺した。
消滅していく女たちを見て、唯斗はポカンとする。


「…ありがとう」


まさか、こういう風にあからさまに庇ってくれるとは思わず、少し嬉しく思っていると、ギルガメッシュはこちらを振り返りばつの悪そうな顔をする。
そして、誤魔化すようにニヤリとした。


「…ま、貴様は『男の味』しか知らぬようだがなぁ?」

「はぁ!?」

「ギルガメッシュ王、セクハラはやめてもらおう」


最低なことを言ってきたギルガメッシュにキレかけた唯斗だったが、その前に掃討を終えたアーサーが戻ってきた。
どうやら敵性体は全滅したらしい。アーラシュも周囲を見渡してからこちらに飛び降りる。


「反応なし、戦闘終了だ」

「二人ともありがとう。ギルガメッシュは後で鉄拳制裁な、マルタの」

「的確に相性不利をぶつけおって」


そんなことを言っていると、こちらに走ってくる足音が聞こえてきた。聞き慣れた声もすぐに届く。


「唯斗!大丈夫!?」


どうやら、戦闘音を聞いて走って駆けつけてくれたらしい立香たちが到着したようだ。
立香の後ろには、アストルフォ、デオンと、本当に子供姿のフェルグス、そして見知らぬ大柄な男がいた。あれがレジスタンスのライダーとやらだろう。
ライダーはキャンプの様子を見ながら唯斗の前にやってきた。立香も様子を見てほっとしている。


「世話になったな、唯斗、っつったか」

「あぁ、雨宮唯斗だ。よろしく。怪我人は多いけど死人は出てない」

「良かった、戦闘音がしたから走ってきたけど…」


立香はキャンプの様子を見て、誰も死んでいないことに安心はしたが、しかしその惨状に表情を曇らせた。

キャンプは半壊状態で、戦闘によって機能の大部分を失っていた。

アストルフォも肩を竦める。


「誰も死んでないってだけで良かったけど、ちょっとキャンプは補給地にはならなさそうだね。ま、命あっての物種ってね!」

「…その通りだな。一番大事なモンは守ってもらえた。それだけで僥倖だ。補給はできねぇが、生き残った男たちがあと数日持ちこたえることはできるだろう」


ライダーも、このキャンプを補給地点としてイース攻略の起点とすることは難しいと判断したようだ。
デオンは警戒して抜剣していた剣を鞘に収めながら微笑む。


「問題ないさ、マスターも唯斗も、アメリカ大陸を横断したんだろう。少数突破でイースを攻略するだけだ」

『そうだね、幸い不毛な大地でもない、実質人間は二人だけなら保つだろう。このまま強行軍でイース攻略が望ましいかな』


ダ・ヴィンチも同意を示す。合流もできたため、このままカルデア一行は、東のイースを攻略する少数攻撃を開始する。


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