伝承地底世界アガルタI−18


「立香」

「うん?」

「なるべく俺が相手取っていいか、ダユーのこと」

「いいけど…どうかした?」


唯斗は自分がダユーに対して主軸となることを提案する。立香が断るわけもなかったが、純粋に不思議そうにした。


「ブルターニュで生きた人間として…引導を渡したい」

「…うん、分かった。じゃあ俺たちは海賊たちを蹴散らすね」

「ありがとな。ギルガメッシュ、アーラシュ、俺の代わりに立香を守りながらザコ狩り頼んでいいか」

「不敬だがよかろう、不敬だがな」

「任せとけ」


敵は銃火器を使うため、立香の身の安全は剣では守れない。ギルガメッシュに結界役は任せ、アーラシュには立香を狙う個体を優先的に倒してもらう。
立香のサーヴァントたちはホールに散会して海賊たちを倒す役割だ。

そして、唯斗とアーサーとで、ダユーを相手取る。


「あら、私の相手はあなたたち?いいわね、二人とも一級品ですもの、奪い甲斐があるわ。三人で、というのも久しぶり」

「…三人……え、前にディルムッドが言ってたのって……」

「マスター、今は彼女に集中するんだ。あとそのことは忘れてやってくれ」


第六特異点のあと、すったもんだを解決してディルムッドに言われた「三人で、ということもありましょう」という警戒の言葉。いったい何を警戒しての言葉だったのは分からなかったが、こういうことか、と唯斗はようやく理解した。これは帰還したらディルムッドを問い詰める必要がありそうだ。
アーサーは窘めるが、当然、唯斗とて集中を切らしているわけではない。


「ダユー、俺はヴィレーヌ川流域、ドルの出だ。同じブルターニュの民として、あんたを倒す」

「では我が民も同然。特別に奪う側に立たせてあげましょうか?男の味を知っているようだし」

「………は!?」


キアラといいダユーといい、この手の女は勘が鋭すぎる。唯斗は咳払いをしてから、アーサーに指示を出した。


「ケルトの終わりに足掻いた王として、アーサー、ブルターニュのケルト文明最後の物語の彼女に、終わりを」

「承知した。君の想い、この聖剣に乗せて彼女に届けてみせよう」

「熱烈ね」


アーサーはエクスカリバーを構えると、銃口を向けるダユーと相対する。すでにホール全体で戦闘が始まっており、銃声や剣が銃弾を弾く音、爆発音にヒポグリフがまとめて女たちを薙ぎ払う轟音が響いている。
その中心で、一際大きく音を立てて、ダユーの銃弾を聖剣が切り裂いた。

そのままアーサーはダユーの懐に目にも留まらぬ速さで突っ込むと、突き飛ばすように切りつける。
上空に舞い挙げられたダユーだが、さすがに霊基はドレイクのものであるだけあって頑強で、宙返りをしながら両手の二丁銃を連射した。

アーサーは自分に向けられたものを切り捨て、唯斗は結界で弾く。
そして、ダユーが足場にしようとしていた壁面に転移術式を発動した。


「な、に…!?」


ダユーは着地しようとした壁が消えたことでバランスを崩し、その隙にアーサーが再びダユーに詰め寄ると、剣を叩き付けた。
途端に、壁いっぱいに亀裂が走り、塗装が剥がれ、埃がホール全体に降り注ぐ。ほぼ全員の目がそちらに向いたが、その隙にアーラシュとギルガメッシュがまとめて女海賊たちを吹き飛ばした。

女たちは大半が消滅し、壁の穴から落下したダユーが床に倒れ伏す。

立香たちが唯斗のところに集まってきて、アーサーは剣先をダユーに向けたまま唯斗のところまで後退した。

立ち上がったダユーは、息を切らして血を吐きながら、かろうじてこちらを睨み付けた。


「か、は…!こんな、こんなこと、あってはならないわ…!自分の街の民の幸福を願う、この気持ちが間違いなんかで、あるはずがないのに…!」

「あなたが築いたイースのことを、俺たちは忘れてない。あなたがイースに望んだ想いも、ぜんぶ」


唯斗の言葉にダユーは目を見開いてから、壁に凭れた。


「……それなら、一層、私が奪われるわけにはいかないわ…私が奪われてしまったら、それは、イースのダユーでは、ないもの」

「まずい、逃げる気だよマスター!」


そう言って踵を返したダユーに、アストルフォは慌てて追いかけようとしたが、それよりも前にどこからともなく女海賊たちが出現する。
大量の女たちに前を阻まれて先に進めない。


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