伝承地底世界アガルタII−5
とりあえずの隠れ家で少し休憩しつつ、助けた男たちから情報を聞いて、アサシンの手がかりを掴んだ。
なんでも、先ほど戦ったあの広場では、突然何もないところから酷吏が出てくることがあるらしく、この街には巨大な地下施設があるという噂も合わせて考えれば、広場に地下への入り口があるかもしれなかった。
引き続きアーラシュには高台から見張りを念話で頼みつつ、一同は先ほどの広場に戻る。
夜明け前という時間帯のため、人はまばらだが、やはり不夜城だけあって光源が多く隠れられる場所はない。どうやって探索したものか、と考えていた、そのときだった。
「にはーっはっはー!間違えた、くふーっふっふー!!」
突然、広場にどこからかそんな謎の笑い声が響いてきた。イースで聞いた、あのアサシンの声だ。
「ようこそ、妾の城へようこそじゃ、えーと、昏羊…飽きた!これより汝は湿狗という名じゃ!暗がりを情けなく忍び歩くのが好きなようじゃからな!」
これは逆にとても丁寧なのでは、と、あだ名を新たにつけたアサシンに複雑そうな顔をする立香と唯斗だったが、突然、周囲に別の気配が満ちる。
「マスター、囲まれた」
アーサーは聖剣を構えながら周囲を見渡す。見れば、広場は酷吏が大量に取り囲んでおり、包囲されていた。
「さてさて!せっかくの客人じゃ!もてなし方で主の器が知れるというもの!特別に、貴様らを妾の居城へと招待しよう!この不夜城の真の姿、とくと見るがよい!」
そんな威勢の良い声とともに、地面が小刻みに揺れ始めた。地震ではない、地面が動く振動だ。
なんと、処刑台が割れて、広場の地面が両側へと開いていき、中から大量の電飾で彩られた黄金の城郭がせり上がってきたのである。
「これぞ我が不夜城の心臓部、真なる光輝の城堡!名付けて瑤光殿!響きがぴったり故な!こういう展開を待っておったのじゃ!妾は最奥で宴の準備をして待っておるぞ〜!」
一方的に満足したアサシンはそれだけ言って沈黙し、代わりに城内から酷吏たちが現れた。
唯斗は見上げた眩い城の箱物っぽさに思わず呟く。
「……ラブホ………?」
「ぶふッ」
隣で立香が噴き出し、アーサーがこつんと唯斗の頭をごく軽く叩く。ギルガメッシュはため息をついていた。やはり、日本を知る二人はラブホの知識も獲得済みのようで、呆れた様子だ。
気を取り直して、立香はデオンとアストルフォ、フェルグスとともに城の入り口へ向かう。
「よし、とりあえず突っ込もう!高速道路からよく見えるタイプのやつの城に!」
「名古屋あたりでよく見るやつな」
『マスター君たち〜、いい加減にしようね〜』
さすがにダ・ヴィンチにたしなめられたため、二人はいよいよ城へと突入する。
デオンのヒポグリフで入り口の酷吏たちを薙ぎ払い、デオンが階段までの道を開いていく。一方、唯斗はアーラシュを呼び戻して3騎態勢で立香に続いた。
ギルガメッシュには殿で広場からやってくる酷吏たちを担当してもらっている。
階段を駆け上がり、アーサーとデオンが踊り場の敵を切りつけたところで、立香が口を開く。
「真面目な話なんだけどさ、この城の名前、唯斗は思い当たるものある?」
「あぁ。瑤光殿、洛陽は紫微城の主殿だ」
「洛陽…なんだっけ、杜子春のやつ?」
「そうそう。その洛陽だ。中国史前半における中心都市だな。日本の奈良みたいな立ち位置に似てる」
河南省の都市である洛陽は、古代より栄えてきた中国屈指の古都である。歴史が長すぎたために、実はあまり歴史的なものは残っていない。また、その市域も大きく動いてきた。
西の長安に対して東都と言われることもある。京都に対して奈良を南都と呼んだのと同じ感覚だ。
「そんで、洛陽の城の名前を冠するってことは…まぁ、アサシンの真名もほぼ特定できる。けど、先に会敵するな、これなら」
城内で立ち塞がる酷吏たちは敵ではなく、アーサーやデオン、アストルフォによって次々と破られていく。ギルガメッシュによって挟撃も防がれており、スムーズに最上階へと到達した。